円融(読み)えんゆう

精選版 日本国語大辞典 「円融」の意味・読み・例文・類語

えん‐ゆう ヱン‥【円融】

〘名〙 (「えんにゅう」と連声になることが多い) 仏語それぞれ立場を保ちつつ完全に融けあって一体となり、相互にさまたげのないこと。完全に円満なこと。これに対し、互いにへだてあって、別々であることを隔歴(きゃくりゃく)という。円融と隔歴の関係は、無差別と差別、絶対と相対という関係に近い天台宗華厳宗などをはじめ諸宗で多く用いる。
本朝文粋(1060頃)一三・為仁康上人修五時講願文〈大江匡衡〉「円融亭午、寂滅平西」
ささめごと(1463‐64頃)上「仏法の円教円融に至りて万象を捨てざる心は」 〔首楞厳経‐四〕

えん‐にゅう ヱンユウ【円融】

〘名〙 「えんゆう(円融)」の連声。
※大観本謡曲・兼平(1548頃)「円融(ヱンニュウ)の法も曇りなき」

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デジタル大辞泉 「円融」の意味・読み・例文・類語

えん‐にゅう〔ヱンユウ〕【円融】

えんゆう」の連声れんじょう

えん‐ゆう〔ヱン‐〕【円融】

連声れんじょうで「えんにゅう」とも》仏語。それぞれの事物が、その立場を保ちながら一体であり、互いにとけ合っていて障りのないこと。

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改訂新版 世界大百科事典 「円融」の意味・わかりやすい解説

円融 (えんゆう)

仏教の思想用語の一つ。〈えんにゅう〉ともいう。主として天台と華厳宗で用いる。個物実体と,対立観を否定し,真実に存在するものを縁起とし,不可得空とする仏教の根本真理を,さらに論理化し体系づけたもの。すなわち,事と理の完全な相即相入,または融合を説いて,事理・事事・理理の三種円融とし,空仮中の三諦を,総別・同異・成壊という六相円融に分けるなど,相対即絶対の思考を強めるのが特色で,日本仏教で,衆生本来仏という独自の本覚思想を展開させる根拠となる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「円融」の意味・わかりやすい解説

円融
えんにゅう

仏教用語。それ独自の立場を保ちながら,しかも他のものと完全に一体となって,互いにとけあい妨げのないこと。差別がありながらしかも平等一体であることを表わす。互いにへだてがあって別々であることを隔歴 (きゃくりゃく) というのに対する。

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普及版 字通 「円融」の読み・字形・画数・意味

【円融】えんゆう

なだらか。

字通「円」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の円融の言及

【円融】より

…個物の実体と,対立観を否定し,真実に存在するものを縁起とし,不可得空とする仏教の根本真理を,さらに論理化し体系づけたもの。すなわち,事と理の完全な相即相入,または融合を説いて,事理・事事・理理の三種円融とし,空仮中の三諦を,総別・同異・成壊という六相円融に分けるなど,相対即絶対の思考を強めるのが特色で,日本仏教で,衆生本来仏という独自の本覚思想を展開させる根拠となる。【柳田 聖山】。…

※「円融」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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