コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

弱法師 よろぼし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

弱法師
よろぼし

能の曲名。四番目物 (→雑物 ) 。各流現行。観世十郎元雅作。季は春。河内国高安の里の左衛門尉通俊 (ワキ〈素襖上下,小刀〉) は,人の告げ口でわが子の俊徳丸を追出したが,のちになって気にかかり,天王寺で7日間の施行を行う。満参の日にあたり,供人 (間狂言〈長上下,小刀〉) になお施行を命じる。悲しみのあまり盲目となり乞食に身を落し,弱法師と呼ばれていた俊徳丸 (シテ〈弱法師の面,黒頭,水衣,杖〉) は,おりしも寺に来て施行を受け,寺の縁起などを語るうち,父はわが子と気がつくが,昼は人目もあり,観法の一つ,日想観 (にっそうかん) を子にすすめる。弱法師は見えぬ目であたりの風景を賞しながら狂い舞う (イロエ) 。夜ふけて訪れた通俊は,親子の名のりをし,俊徳丸の手をとって高安の里へ帰っていく。小書 (こがき) に「盲目之舞」 (観世,金剛) ,「双調之舞」 (宝生) ,「舞入」 (喜多) などがある。典拠未詳。巷説による創作か。浄瑠璃その他へ影響した。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報

デジタル大辞泉の解説

よろ‐ぼうし〔‐ボフシ〕【弱法師】

よろよろ歩く法師。よろぼし。
「―わが門(かど)許せ餅(もち)の札/其角」〈猿蓑

よろ‐ぼし【法師】

よろぼうし」の音変化。
「これに出でたる乞丐人(こつがいにん)は、いかさま例の―か」〈謡・弱法師
[補説]作品名別項。→弱法師

よろぼし【弱法師】[作品名]

謡曲。四番目物観世十郎元雅作。大坂天王寺で高安通俊が、諦観に身を置く弱法師という盲目の乞食(こじき)に会い、それがわが子の俊徳丸と知る。よろぼうし。
三島由紀夫戯曲をモチーフとする1幕の近代劇。昭和35年(1960)、「声」誌に発表。昭和40年(1965)、東京のアートシアター新宿文化にて初演。「近代能楽集」の8作目で最終作。

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

百科事典マイペディアの解説

弱法師【よろぼし】

能の曲目。〈よろぼうし〉とも。四番目物。狂乱物。観世元雅作。クセは世阿弥作。五流現行。讒言(ざんげん)で家を追われ,盲目となって天王寺の乞食の群れに身を投じながら,清らかさと風流心を失わぬ少年俊徳丸を描く。
→関連項目狂乱物

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて | 情報

世界大百科事典 第2版の解説

よろぼし【弱法師】

能の曲名。四番目物観世元雅(もとまさ)作。ただしクセは世阿弥作らしい。シテは俊徳丸。河内の高安に住む高安通俊(みちとし)(ワキ)は,人の告げ口でわが子の俊徳丸を追い出したが,それを後悔して,功徳のため天王寺で7日間の施しを行った。その施行(せぎよう)の場に,弱法師と呼ばれている盲目の少年(シテ)が来て施しを受ける。弱法師は乞食の身ながら,梅の匂いに気持ちを通わす清純な心の持主で,天王寺の縁起を説く曲舞(くせまい)を語って聞かせる(〈クセ〉)。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

大辞林 第三版の解説

よろぼうし【弱法師】

よろよろした法師、また、乞食坊主。よろぼし。 「 -我が門許せ餅の札(其角)/猿蓑」

よろぼし【弱法師】

能の一。四番目物。作者未詳。河内国高安の里の左衛門尉通俊の子俊徳丸は讒言ざんげんにより家を追われ、盲目となってさすらっていたが、天王寺で父に見いだされ、高安の里へともなわれる。よろぼうし。

出典|三省堂大辞林 第三版について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

弱法師
よろぼし

能の曲目。「よろぼうし」ともいう。四番目物。五流現行曲。金春(こんぱる)流は明治初期の復曲。他流も元禄(げんろく)(1688~1704)ころに再興したものとされる。世阿弥(ぜあみ)の長男、観世元雅(かんぜもとまさ)作。ただしクセの部分は世阿弥の作。河内(かわち)国(大阪府)高安の里の高安通俊(みちとし)(ワキ)は、人の讒言(ざんげん)を信じわが子を追放したことを悔い、天王寺で7日間の施しをしている。彼岸会(え)のにぎわいのなかに、盲目となり、乞食(こじき)の身となった俊徳丸(しゅんとくまる)(シテ)が現れ、梅の香にひかれつつ施行(せぎょう)を受け、天王寺の縁起を語る。彼岸中日の落日に極楽を念ずる日想観(じっそうかん)に続き、心眼に映る難波(なにわ)の景色に興奮した俊徳丸は、人々に突き当たり、盲目の境涯を思い知る。わが子と気づいていた父に伴われ、彼は故郷へと帰ってゆく。逆境にありながら、梅の香りのような詩心と、澄んだ諦観(ていかん)を失わぬ少年(青年の風貌(ふうぼう)の能面もある)として演出されるが、創作当時は妻を伴って出る脚本であった。影響を受けた後世の浄瑠璃(じょうるり)に『弱法師』『摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)』などがある。[増田正造]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の弱法師の言及

【能面】より

…平太(へいた)と中将は特に武将の霊に用い,頼政や景清,俊寛など特定の人物への専用面も現れた。喝食(かつしき),童子など美貌若年の面のなかにも,蟬丸や弱法師(よろぼし),猩々(しようじよう)といった特定面ができてくる。(4)は最も能面らしい表現のものといわれ,若い女面として小面(こおもて),増(ぞう),孫次郎,若女の4タイプがあり,それぞれ現在は流派によって使用を異にしている。…

【信徳丸】より

…純粋に仏教的な霊験を語る話ではあるが,継母の讒言や奸計によって盲目となる太子には,後の信徳丸の面影がある。能の《弱法師(よろぼし)》もまた忘れてはならぬ作である。さる人の讒言とあって継母の姿はないが俊徳丸の名が見え,天王寺の西門,右の鳥居を舞台とする日想観(につそうかん)信仰が取り入れられ,盲目の俊徳丸の心眼に映る四方の景観が,そのまま悉皆(しつかい)成仏の浄土を思わせる美しさに輝く。…

※「弱法師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

弱法師の関連キーワード餅の札・餠の札中村 大三郎中村大三郎一瀬美千世高安 六郎下村 観山富士浅間物小林拓生乞食坊主きそきそモチーフ高安六郎下村観山男物狂い伝え聞く近代劇現在物谷育子餅の札信徳丸

今日のキーワード

所信表明演説

政府の長が施政に関する考え方を明らかにするために行う演説。日本の国会では、臨時国会や特別国会の冒頭に内閣総理大臣が衆議院および参議院の本会議場で行い、当面の問題を中心にその国会における内閣の方針を示す...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

弱法師の関連情報