傾城物(読み)ケイセイモノ

デジタル大辞泉 「傾城物」の意味・読み・例文・類語

けいせい‐もの【傾城物】

歌舞伎脚本で、名題のあたまに「傾城」「けいせい」などの語を用いたもの。上方狂言に多い。
歌舞伎舞踊の一系統。傾城を題材にしたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「傾城物」の意味・読み・例文・類語

けいせい‐もの【傾城物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 名題に「傾城」の語を用い、内容にも傾城買いの場面が出てくる歌舞伎の脚本。
  3. 歌舞伎舞踊の一系統。傾城の心境生活などを描き、郭の風情を見せるもので、変化物(へんげもの)一部として演ぜられたものが多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「傾城物」の意味・わかりやすい解説

傾城物 (けいせいもの)

歌舞伎舞踊の一系統。〈傾城〉と呼ばれた高級な遊女を題材にしたもの。廓を多く題材とした元禄歌舞伎傾城事の流れをくむが,所作事が発生したといわれる貞享年間(1684-88)にすでに傾城を扱った所作事がある。傾城物はほとんどが長唄で,変化物の一つとして踊られたものが多い。1755年(宝暦5)9月江戸市村座初演の《門出京人形(かどいできようにんぎよう)》で中村粂太郎が踊った《傾城》(《道行》),62年4月江戸市村座初演の《柳雛諸鳥囀(やなぎにひなしよちようのさえずり)》で初世瀬川菊之丞が踊った《新傾城》,71年(明和8)9月江戸森田座初演の七変化《菊八重七人化粧(きくはやえしちにんげしよう)》で初世中村富十郎が踊った《約束の傾城》,1811年(文化8)3月江戸中村座初演の七変化《遅桜手爾葉七字(おそざくらてにはのななもじ)》で3世中村歌右衛門が踊った《仮初(かりそめ)の傾城》,13年3月中村座初演の十二変化《四季詠寄三大字(しきのながめよせてみつだい)》に3世坂東三津五郎が踊った《門(かど)傾城》,14年2月森田座初演の四変化《拙業再張交(へたざいくにどのはりまぜ)》で7世市川団十郎が踊った《後朝(きぬぎぬ)の傾城》,16年3月中村座初演の九変化《其九絵彩四季桜(そのここのえさいしきざくら)》で3世中村歌右衛門が踊った《天下る傾城》,18年(文政1)3月江戸都座初演の七変化《深山桜及兼樹振(みやまのはなとどかぬえだぶり)》で3世尾上菊五郎が踊った《闇の夜の傾城》,24年9月市村座初演の三変化《復新三組盞(またあたらしくみつさかずき)》で3世坂東三津五郎が踊った《初雁傾城》,28年3月中村座初演の七変化《拙筆力七以呂波(にじりがきななついろは)》で中村芝翫(4世歌右衛門)が踊った《恋傾城》(《芝翫傾城》),40年(天保11)3月市村座初演の12ヵ月の所作《花十二月所作(はなきようだいねんじゆうぎようじ)》で4世中村歌右衛門が踊った《八月傾城》(《秋傾城》),54年(安政1)3月江戸河原崎座初演の七変化《寄三升花四季画(よせてみますはなのにしきえ)》で4世市川小団次が踊った《小団次の傾城》などがあり,歌詞の一部を取って通称としたものが多く見られる。内容は,たいてい特定の個人を表現するのではなく,日常や四季折々の風物を背景に,廓における傾城を描く。伊達兵庫(だてひようご)などの傾城の鬘(かつら)に,華やかな裲襠(うちかけ)の扮装が通例である。
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