過ぎる(読み)スギル

デジタル大辞泉 「過ぎる」の意味・読み・例文・類語

す・ぎる【過ぎる】

[動ガ上一][文]す・ぐ[ガ上二]
ある場所を通り越す。通過する。通りすぎる。「列車は京都駅を―・ぎた」「優勝パレードが―・ぎて行った」「嵐が―・ぎる」
時間が経過する。時がたつ。時が移り、その時間・時期が終わりになる。「予定の時間が―・ぎる」「―・ぎた昔を懐かしむ」「夏休みもあっけなく―・ぎた」「盛りを―・ぎる」
一定数量をこえる。「六十を―・ぎても髪は黒々している」「二十はたちを―・ぎる」
普通の程度・水準をこえている。「いたずらが―・ぎる」「わがままが―・ぎる」
(「…にすぎる」の形で)つりあわないほどすぐれている、まさる。分以上である。「彼には―・ぎた女房だ」「これに―・ぎる名誉はない」
(「…にすぎない」の形で)ただ…であるだけのことである。それ以上のものではない。…でしかない。「小学校時代はごく平凡な生徒に―・ぎなかった」「今日の事件氷山の一角に―・ぎない」
(動詞の連用形、形容詞・形容動詞の語幹などに付いて)行為・状態などが度をこえている。はなはだしく…する。または、はなはだしく…である。「めだち―・ぎる」「働き―・ぎる」「テレビの音が大き―・ぎる」「欲がなさ―・ぎる」「地味―・ぎる着物
生活する。生計を立てる。
「薪をとりて世を―・ぐるほどに」〈宇治拾遺・一〉
一生が終わる。死ぬ。
「ま草刈る荒野にはあれど黄葉もみぢばの―・ぎにし君が形見とそし」〈・四七〉
10 やりすごす。
「そしり笑はるるにも恥ぢず、つれなく―・ぎてたしなむ人」〈徒然・一五〇〉
[下接句]口が過ぎる言葉が過ぎる度が過ぎる身に過ぎる偃鼠えんそ河に飲むも満腹に過ぎず思い半ばに過ぐ鷦鷯しょうりょう深林に巣くうも一枝いっしに過ぎず白駒はっくげきを過ぐるがごと
[類語]経つ経る移る過ぎ去る過ぎ行く越える通る通過する経由する通り過ぎるよぎる横切る通り抜ける越す渡る通り越すまたぐ越境する踏み越える上回る超す追い越す追い抜くはみ出す凌ぐ行き過ぎる超過する突破超越凌駕過剰オーバー去る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「過ぎる」の意味・読み・例文・類語

す・ぎる【過】

  1. 〘 自動詞 ガ上一 〙
    [ 文語形 ]す・ぐ 〘 自動詞 ガ上二段活用 〙
  2. [ 一 ] 人、物、時などが近づいて来て、または、そこを通って、向こうへ去って行く。
    1. ある場所、ある道筋を通って、その先へ行く。通過する。
      1. [初出の実例]「新治 筑波を須疑(スギ)て 幾夜か寝つる」(出典古事記(712)中・歌謡)
    2. ある物、場所の近くを通って、そこから離れ去って行く。
      1. [初出の実例]「玉藻刈る処女(をとめ)須疑(スギ)て夏草の野島が崎にいほりすわれは」(出典:万葉集(8C後)一五・三六〇六)
    3. 日時、年月が移って行く。経過する。
      1. [初出の実例]「時も須疑(スギ) 月も経ぬれば 今日か来む 明日かも来むと」(出典:万葉集(8C後)一五・三六八八)
    4. ( 他動詞的に用いて ) 日を暮らす。また、生計を立てる。
      1. [初出の実例]「それにその金をこひて、たへがたからむ折は、売りてすぎよ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
      2. 「ミヲ suguru(スグル)。または、イノチヲ suguru(スグル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  3. [ 二 ] 物事が盛んな状態から、衰退・消滅・終了の状態へと進んで行く。
    1. 盛りを経て衰えて行く。
      1. [初出の実例]「ほととぎす夜声なつかし網ささば花は須具(スグ)とも離(か)れずか鳴かむ」(出典:万葉集(8C後)一七・三九一七)
      2. 「京の花さかりはみなすぎにけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
    2. 物事が終わりになる。すむ。
      1. [初出の実例]「いみもすぎぬれば、京にいでぬ」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
    3. ある気持などが消えてなくなる。
      1. [初出の実例]「嘆きも いまだ過(すぎ)ぬに 憶(おも)ひも いまだ尽きねば」(出典:万葉集(8C後)二・一九九)
    4. 死ぬ。
      1. [初出の実例]「ま草刈る荒野にはあれど黄葉(もみちば)の過(すぎ)にし君が形見とそ来し」(出典:万葉集(8C後)一・四七)
      2. 「隠居が逝(スギ)られ、追つけ葬礼を出す支度」(出典:咄本・都鄙談語(1773)時宜)
  4. [ 三 ] 物事が、ある数量や程度を越える。
    1. ある数量や程度を比べて、それ以上になる。まさる。→過ぎない
      1. [初出の実例]「近くあらば いま二日だみ 遠くあらば 七日のをちは 須疑(スギ)めやも」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇一一)
      2. 「子に過たる宝なしとて」(出典:平家物語(13C前)三)
    2. 適当な度合を越える。
      1. (イ) その人の身分地位や、その場所の様子などにふさわしくないほど、物事の度合が高くなる。分を越える。過分になる。
        1. [初出の実例]「よろこび身にすぎ、たのしび心にあまり」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
        2. 「ブンニ suguita(スギタ) キルモノヂャ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. (ロ) 物事が適当な度合を越える。過度になる。動詞の連用形や形容詞・形容動詞の語幹に付けて用いることも多い。
        1. [初出の実例]「已に衰へ邁(スギ)老い耄(ほ)れ」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九)
        2. 「ものむつかしげにふとりすぎ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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