物理的な力ではない、神秘的、超自然的、非人格的な力のこと。典型的なものとしてメラネシアにマナの観念がある。マナは、人間、霊魂、動物、植物、石などいかなるものにも宿ることができ、善悪いずれにも働くことができるが、これを所有すれば益を得ることができる超自然的な力である。同様な観念はアフリカの諸民族、ポリネシア、インドネシアなどにもみられる。北アメリカの先住民アルゴンキン系諸族のマニトウも呪力を意味する類似のことばである。このような呪力はタブーと密接な関係があり、そのような呪力を畏怖(いふ)し敬遠する人間の側の態度がタブーとなる。穢(けがれ)の観念も呪力と関係し、たとえば女性の月経血を穢とするのは、月経血に危険な呪力が備わっていると考えるからである。人間が呪力をもつという信仰も広くみられ、学習によって呪力を獲得し意図的にまじないを行ってその力を行使する邪術(じゃじゅつ)信仰と、先天的にもっている呪力が本人の意志とは無関係に他人に作用し災いを与えるという妖術(ようじゅつ)信仰がある。呪力の観念はアニミズムより原初的であるとするマナイズム、アニマティズムなどの理論があるが、このような宗教起源論的なとらえ方は今日では批判も受けている。しかし呪力の観念は、宗教、信仰の基盤をなすものの一つであるといえる。
[板橋作美]
…他方,呪文より呪具が重要視される社会もあり,たとえばアフリカのアザンデ族では呪文も使われるが,その場その場で少し変えることもでき,呪文よりむしろ木製の呪具のほうが重要である。 呪術に対する信仰は呪力に対する信仰と密接に結びついている。特定の物や人間,あるいは人間の行為が超自然的な力をもつとする考え方に基づき,その力を用いて目的を達しようとするものが呪術であるともいえる。…
…科学が客観的に事物に存在する力や法則を使うのに対し,まじないでは主観的に内在すると信じられている霊力を動員し利用する。呪力は事物の中に存在し,そこから独立できないでいると信じられる超自然的な力である。〈くわばらくわばら〉という雷よけの呪文,〈あした天気になーれ〉という子どもの呪文や,〈成れ成れ,成らねば切るぞ〉という成木責めの呪文は,自然や果樹の精霊に言葉のもつ呪力(言霊(ことだま))によって直接語りかけるものである。…
※「呪力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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