公帖(読み)コウジョウ

デジタル大辞泉 「公帖」の意味・読み・例文・類語

こう‐じょう〔‐デフ〕【公×帖】

中世、禅宗官寺五山十刹じっせつ・諸山の住持を任命する幕府辞令公文くもん

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精選版 日本国語大辞典 「公帖」の意味・読み・例文・類語

こう‐じょう‥デフ【公帖】

  1. 〘 名詞 〙 禅宗寺院のうちの、五山、十刹、諸山などの官寺およびそれに準ずる寺院の住持任命の辞令。院宣、綸旨、檀那帖などによることもあったが、大部分は幕府の御教書形式の公帖によった。なお室町中期以後は関東の十刹、諸山(のちには建長寺をのぞく関東五山も)は鎌倉府が任命した。また、公帖を受けて実際に入寺する場合と、官銭(かんせんなり)、功徳成(くどくなり)などの、実際には入寺しないで住持の資格だけを与える場合があった。後者坐公文居公文(いなりくもん)という。→公文(くもん)
    1. [初出の実例]「去廿日、所伺之諸寺新命公帖、御判出矣」(出典蔭凉軒日録‐永享九年(1437)七月二二日)

く‐じょう‥デフ【公帖】

  1. 〘 名詞 〙くもん(公文)
    1. [初出の実例]「豊万寿寺中、亦有五山長老、以百十七貫、売禅寺公帖」(出典:臥雲日件録‐享徳四年(1455)正月五日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公帖」の意味・わかりやすい解説

公帖
こうじょう

古文書の一形式。公文(くもん)ともいう。室町時代、禅宗寺院のなかの官寺の住持を任命する文書。室町幕府は、禅寺に五山・十刹(じっさつ)・諸山の寺格の制を定め、公帖を出してそれらの住持を任命した。室町中期以降、幕府は仏寺の造営修理などにあたって、その費用をつくりだす方法として、官銭を納めさせて、実際には入寺しない名目上の住持を任命する売官制度を盛んに利用した。このとき発給する公帖を、とくに坐(ざ)公文といった。

[百瀬今朝雄]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「公帖」の解説

公帖
こうじょう

「くじょう」とも。公文(くもん)とも。禅寺住持の補任状。五山・十刹・諸山の官寺とそれに準じる禅寺に対してだされ,院宣・綸旨(りんじ)形式もあるが,一般には幕府による御教書(みぎょうしょ)のかたちをとる。起源は定かでないが,1279年(弘安2)無学祖元に対してだされたものが現存最古。手続きはおもに将軍と僧録の間で行われた。受領者は幕府に官銭を収めたので,それを得るため実際には入寺しない坐(居成)公文(いなりのくもん)がだされた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公帖」の意味・わかりやすい解説

公帖
こうじょう

公文 (くもん) ともいう。中世,仏,社寺のうち官寺住持の任命書。鎌倉時代には寺によって朝廷と武家からそれぞれ出され,建武中興期には朝廷から綸旨の形で出されたが,室町時代にはもっぱら将軍から出された。公帖に対しては謝礼の官銭が出されたが,室町時代中期以降は売官の風習を生じ,名目だけの公帖が乱発された。

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世界大百科事典(旧版)内の公帖の言及

【公文】より

…したがって荘園現地の実質的支配権をめぐる鎌倉期における領家と地頭の争いは,しばしば公文の進退権をめぐって行われた。なお特殊な用例として,室町時代,五山・十刹・諸山など官寺禅院の住持の任命辞令(多くは幕府発行)を公文・公帖(こうじよう)といい,実際に入寺しない者に官銭を得るために出したものを売公文,入寺しない者を坐公文・居公文(いなりくもん)といった。公文所【工藤 敬一】。…

※「公帖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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