公害防止事業費事業者負担法(読み)こうがいぼうしじぎょうひじぎょうしゃふたんほう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

公害防止事業費事業者負担法
こうがいぼうしじぎょうひじぎょうしゃふたんほう

公害防止のための事業に要する費用事業者負担に関して、公害防止事業範囲、事業者の負担の対象となる費用の範囲、各事業者に負担させる額の算定等に関して定めるために1970年に制定された法律。昭和45年法律133号。

 かつての公害対策基本法(1993年11月廃止)は、公害防止のための事業について、事業者がその費用の全部または一部を負担すべきものとし(公害対策基本法22条1項)、事業者に負担させる費用の範囲、費用負担をする事業者の範囲および各事業者に負担させる費用の算定方式を定めるために別の法律を定めるべきものと規定していた(同2項)が、同規定に基づいて制定されたのが本法である。1993年(平成5)、公害対策基本法にかわって環境基本法が基本法として施行されるようになったが、公害対策基本法の規定を基本的に継承して原因者負担および受益者負担を定めた環境基本法の規定(37、38条)に基づいて、公害防止事業費事業者負担法は効力を有している。同法によれば、公害防止事業とは、緑地設置事業、浚渫(しゅんせつ)事業、客土事業、下水道等の設置の事業、工場等の周辺住宅の移転事業などとされ(2条2項)、事業者の負担総額の導き方(原因者負担、4条1項、2項)、各事業者の負担金の額の導き方などが定められ(5条)、負担総額の導き方が困難な場合に備えて、一定割合が定められている(7条)。

淡路剛久

『増原義剛著『図でみる環境基本法』(1994・中央法規出版)』『環境庁企画調整局編著『環境基本法の解説』(1994・ぎょうせい)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 の解説

公害防止事業費事業者負担法 (こうがいぼうしじぎょうひじぎょうしゃふたんほう)

国,または地方公共団体が公害を防止するために事業(公害防止事業)を実施する場合には,事業者はその費用の全部,または一部を負担すべきものとされる(環境基本法)が,その公害防止事業の範囲や事業者に負担させる費用の算定方法などを定めるために,1970年に制定された法律(1971施行)。この法律によると,公害防止事業とは,緑地(グリーンベルト)の設置,河川・湖沼・港湾などの浚渫(しゆんせつ),汚染農用地の客土事業などとされており(同法2条),事業者が負担すべき費用はその事業者の活動が公害の原因となる程度であり,その算定が困難であるときには,その事業ごとに割合が定められている(緑地1/4~1/2,浚渫3/4~10/10または1/2~3/4,客土事業1/2~3/4)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

公害防止事業費事業者負担法
こうがいぼうしじぎょうひじぎょうしゃふたんほう

昭和45年法律133号。環境基本法に規定されている公害について,公害防止事業の範囲,事業者の負担の対象となる費用の範囲,各事業者に負担させる額の策定その他公害防止事業に要する費用の事業者負担に関し必要な事項を定めた法律。1970年,いわゆる「公害国会」において公害対策基本法に基づき制定された。(→公害14法

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の公害防止事業費事業者負担法の言及

【土壌汚染】より

… 土壌汚染防止法に定められている特定有害物質が基準値(カドミウム:玄米中1.0ppm,銅:土壌中125ppm,ヒ素:土壌中15ppm)以上に検出された農用地は,95年3月現在,累計で129地域7140haに及んでいる。復元事業の費用は,〈公害防止事業費事業者負担法〉によって,原因者が存在する場合には,基本的には原因者が負担するように定められているが,近年その負担割合が種々の理由をつけ引き下げられる傾向にある。 最近の土壌汚染の特徴として,次の2点が指摘できる。…

※「公害防止事業費事業者負担法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android