二つの同じ大きさの長方形の平面を合掌形に寄り掛けた屋根形式をいい、あたかも本をなかば開いて伏せたような形である。軒と棟との長さが等しく、隅棟(すみむね)(降り棟)もなく、寄棟(よせむね)、入母屋(いりもや)などに比べ単純な屋根形となる。古く銅鐸(どうたく)に鋳出された高床(たかゆか)家屋や伊勢(いせ)神宮正殿がこの屋根をのせており、竪穴(たてあな)住居はともかく、およそ地上に床を置く方形平面の建物が発生して以来、洋の東西を問わず現在までもっとも多用されてきた屋根形式である。切妻屋根をもつ建物において、軒と平行な面を平(ひら)、それと直角方向の面を妻(つま)とよび、主出入り口が平側にあるものを平入(ひらいり)、妻側にあるものを妻入(つまいり)の建物という。伊勢神宮正殿は平入、出雲(いずも)大社本殿は妻入である。切妻屋根では、妻側には傾斜した屋根の端(螻羽(けらば))が現れるだけで軒はないから、妻入の建物では出入り口の上にひさしを必要とする。これが社寺建築でいう向拝(こうはい)(後拝(ごはい)、階隠(はしがくし)ともいう)である。
螻羽部分はまた破風(はふ)ともよび、その下の三角形の壁(妻壁)とともにしばしば意匠的に取り扱われる。ヨーロッパの古典建築ではペディメントpedimentといい、直線のほか破風を曲線または階段形につくることがあり、ときにはブロークンペディメントbroken pedimentと称して、頂点部分を欠き、そこに彫刻などの装飾物を取り付けることもある。日本の大邸宅などで車寄せの屋根に用いられる唐破風(からはふ)、千鳥破風(ちどりはふ)、起(むく)り破風(はふ)も切妻屋根の変形とみなされる。
[山田幸一]
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棟の線を頂として,その左右に四角形の面をふき下ろしてできる屋根の形。屋根が外壁面と交わるところにできる三角形の部分を妻と呼び,この妻のある側の壁を妻壁というが,切妻型の屋根では,妻壁部分が長く続く屋根を途中で切り落とした形になるのでこの呼名がある。軒桁と平行で同じ長さをもつ棟木(むなぎ)を設け,これから軒桁に向かって垂木を架けて,これに屋根をふくことによってできる単純な形式であり,古今東西を通してもっとも基本的な屋根の形となっている。妻の部分に開口部を設ければ,屋根面を傷めずに,空気の流通をさせることができるので,原始的住居では,この部分を煙出しに利用している例が多く,現代でも小屋裏換気孔を設けている場合が多い。はり間が大きくなり,棟高も高くなると,屋根によって妻壁を風雨から守ることは困難になるので,風雨の条件の厳しいところでは妻側にもひさしがある寄棟や入母屋の形式が望ましい。
→屋根
執筆者:塚越 功
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… 民家の外観的な特徴は,主として屋根の形式で分類される。まず屋根の形では,切妻(きりづま)造,寄棟(よせむね)造,入母屋(いりもや)造の種別がある。このような形式の屋根が一棟だけで構成されているものを直屋(すごや)と呼び,別棟が組み合わされる形式を西日本では角屋(つのや)と呼び,東北地方では曲り屋(岩手県など)や中門(ちゆうもん)造(山形県,秋田県など)と呼ぶ。…
…その意味では,外敵から身を守る目的で壁を重視しているヨーロッパや乾燥地帯に比べて,日本の建築における屋根の重要性は高いといえる。
[屋根の形式]
日本の木造建築における基本的な屋根形式は,切妻と寄棟およびこの両者を合成した入母屋の三つであるが,軽微な建物では一方向に傾きをもつ片流れがよく使われるし,寄棟の特殊型である方形(ほうぎよう)も場合によって使われ,また,近年になって,鉄筋コンクリート建物の普及に伴って,水平な陸(ろく)屋根も数多く使われるようになった(図1)。 以上の6形式が基本的な屋根形式であるが,そのほかに,これらの形式を組み合わせたり,変形させた特殊な屋根形式もある(図2)。…
※「切妻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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