改訂新版 世界大百科事典 「住友電気工業」の意味・わかりやすい解説
住友電気工業[株] (すみともでんきこうぎょう)
電線業界のトップ・メーカー。略称は住友電工。本社大阪市中央区。近年は電線事業の比重は低下傾向にあり,同社および古河電気工業,藤倉電線(現,フジクラ),それに電電公社(現,NTT)が共同で1977年に開発した光通信用の光ファイバーの製造技術〈VAD法〉による光通信システムをはじめとして,粉末冶金,超硬合金,半導体材料などの新素材等の新分野を拡大中である。
住友電工の歴史は1691年(元禄4)の住友家による別子銅山の開発に始まる。明治に入り1897年住友家は大阪に住友伸銅場を開設,銅板,銅棒,銅線などの製造を始めた。1911年に電線事業は,住友総本家直営の住友電線製造所として独立した。殖産興業という政府の政策もあって,電線に対する需要は増大し,とくに第1次大戦の勃発により,外国からの注文も殺到し電線事業は発展を遂げた。関東大震災の際も,競争相手の古河電気工業,藤倉電線の両電線メーカーが被害を受けたため,復興用電線を一手に引き受けることになった。その後,30年のタングステン合金による電線伸銅用ダイスの開発,32年の特殊金属線の製造などにより,事業内容を拡大した。第2次大戦後はゴム事業,化合物半導体材料,ディスクブレーキ,ファインセラミックスなどの新分野に進出した。80年より工業化された光通信関係の拡大に力を入れている。資本金962億円(2005年9月),売上高1兆7402億円(2005年3月期)。売上構成は自動車関連44%,エレクトロニクス16%,情報通信12%,エンジニアリング10%など。
執筆者:木村 栄宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報