8世紀初頭の大宝令制で,中央の太政大臣・左右大臣・大納言に,その官職に応じて40~20町の範囲で支給した田地,および郡司に支給した郡司職田のことをいう。養老令では,これら職田と在外諸司の大宰府官人および国司に与えられた公廨田(くがいでん)を含めて,職分田(しきぶんでん)と称する。実質的には職田と公廨田は区分がなく,職分田と同一と考えられる。職分田を職田とも称することがある。大納言以上の職田は不輸租田で(《延喜式》は輸租田),百姓の賃租によって耕作された。官職につけば支給されるが,解免の際はその官位に従って収公される。ただし,失誤なく理由があって解官される場合は,国司公廨田・郡司職田と異なって半減ですむ。郡司職田は四等官の職に応じて6町から2町支給され,大国の守でも2町6段という国司公廨田より支給面積が多い。しかし,令制下では職分田のうち唯一の輸租田であり,これらは大化前代の国造出身者としての郡司の特殊な性格からきていると思われる。後には,諸博士・坊令等にも職田が与えられた。
執筆者:吉村 武彦
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律令制(りつりょうせい)的土地制度の地目の一つ。養老令(ようろうりょう)では職分田(しきぶんでん)。職田には、(1)大納言(だいなごん)以上に与えるもの、(2)大宰府(だざいふ)の官人(史生(ししょう)以上)および各国司(史生以上)に与えるもの(これは大宝令(たいほうりょう)では公廨田(くがいでん)といった)、(3)各郡司の「主帳(しゅちょう)」以上に与えるもの、の3種類があった。いずれも職務に対して支給されるものであり、その所有は在職期間に限られた。納税の有無についていえば、(1)(2)はともに不輸租田(ふゆそでん)(ただし(1)は貞観(じょうがん)主税式では輸租となっている)、(3)は輸租田であった。耕営の方法は、(1)は農民の賃租(土地の借耕)による経営、(2)は耕作のため国家から支給される正丁(せいてい)(事力(じりき))による徭役(ようえき)労働、(3)は賃租または自家労働力による経営であったと推定されている。
[村山光一]
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大宝田令に規定された,特定の官職に在任するものに対して支給される田。養老田令では職分田(しきぶんでん)と改称されたが,実際には職田という名称が使用されていた。議政官である大納言以上に特権として与えられるほか,在外諸司の職田,郡司職田などもあった。のちに下級官人の給与を補完するために大学寮・陰陽寮・典薬寮の博士や坊令(ぼうれい)・按察使(あぜち)・郡毅(ぐんき)・牧監などにも支給された。
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…在外諸司の大宰府官人と国司の史生(ししよう)以上に支給された田地。ただし,これは公廨(官庁)ではなく,官職に対して支給されたので,実質的には職田(しきでん)と区別がなく,養老令ではともに職分田(しきぶんでん)と呼ばれた。公廨田は不輸租田である。…
※「職田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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