伝染性軟属腫(読み)デンセンセイナンゾクシュ(その他表記)Molluscum contagiosum

デジタル大辞泉 「伝染性軟属腫」の意味・読み・例文・類語

でんせんせい‐なんぞくしゅ【伝染性軟属腫】

主に小児に発症するウイルス性の皮膚感染症。皮膚の直接接触で感染し、体幹四肢中央少しくぼんだ丘疹ができる。性感染症として成人に発症することもある。水いぼ

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六訂版 家庭医学大全科 「伝染性軟属腫」の解説

伝染性軟属腫(みずいぼ)
でんせんせいなんぞくしゅ(みずいぼ)
Molluscum contagiosum
(皮膚の病気)

どんな病気か

 小児期によくみられる皮膚の軟らかいいぼです。性行為感染症として、成人の陰部にみられることもあります。

原因は何か

 伝染性軟属腫ウイルスの感染によって発症します。感染様式は接触感染で、アトピー性皮膚炎やそのほかの要因により皮膚のバリア機能に障害がある時に感染しやすいといえます。

症状の現れ方

 単発あるいは多発性に認められる径1~5㎜ほどの丘疹(きゅうしん)小結節(しょうけっせつ)が体幹、四肢に現れます。通常の色あるいは淡紅色の皮膚でおおわれ、半球状に隆起しています。発達したものでは中心が臍窩状(さいかじょう)に(へそのように)陥没することがあります。自覚症状はないことが多いのですが、炎症などによりかゆみを伴うこともあります。

検査と診断

 臨床的にみずみずしい外観のドーム状小丘疹があれば、診断は容易です。ほかの病気との区別が必要な場合は、粥状(じゅくじょう)の内容物をつまみ出して確認するか、病理組織学的に表皮内に形成される特徴的な封入体を観察します。

治療の方法

 現在のところ、本症に対する安全かつ有効な抗ウイルス薬は存在しません。統計的には、放置しても平均して約半年の経過で自然に脱落すると報告されていますが、年余にわたって存在し、数が増えることもあります。

 不快感を取り除くため、また、ほかへの伝搬を予防する意味でも、鉗子(かんし)などで内容物をつまみ出す摘除術もよく行われます。多くは自然消退することを念頭において、摘除するかどうか決定します。

 性行為感染症としての本症では、鉗子などによる除去を第一選択として行います。

病気に気づいたらどうする

 皮膚科小児科を受診してください。

関連項目

 アトピー性皮膚炎

安元 慎一郎


伝染性軟属腫(みずいぼ)
でんせんせいなんぞくしゅ(みずいぼ)
Molluscum contagiosum
(感染症)

どんな感染症か

 ポックスウイルス科モルシポックスウイルス属の、伝染性軟属腫ウイルスの感染によります。いわゆる「みずいぼ」のことです。一般に小児、とくにアトピー性皮膚炎の小児によく起こり、プールで感染することが多くみられます。

 また、性行為感染症(STI)として、成人の性器に多発することがあります。

症状の現れ方

 主に、毛包(もうほう)から感染します。2~7週の潜伏期ののちに、粟粒(ぞくりゅう)大~大豆大(1~数㎜大)までの、中央に凹みのあるドーム状の腫瘍が、体幹部や四肢に多発します。

 表面は平滑で、白色~皮膚色で(ろう)のような光沢があり、数個あるいは無数に散在したり集まったりしています。周囲が湿疹化し、かゆみを伴うことがあります。

検査と診断

 ピンセットでつまむと、乳白色の粥状(じゅくじょう)物質が押し出されるのが特徴です。ひとつだけの場合、いぼ稗粒腫(はいりゅうしゅ)(眼のまわりの小さな白っぽいできもの)との区別が必要で、切除して組織像で診断します。

治療の方法

 ピンセットで一つ一つ摘み取るのが最も確実な方法です。液体窒素(ちっそ)による凍結療法や、硝酸銀(しょうさんぎん)などの腐食剤などで取る方法もあります。みずいぼは数カ月から数年、持続しますが、自然に、または外傷や細菌感染をきっかけに治ります。再感染もしばしば起こります。

病気に気づいたらどうする

 みずいぼが増えない前に、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。

本田 まりこ

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内科学 第10版 「伝染性軟属腫」の解説

伝染性軟属腫(ポックスウイルス)

c.伝染性軟属腫(molluscum contagiosum)
概念
 伝染性軟属腫は,伝染性軟属腫ウイルス(molluscum contagiosum virus)(ポックスウイルス科モルスキポックスウイルス属)による良性疣状の丘疹を呈する皮膚感染症である.
病原体
 伝染性軟属腫ウイルス.
感染経路
 ヒトのみが伝染性軟属腫ウイルスの宿主である.感染は性行為を含めた直接接触,タオルなどを介した接触による.自家接種によっても病変は拡大する.
疫学
 ときに保育施設などでの集団発生が起こることがある.臨床症状.潜伏期は2~7 週であるが,さらに長期間の場合もある.発熱などの全身性症状はない.直径およそ5 mmで,中央に臍窩が存在する.肌色から半透明の半球状丘疹が散在する.その病変は,体幹,顔面,四肢に多発し,その病変数は通常2~20個程度の比較的少数である.湿疹を有する児,HIV感染者を含めた免疫不全者では,病変が重症化することがある.
診断・治療予防
 診断は,特徴的な病変部の性状により臨床的になされる.病理学的には,Wright染色やGiemsa染色すると病変中心部に特徴的な細胞内封入体が認められる.電子顕微鏡検査により,ポックスウイルス粒子が同定できる.病変は自然退縮するが,病変(中心部)を物理的に除去するとより早く治る.一般的に小児の単一あるいは散在性病変の治療は不要である.サリチル酸や乳酸などの皮膚剥脱剤,電気焼灼器,液体窒素などが病変除去に有用である.[西條政幸]

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改訂新版 世界大百科事典 「伝染性軟属腫」の意味・わかりやすい解説

伝染性軟属腫 (でんせんせいなんぞくしゅ)
molluscum contagiosum

俗に〈みずいぼ〉あるいは〈百いぼ〉と呼ばれるもので,ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスの感染によって皮膚にできる腫瘤。学童期以下の幼小児に多く,成人にみることは少ない。アワ粒大からエンドウ大までの半球状に隆起し,中心にへそ様のくぼみのある小腫瘤で,表面は皮膚色で蠟様の光沢がある。つまむと白色粥状の塊が排出されるが,これにウイルスが含まれており,接触により伝染する。水泳教室における流行が問題となっている。単発性のこともあるが,かたまって多発することが多い。全身いたるところにみられるが,腋窩(えきか)や側胸部などすれやすい部分にみられることが多く,手掌や足底にはみられない。アトピー性皮膚炎などのある子どもでは,かききずによって,湿疹局面内に無数に生ずることもある。挫滅(つぶれること)や二次感染などによって自壊し,自然に治癒することもあるが,ピンセットで内容を圧出すると,数日で治癒する。
執筆者:

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家庭医学館 「伝染性軟属腫」の解説

でんせんせいなんぞくしゅみずいぼ【伝染性軟属腫(みずいぼ) Molluscum Contagiosum】

[どんな病気か]
 ポックスウイルス科の伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)ウイルスの感染によっておこる病気です。幼児期から小学生の間に、80%以上の子どもがかかるといわれています。感染経路は直接接触感染や、かくことによる自家感染、スイミングプールでのビート板などを介する間接接触感染などです。とくにアトピー性皮膚炎(せいひふえん)の子どもには感染しやすいようです。
 できるいぼは、1~5mm大で半球状、つるっとした白色調のイボで、大きいものは真ん中に小さな凹(くぼ)みがあります。
 自然に消えていくものですが、その時期を予測することはできません。放っておくと数が増えて広がったり、人に感染することになりますから、治療を受けましょう。
[治療]
 特別なピンセットを使って内容物をしぼり出す方法が一般的です。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伝染性軟属腫」の意味・わかりやすい解説

伝染性軟属腫
でんせんせいなんぞくしゅ
molluscum contagiosum

小児の躯幹,四肢,顔面などに好発するウイルス性の良性腫瘍。大きさは粟粒ないしエンドウ大で,半球状に隆起し,表面滑沢,淡紅色,中心臍窩を生じ,かゆ状物質が圧出される。ときにかゆみがあり,かくことで広がる。組織学的には,表皮は小葉状となって真皮内に進展し,周囲を圧排する。基底細胞には著しい変化が認められないが,棘細胞は大きくなり,細胞質内には軟属腫と呼ばれる封入体が認められる。 (→いぼ )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「伝染性軟属腫」の意味・わかりやすい解説

伝染性軟属腫
でんせんせいなんぞくしゅ

水いぼ

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世界大百科事典(旧版)内の伝染性軟属腫の言及

【いぼ(疣)】より

…また,暗示によっていぼがとれることもある。 なお,俗に〈みずいぼ〉と呼ばれるものは,伝染性軟属腫molluscum contagiosumといい,ポックスウイルス科に属するウイルスの感染によりおこる。アズキ大以下の,皮膚面から半球状に盛り上がる表面がなめらかで光沢のある腫瘍で,中央部に陥凹がみられるのが特徴である。…

【いぼ(疣)】より

…また,暗示によっていぼがとれることもある。 なお,俗に〈みずいぼ〉と呼ばれるものは,伝染性軟属腫molluscum contagiosumといい,ポックスウイルス科に属するウイルスの感染によりおこる。アズキ大以下の,皮膚面から半球状に盛り上がる表面がなめらかで光沢のある腫瘍で,中央部に陥凹がみられるのが特徴である。…

※「伝染性軟属腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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