伊奈忠治(読み)いなただはる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊奈忠治」の意味・わかりやすい解説

伊奈忠治
いなただはる
(1592―1653)

江戸幕府の勘定頭(がしら)、のち関東代官頭伊奈忠次次男として武蔵(むさし)国に生まれる。半十郎と称した。1606年(慶長11)幕府勘定方に勤め武蔵国足立(あだち)郡植田谷(うえだがや)領(現埼玉県さいたま市付近)で800余石を知行(ちぎょう)した。10年父忠次の死後代官となり、検地の施行、新田の開発、河川改修などを精力的に推し進めた。ことに21年(元和7)の利根(とね)川流路の改修や鬼怒(きぬ)川と小貝(こかい)川との分離改修、29年(寛永6)の荒川の瀬替(せが)え改修、35年江戸川開削や用水路の開発など、関東東部低湿地の治水を安定させた功績は大きい。この間、足立郡赤山(埼玉県川口市)に陣屋を設け7000余石を知行、江戸近郊の要衝地をはじめ栗橋(くりはし)、松戸市川などの関所を支配した。35年幕府勘定頭に任ぜられたが、42年勘定頭を免ぜられ、3代将軍家光より、今後は関東代官の得失をただし、河川の修治にあたるべき旨命ぜられ、事実上の関東の代官頭となり、ここに関東郡代を世襲する伊奈家の基礎が開かれた。承応(じょうおう)2年6月27日、62歳で没し鴻巣(こうのす)勝願寺(しょうがんじ)に葬られる。

[本間清利]

『本間清利著『関東郡代』(1977・埼玉新聞社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「伊奈忠治」の意味・わかりやすい解説

伊奈忠治 (いなただはる)
生没年:1592-1653(文禄1-承応2)

江戸前期の代官,関東郡代。忠次の次男。半十郎と称す。若いころより父を助け地方巧者(じかたこうしや)として活躍。1618年(元和4)兄忠政の死後,代官頭を継ぎ武蔵国赤山(埼玉県川口市)に陣屋を構え知行地7000石を与えられた。関東・東海地方を支配し,利根川・荒川の治水工事など新田開発を実施した。42年(寛永19)新たに関東代官を統轄し堤防修築を管轄する任に就く。関東郡代の役職はこの忠治のとき固定化した。玉川上水開削工事の半ばで病死。茨城県つくばみらい市の旧谷和原村に頌徳碑がある。
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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「伊奈忠治」の解説

伊奈忠治 いな-ただはる

1592-1653 江戸時代前期の武士。
文禄(ぶんろく)元年生まれ。伊奈忠次の次男。元和(げんな)4年(1618)兄忠政の跡をつぎ代官頭(関東郡代の前身)となり,武蔵(むさし)赤山(埼玉県)に7000石を領する。利根川,荒川の改修工事や江戸川などの開削,常陸(ひたち)(茨城県)谷原領での干拓などにあたる。寛永19年関東諸代官の統轄,河川の修築を命じられ,伊奈家世襲の関東郡代が成立した。承応(じょうおう)2年6月27日死去。62歳。通称は半十郎。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「伊奈忠治」の解説

伊奈忠治
いなただはる

1592~1653.6.27

江戸前期の幕臣。関東郡代。通称半十郎,法名源周。忠次の次男。はじめ勘定方を勤め,1618年(元和4)兄忠政の死後,関東郡代職を継いだ。のち武蔵国赤山(現,埼玉県川口市)に陣屋を構え7000石を領し,関東および駿河・遠江・三河国の年貢収納にあたった。利根川の改修,新田開発,沼沢池の干拓,井堰・堤防の築造など,北関東の開発や民政に従事した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伊奈忠治」の意味・わかりやすい解説

伊奈忠治
いなただはる

[生]文禄1(1592)
[没]承応2(1653).6.27. 江戸
江戸時代初期の幕臣で農政家。備前守。代官頭として名高い忠次の次男。関東郡代兼勘定奉行。

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世界大百科事典(旧版)内の伊奈忠治の言及

【関東郡代】より

…江戸幕府の地方行政官の職名。代官頭伊奈忠次の系譜を引く伊奈氏が世襲で郡代職を継いだが,江戸後期に勘定奉行の兼任後,一時,廃止されたが再置,幕末に関東在方掛と改称された。徳川氏の関東入国後,代官頭伊奈忠次が100万石を支配したが,その子忠政の弟忠治が引き続き地方(じかた)支配した。1642年(寛永19)に幕府は忠治に対し関東代官の統轄と河川の改修,築堤の専管を命じ,これによって関東郡代が事実上成立した。…

※「伊奈忠治」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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