凌ぐ(読み)シノグ

デジタル大辞泉 「凌ぐ」の意味・読み・例文・類語

しの・ぐ【×凌ぐ】

[動ガ五(四)]
押し分けて前に進む。乗り越えて進む。「波濤はとうを―・いで行く」
困難や苦境などにじっと堪えて、なんとか切り抜ける。辛抱して乗り越える。また、防いで、堪え忍ぶ。「飢えを―・ぐ」「ピンチを―・ぐ」「風雨を―・ぐ」「日本の夏は―・ぎにくい」
人を侮る。
何処どこまでも人を―・いだ仕打な薬売は」〈鏡花高野聖
能力程度などが他のものを追い抜いて上に出る。他よりまさる。「壮者を―・ぐ元気」「前作を―・ぐ傑作」「山頂雲を―・ぐ」
押し伏せる。おおいかぶさる。
高山の菅の葉―・ぎ降る雪の消ぬとか言はも恋の繁けく」〈・一六五五
[可能]しのげる
[類語]勝る立ち勝る凌駕長ける越える耐える過ぎる追い越す追い抜く突破超越

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「凌ぐ」の意味・読み・例文・類語

しの・ぐ【凌】

  1. 〘 他動詞 ガ五(四) 〙
  2. 押しふせる。下に押えるようにする。おおいかぶせる。なびかす。
    1. [初出の実例]「高山の菅の葉之努芸(シノギ)降る雪の消(け)ぬとか言はも恋の繁けく」(出典万葉集(8C後)八・一六五五)
  3. 障害物などを押しわけ、押しつけるようにして進む。
    1. (イ) 押しわける。かきわける。
      1. [初出の実例]「宇陀の野の秋萩師弩芸(シノギ)鳴く鹿も妻に恋ふらく我れには益(ま)さじ」(出典:万葉集(8C後)八・一六〇九)
    2. (ロ) のりこえて進む。山、波などをのりこえる。
      1. [初出の実例]「秋風の 吹き来る夕(よひ)に 天の河 白波凌(しのぎ) 落ちたぎつ 早瀬渡りて」(出典:万葉集(8C後)一〇・二〇八九)
    3. (ハ) 特に困難なことをのりこえる。のりきる。
      1. [初出の実例]「よろづのゆゑさはりをしのぎて思ひたち給へる御まゐり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)あて宮)
    4. (ニ) たえる。我慢する。また、たえしのんでもちこたえる。
      1. [初出の実例]「雪しのく庵のつまをさし添へて跡とめて来ん人を止めん」(出典:山家集(12C後)下)
      2. 「腰簑身にまとひ一夜をしのぎける」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)四)
  4. あなどる。見くだす。圧倒する。
    1. [初出の実例]「村(ふれ)に君(きみ)あり、長(ひとこのかみ)有りて谷に自(みつか)ら疆(さかひ)を分ちて用(も)て相(あひシノキきしろふ)」(出典:日本書紀(720)神武即位前(北野本室町時代訓))
    2. 「其の村の童女等皆心を同じくして、凌(シノキ)(あなづり)て曰はく、〈興福寺本訓釈 凌 之乃支〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
  5. (困難にたえて)苦労する。努力する。
    1. [初出の実例]「それをよまんよまんとしのぎ侍れば」(出典:毎月抄(1219))
  6. 程度などが他よりすぐれる。まさる。凌駕する。
    1. [初出の実例]「相徉、雲をしのいで心の高うあがった心ぞ」(出典:玉塵抄(1563)五五)

しぬ・ぐ【凌】

  1. 〘 他動詞 ガ四段活用 〙 ( 現在、「の」の甲類の万葉仮名とされている「怒」「努」「弩」などを「ぬ」とよんだところからできた語 ) =しのぐ(凌)
    1. [初出の実例]「足引の石間(いはま)をしぬぎわく水の落ちたぎち行く風のすずしさ」(出典:天降言(1771‐81頃か))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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