葬儀の際に死者の頭陀袋(ずだぶくろ)に入れる六文銭のこと。江戸時代の随筆《広益俗説弁》には〈金銀銭を棺に入るを六道銭〉と書いている。今では一般的に紙に六文銭を書いたものを入れている。高知県では銭形の木片6枚である。青森県野辺地の六道銭は6文ではなく49文である。愛知県北設楽(きたしたら)郡では六道銭を六道の六地蔵への賽銭と考えている。鳥取県西伯郡では極楽へ行くまでの旅費,または三途(さんず)の川の渡し賃ともいい,〈どんな金持ちでも旅立ちのときには6文しか持って行けない〉とも伝えている。これらは仏道修行者として待遇された死者の旅費と考えられたものである。宮崎県真幸でも舟賃というが,この世に出てきて飴を買って食べる代金ともいって,一厘銭7枚をいれたという。なお,六文銭は古墳時代の鎮魂のための鏡のミニチュアであり,それが祓の銭となり,三途の川の渡し銭となったという説もある。
執筆者:田中 久夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…頭陀袋のなかに一文銭を6個入れたり,最近でも紙片に六文銭を描いて亡者にもたせる葬送儀礼が行われているが,これは三途の川を無事に渡らせたいとする思いから出たものである。六文銭は俗に〈三途の川の渡し賃〉といい,六道銭ともいう。また,三途の川の深さを測ったり,先に死んで後からくる亡者のために三途の川を導くことを〈三途の瀬踏み〉というが,転じて危険なところを探検することの意になった。…
…サンヤブクロ,ゴショウブクロなどの名もある。地方により入れる物はちがうが,握り飯,煙草ときせる,近親者のつめ,六道銭と称する銭6枚などの例が多い。六道銭は三途(さんず)の川の舟渡賃とも,この世に出てきて飴を食べる代金ともいったりする。…
※「六道銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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