公廨田(読み)クガイデン

デジタル大辞泉 「公廨田」の意味・読み・例文・類語

くがい‐でん【×廨田】

律令制で、在外諸司官人に支給された職田しきでん。くげでん。

くげ‐でん【×廨田】

くがいでん(公廨田)

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精選版 日本国語大辞典 「公廨田」の意味・読み・例文・類語

くがい‐でん【公廨田】

  1. 〘 名詞 〙 本来公用に資するための田の意であるが、奈良平安時代、この収益を官人の職俸にあてたところから職分田(しきぶんでん)性質をもち、大宝令では在外所司の職田公廨田と称した。後には在京諸司田をも公廨田と称した。事力に耕作させ、あるいは賃租して収益を得た。くがい。→職分田職田
    1. [初出の実例]「傔仗〈略〉其考選事力及公廨田並准史生」(出典続日本紀‐和銅元年(708)三月乙卯)

くげ‐でん【公廨田】

  1. 〘 名詞 〙くがいでん(公廨田)

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改訂新版 世界大百科事典 「公廨田」の意味・わかりやすい解説

公廨田 (くがいでん)

8世紀初頭の大宝令における田制の一つ。在外諸司の大宰府官人と国司の史生(ししよう)以上に支給された田地。ただし,これは公廨(官庁)ではなく,官職に対して支給されたので,実質的には職田しきでん)と区別がなく,養老令ではともに職分田(しきぶんでん)と呼ばれた。公廨田は不輸租田である。大宰府の官人には官職に応じて10町~6段,国司には2町6段~6段の範囲で支給された。公廨田には田の面積に応じて,大宰府は帥(そち)の20人から史生の2人まで,国司は8~2人の事力(じりき)が与えられた。事力は公廨田の耕作に1年交替で従事する正丁で,庸が免除された。したがって,公廨田の経営は直接的経営と規定できる。令制では官人の交代以前に種(う)えれば,前任者に占有権があるが,724年(神亀1)以降は5月以降に新任者が赴任すれば,前任者のものになった。闕官田は公力を用いて耕作された。令制下では傔仗(けんじよう)按察使(あぜち)等にも支給されたが,757年(天平宝字1)には大学寮,雅楽寮陰陽寮等の官庁に支給する諸司田としての公廨田が設置された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公廨田」の意味・わかりやすい解説

公廨田
くがいでん

「くげでん」とも読む。公廨とは官衙(かんが)を意味する。したがって公廨田は本来その田からの収入をもって官衙の用にあてる田を意味するが、わが律令(りつりょう)制では一部官人の俸禄(ほうろく)にあてる田として規定された。

(1)律令制下の広義の職田(しきでん)(職分田)の一種で、大宰府(だざいふ)や国司など在外諸司の官人に支給された田。大宝令での名称。養老(ようろう)令では、この在外諸司公廨田、大納言(だいなごん)以上職田、郡司(ぐんじ)職田の名称をすべて職分田と統一したが、養老令施行後も職分田の名称は用いられたことはない。不輸租田。大宰帥(そち)の10町を最高とし、諸国史生(ししょう)の6段を最低とする。その後、按察使(あぜち)その他の在外諸司にも支給。

(2)奈良時代後半になると、雅楽(うた)寮などいくつかの官司には勧学や尚武のためその財源として官司付属の田を設定したが、これも本来の字義に従って公廨田とよばれた。平安時代に入ると、律令財政の逼迫(ひっぱく)のため、このタイプの公廨田からの収入は、官人の人件費や一般的支出にあてられるようになった。

[虎尾俊哉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公廨田」の意味・わかりやすい解説

公廨田
くがいでん

「くげでん」とも読む。公廨とは官衙のことで,日本の古代令制で官衙の費用にあてる田をいい,さらに官人に給する職田を意味した。『大宝令』では,大臣,大納言へ給する田を職分田といい,大宰府や諸国の国司,郡司などに給する田を公廨田といい,不輸租田であった。『養老令』では,この両者を職田と称した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「公廨田」の解説

公廨田
くがいでん

律令制において官庁の経費を出すための職田
「くげでん」とも読む。国司の職田 (しきでん) も公廨田といった。不輸租田で,平安中期から私有地化した。

公廨田
くげでん

くがいでん

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百科事典マイペディア 「公廨田」の意味・わかりやすい解説

公廨田【くがいでん】

職分田

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世界大百科事典(旧版)内の公廨田の言及

【職田】より

…8世紀初頭の大宝令制で,中央の太政大臣・左右大臣・大納言に,その官職に応じて40~20町の範囲で支給した田地,および郡司に支給した郡司職田のことをいう。養老令では,これら職田と在外諸司の大宰府官人および国司に与えられた公廨田(くがいでん)を含めて,職分田(しきぶんでん)と称する。実質的には職田と公廨田は区分がなく,職分田と同一と考えられる。…

※「公廨田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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