遠国奉行(読み)オンゴクブギョウ

デジタル大辞泉 「遠国奉行」の意味・読み・例文・類語

おんごく‐ぶぎょう〔ヲンゴクブギヤウ〕【遠国奉行】

江戸時代、幕府直轄の要地に配した奉行の総称。京都・大坂・駿府すんぷ町奉行のほかに、長崎・伏見・堺・奈良・山田・日光・下田・浦賀・新潟・佐渡・箱館などの各奉行を含み、伏見奉行大名が、その他は旗本がその任にあたった。えんごくぶぎょう。

えんごく‐ぶぎょう〔ヱンゴクブギヤウ〕【遠国奉行】

おんごくぶぎょう(遠国奉行)

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精選版 日本国語大辞典 「遠国奉行」の意味・読み・例文・類語

おんごく‐ぶぎょう ヲンゴクブギャウ【遠国奉行】

〘名〙 江戸幕府の役人中、江戸を離れ、幕府直轄地の要地を支配した奉行を総称する語。京都、大坂、伏見、駿府、長崎、浦賀、神奈川、箱館、奈良、山田、堺、佐渡、新潟、日光、下田の各奉行などがある。伏見奉行が大名から任ぜられるほかは旗本から任ぜられた。
※禁令考‐前集・第四・巻三三・寛政三年(1791)九月「遠国奉行え評定所出座之儀に付御書付」

えんごく‐ぶぎょう ヱンゴクブギャウ【遠国奉行】

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百科事典マイペディア 「遠国奉行」の意味・わかりやすい解説

遠国奉行【おんごくぶぎょう】

江戸時代,幕府直轄の要地に配された諸奉行の総称。伏見(ふしみ)・奈良・堺(さかい)・山田・日光・下田・浦賀(うらが)・新潟・佐渡・長崎・箱館(はこだて)(はじめ蝦夷(えぞ)・松前(まつまえ))の諸奉行,京都・大坂・駿府(すんぷ)の町奉行などをいう。幕末には兵庫・神奈川奉行が新設された。老中(ろうじゅう)支配に属し,伏見奉行の大名クラスを除き上層旗本から任命。江戸と現地交代の二人制をとるものが多く,与力(よりき)・同心(どうしん)・地役人を属僚とした。→長崎奉行下田奉行浦賀奉行山田奉行箱館奉行日光奉行奈良奉行堺奉行佐渡奉行駿府町奉行大坂町奉行
→関連項目預地京都町奉行同心新潟奉行役料与力

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遠国奉行」の意味・わかりやすい解説

遠国奉行
おんごくぶぎょう

江戸幕府直轄の要地に配された諸奉行の総称。寺社奉行、町奉行、勘定奉行などの中央在勤の奉行に対し、地方在勤の奉行を一般にこう称したもので、遠国奉行なる職制があったのではない。京都、大坂、駿府(すんぷ)(静岡市)の各町奉行、浦賀(うらが)、下田(しもだ)、神奈川(幕末)、甲府(幕末)、日光、新潟、佐渡、山田、奈良、伏見(ふしみ)、堺(さかい)、兵庫(幕末)、長崎、箱館(はこだて)(幕末、初め蝦夷(えぞ)奉行、松前奉行などと称した)の各奉行をいう。その成立年代は区々である。老中の支配に属し、配下の与力(よりき)・同心(どうしん)らを指導して行政、司法、警察の職務を遂行した。京都・大坂の町奉行は東西に分かれて隔月交代、日光・佐渡・長崎の奉行は江戸より半年あるいは隔年交代で勤務した。伏見奉行は大名(だいみょう)役であり、定員1名、持高、役料3000俵、芙蓉間席(ふようのませき)・従五位下諸大夫(じゅごいのげしょだいぶ)、ほかの奉行は旗本役であり、定員1名から数名、役高1000石から2000石、役料500俵から2000俵、芙蓉間席・布衣(ほい)あるいは従五位下諸大夫であった。この職からは中央の有力な諸職に転出することができた。以上の諸奉行のほかにも、羽田(はねだ)(武蔵(むさし))・三崎(相模(さがみ))・走水(はしりみず)(同上)・清水(しみず)(駿河(するが))・荒井遠江(とおとうみ))・本坂(ほんさか)(同上)の各奉行、大津町奉行近江(おうみ))・大津蔵奉行(同上)などがあったが、早い時期に廃止された。

[北原章男]

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改訂新版 世界大百科事典 「遠国奉行」の意味・わかりやすい解説

遠国奉行 (おんごくぶぎょう)

江戸幕府の地方行政を担当する諸奉行の総称。老中支配に属し,幕府直轄の要地に配された。京都・大坂・駿府の町奉行,伏見・奈良・堺・山田・日光・下田・浦賀・新潟・佐渡・長崎・箱館(はじめ蝦夷・松前奉行),幕末に新設の兵庫・神奈川などの諸奉行をいう。伏見の大名クラスを除き上層旗本から任命され,江戸と現地交代の2人制をとり,与力,同心,地役人を属僚とした。知行高1000~2000石。役料500~2000俵を支給され,奉行間の交流,中央の諸奉行や幕閣への昇進の道が開かれていた。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「遠国奉行」の解説

遠国奉行
おんごくぶぎょう

江戸幕府が重要直轄地においた各地の奉行の総称。中央在勤の奉行に対してよびならわした。京都・大坂・駿府の各町奉行,伏見・奈良・堺・山田・日光・下田・浦賀・新潟・佐渡・長崎・箱館(はじめ蝦夷地奉行,のち松前奉行)・兵庫(幕末)・神奈川(幕末)などの各奉行をさす。初設年代は不同。上級の旗本から任命されたが,伏見奉行のみは大名の任。職掌は行政,警察など万般のことを扱ったが,権限は土地柄により相違があった。在任中江戸出府の際には必ず評定所に出席して,聴訴の法を見習った。老中支配。知行高1000~2000石,役料500~2000俵。布衣(ほい)。従五位下。下僚は与力・同心・地役人など。奉行間の異動,中央の重職へ昇進の道があった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「遠国奉行」の解説

遠国奉行
おんごくぶぎょう

江戸幕府の職名
幕府直轄都市に置かれた,京都・大坂・伏見・駿府などの町奉行,長崎・奈良・堺・佐渡・山田・日光・新潟・箱館(松前)・浦賀・神奈川などの奉行の総称。旗本の中から任命されたが,伏見奉行だけは譜代大名から選ばれた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遠国奉行」の意味・わかりやすい解説

遠国奉行
おんごくぶぎょう

江戸幕府の職名。幕府直轄領の要地に関する政務を行なった奉行の総称。京都,大坂,伏見,駿府などの町奉行や長崎,山田,日光,奈良,堺,佐渡,下田,浦賀,箱館などの諸奉行をいう。大名がなる伏見奉行以外は旗本が任命された。

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世界大百科事典(旧版)内の遠国奉行の言及

【天領】より

… 天領の支配は,石高5万~10万石前後に1人の代官(郡代)を置いたが,一部は大名預地(預所(あずかりしよ))と称して近隣の藩に預けて年貢米の徴収を委託した。江戸には町奉行を置くほか,主要な拠点には遠国(おんごく)奉行(大坂,京都,駿府,伏見,奈良,堺,山田,日光,下田,浦賀,新潟,佐渡,長崎,箱館,兵庫(幕末),神奈川(幕末))を置いて支配した。1838年には,代官支配地328万石,大名預地76万石,遠国奉行支配地14万石であった。…

【与力】より

…このほか郡代,奉行などの役職にも,与力,同心が付属せしめられ,これが江戸時代の与力,同心の前身であったとされている。江戸時代の与力は同心とともに一つの職名であって,町奉行,遠国(おんごく)奉行,先手頭(さきてがしら)などに付属した職であった。 町奉行所付属の与力(町与力)は,町奉行配下の中核的職員であり,同心を指揮して職務を遂行した。…

※「遠国奉行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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