初冠(読み)ういかむり

精選版 日本国語大辞典 「初冠」の意味・読み・例文・類語

うい‐かむり うひ‥【初冠】

〘名〙
① =ういこうぶり(初冠)①〔天正本節用集(1590)〕
※天草本平家(1592)四「Vycamuri(ウイカムリ)シテ ナノリヲバ ヨシムネト マウシタ」
能楽で用いる小道具の一つ。垂纓(たれえい)または巻纓(まきえい)の冠。黒色の羅または紗でつくり、形は円平で、巾子(こじ)をつけ、ときには日陰鬘(ひかげかずら)または挿頭(かざし)をつけることがある。

うい‐こうむり うひかうむり【初冠】

〘名〙
※三体詩素隠抄(1622)三「此王牧殿は、年少の時に文官にあげられてうひかふむりし、玉帯をたまわりて」
源平盛衰記(14C前)三「主上御元服有って〈略〉初冠(ウイカフムリ)の御姿最(いと)(うつく)しく」

うい‐かぶり うひ‥【初冠】

〘名〙
書紀(720)大化三年是歳(寛文版訓)「七には曰はく、建武初位(ウヰカブリなり)。又は立身(りっしむ)と名づく〉」
※平家(13C前)一一三歳にてうゐかぶりきせて、義宗とぞなのらせける」

うい‐こうぶり うひかうぶり【初冠】

〘名〙 (「こうぶり」は動詞「こうぶる(冠)」の連用形名詞化で、冠の意)
① (冠によって位階を表わしたところから、最初の位の意) 最初の叙爵として五位に任ぜられ、仕官すること。ういかがふり。ういかぶり。ういかむり。ういこうむり。
② 元服して、初めて冠を着けること。
伊勢物語(10C前)一「むかし、をとこ、うゐかうぶりして、平城(なら)の京、春日の里にしるよしして、狩に往にけり」

しょ‐かん ‥クヮン【初冠】

〘名〙 (「初冠(ういこうぶり)」を音読した語) 元服してはじめて冠をつけること。また、その人。年若い人少年冠者(かんじゃ)
※幸若・烏帽子折(室町末‐近世初)「あらいつくしのしょくゎんや御身はいつくの人ぞ」

うい‐かがふり うひ‥【初冠】

※石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「初に弱冠(ウヒカカフリ)の時に、剣南の仰州の臨渓県に遊く」

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デジタル大辞泉 「初冠」の意味・読み・例文・類語

うい‐こうぶり〔うひかうぶり〕【初冠】

元服して、初めて冠を着けること。ういかがふり。ういかぶり。ういかむり。ういこうむり。
「昔、男、―して」〈伊勢・一〉

うい‐かぶり〔うひ‐〕【初冠】

ういこうぶり」に同じ。

うい‐かむり〔うひ‐〕【初冠】

ういこうぶり」に同じ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「初冠」の意味・わかりやすい解説

初冠
ういこうぶり

日本古代に起った男子の成人儀礼で,元服の中心をなす儀式。官職位階によって区別された冠を初めてつける礼。武家社会では冠の代りに烏帽子 (えぼし) を用いた。

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普及版 字通 「初冠」の読み・字形・画数・意味

【初冠】しよかん

元服。

字通「初」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の初冠の言及

【元服】より

…〈げんぷく〉ともいい〈元〉は首,〈服〉は着用する意。首服,首飾,冠礼,加冠,初冠(ういこうぶり∥ういかぶり),御冠(みこうぶり),冠ともいう。
[古代]
 冠礼としての成人式は,日本古代では682年(天武11)に規定された男子の結髪加冠の制以後,冠帽着用の風習が普及してからで,国史に見えるものとしては714年(和銅7)の聖武天皇(14歳で元服)の記事が初めとされる。…

【元服】より

…〈げんぷく〉ともいい〈元〉は首,〈服〉は着用する意。首服,首飾,冠礼,加冠,初冠(ういこうぶり∥ういかぶり),御冠(みこうぶり),冠ともいう。
[古代]
 冠礼としての成人式は,日本古代では682年(天武11)に規定された男子の結髪加冠の制以後,冠帽着用の風習が普及してからで,国史に見えるものとしては714年(和銅7)の聖武天皇(14歳で元服)の記事が初めとされる。…

※「初冠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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