江戸幕府の遠国奉行。1601年(慶長6)徳川家康によって佐渡代官を命ぜられた田中清六は,上杉景勝の遺臣河村彦左衛門とともに佐渡を治めたが,翌年には吉田佐太郎,中川主税がこれに加わった。同年,年貢の5割増を命じたため百姓が江戸に愁訴し,代官は職を解かれ,03年には大久保長安が代官となった。田中清六が家康から佐渡物成のうち5000石を与えられたことなどをみると,田中や大久保は代官の性格が強く,まだ奉行とは呼ばれていない。佐渡奉行と呼ばれる最初は17年(元和3)の鎮目市左衛門と竹村九郎右衛門のときからである。そのころは佐渡金銀山の繁栄期で,奉行は1人が佐渡に,1人が江戸にあってそれぞれの任務にあたった。35年(寛永12)伊丹康勝(1万3000石,役料五百人扶持)は勘定頭の職にあって佐渡奉行を兼務し,佐渡には留守居を置いた。以来78年間は奉行は1人制であった。1712年(正徳2)新井白石は奉行荻原重秀の非政を改めて,奉行を2人とし在島を1年交替制にしたが,1843年(天保14)に1人,46年(弘化3)2人となるなど変動があった。佐渡奉行の職務は金銀山の支配,民政,海防などであったが,概して初期には金銀山支配,中期には民政と金銀山,後期には海防,民政に重きが置かれた。しかし2,3年での転勤では腰を落ち着けて民政を考える奉行などありえようはずはなく,民政は一貫性を欠き幕政にふり回された。役料としては1713年に役料1500俵,36年(元文1)役扶持百人扶持,38年1000石が与えられている。任期についてみると,長いものとしては荻原重秀の22年,伊丹康勝の18年,竹村九郎右衛門の13年,曾根五郎兵衛の10年,鈴木三郎九郎の10年,泉本正助の10年が挙げられ,概して初期のころの任期が長い。佐渡奉行は幕末まで102人を数えた。
執筆者:田中 圭一
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江戸幕府の職遠国(おんごく)奉行の一つである。奉行所は、江戸時代を通じて相川(あいかわ)に置かれた。佐渡国が徳川家康の領地となったのは1600年(慶長5)のことである。代官となった田中清六(近江(おうみ)の豪商)が佐渡に赴いたのは関ヶ原の戦い直後である。1603年、代官頭大久保長安(ながやす)が佐渡を支配したが、長安が没すると家康は大久保氏から佐渡を接収した。元和(げんな)(1615~24)に入り、竹村九郎右衛門、鎮目(しずめ)市左衛門が奉行として佐渡を支配して以来、機構はしだいに充実した。職務の内容からみる限り、このあたりからが実質的な佐渡奉行とよばれるべきであろう。
佐渡奉行の任務のもっとも大きなものは金銀山の経営と、佐渡一国の民政の維持発展にあった。佐渡奉行には初めは伊丹播磨(いたみはりま)のように万石以上の者もあったがそれは例外であって、小禄(しょうろく)の者が多く、勘定吟味役(かんじょうぎんみやく)、目付(めつけ)、納戸頭(なんどがしら)などから転職した者が多かった。幕末まで1人制、2人制の場合を含めてその人数は102人に及んでいる。役高1000石、職禄1500俵、100人扶持(ぶち)。与力30騎、同心70人、その他の下僚が属した。
[田中圭一]
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江戸幕府の職名。遠国奉行の一つ。佐渡国の警衛・行政・裁判を行い,金山について司った。近世初頭からおかれ,その後,勘定奉行が兼任した時期などをへて,1712年(正徳2)2人役となり,1年交代で相川の陣屋に勤務した。ただし1843年(天保14)~46年(弘化3)3月と62年(文久2)以降は1人役。1738年(元文3)に制定された役高は1000石,役料1500俵。老中支配,芙蓉間席で,従五位下。配下に支配組頭・広間役・与力・同心・水主(かこ)などが属した。
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…幕末には美濃・飛驒郡代のもとに堤方役・山林掛地役人頭取,同じく但馬・石見・陸奥代官には運上蔵役・直入役・銀山付役人組頭,寄床屋番・銀見役,関東代官には関所番・小菅囲内定番・浦賀蔵番,大津代官には大津蔵番・湖上船改下役などがおり,禄高は30俵以下が大半であった。佐渡奉行所では格式で定役と並役に分かれ,1624年(寛永1)には302人を数えた。地役人には広間役,吟味方役,御金蔵定役,印銀所定役,目付役,定勘定役などがおり,禄高95俵を最高に並役20俵三人扶持,ほかに役料も給された。…
※「佐渡奉行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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