倫理的利己主義(エゴイズム)をいい、利他主義、部分的には功利主義と対立する。ソフィスト、キレネ学派、エピクロス学派、ホッブズらに著しく、理論的には義務論的な倫理の形もとりうるが、個人の善という目的を行動の義務、正しさの唯一の基準とする点で、実際には目的論的倫理の一形態となる。さらに、目的の内容の相違に応じて幸福主義、快楽主義などの一形態ともなるが、快楽主義であることが多い。利己主義を支援する有力な根拠は、人間本性が自己の利益だけを追求するようにできているという心理的利己主義で、フロイト派の立場もその一例である。しかし、人間の利他的傾向を完全に否定し去ることは事実問題として一種の独断となる。さらに倫理学説として普遍化されれば、各人が自己の利益だけを追求する結果、主張者の利益にならないという現実の矛盾に陥り、普遍的な格率とはなりにくい。
[杖下隆英]
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…日常用いられている意味では,エゴイズム(利己主義)とは自己の欲望の充足あるいは利益の追求をもっぱら念頭において行動し,その行動が他者や社会一般に及ぼす迷惑を考慮に入れない態度を指す。エゴイズムという語は個人主義individualismという語と同じ意味に用いられることもある。…
※「利己主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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