加賀見山再岩藤(読み)かがみやまごにちのいわふじ

精選版 日本国語大辞典 「加賀見山再岩藤」の意味・読み・例文・類語

かがみやまごにちのいわふじかがみやまゴニチのいはふぢ【加賀見山再岩藤】

  1. 歌舞伎。時代物。七幕。河竹黙阿彌作。通称「骨(こつ)寄せの岩藤」。万延元年(一八六〇江戸市村座初演。「加賀見山旧錦絵」の後日譚で、岩藤の亡霊が二代目尾上になったお初に、草履打ちの仕返しをする件と、「加賀見山廓写本」の鳥井又助の件とを中心に脚色した作。

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改訂新版 世界大百科事典 「加賀見山再岩藤」の意味・わかりやすい解説

加賀見山再岩藤 (かがみやまごにちのいわふじ)

歌舞伎狂言。時代物。7幕。河竹黙阿弥作。別名題《梅柳桜幸染(うめやなぎさくらのかがぞめ)》。通称《骨寄せの岩藤(こつよせのいわふじ)》。1860年(万延1)3月江戸市村座初演。岩藤の亡霊・鳥井又助を4世市川小団次,多賀の大領を河原崎権十郎(後の9世市川団十郎),望月弾正を3世関三十郎,お柳の方・2代目尾上を岩井粂三郎(後の8世半四郎)など。題材は加賀騒動で《加賀見山旧錦絵(こきようのにしきえ)》の後日譚。《桜花大江戸入船(やよいのはなおえどのいりふね)》(5世鶴屋南北作,1837年3月),《加賀見山廓写本(かがみやまさとのききがき)》(奈河亀輔作,1780)等を改訂脚色したもの。多賀の大領の側室となったお柳の方は情夫望月弾正を兄と称し,二人してお家横領を企てた。その手始めに弾正は,邪魔になる花房求女を退け,さらにその家来鳥井又助をそそのかし,善玉ぶってお柳の方の暗殺を命じる。又助はお柳の方を討ったと信じていたが,のち弾正の悪計に乗せられ正室梅の方を殺害したことを知り,申しわけなさに切腹して果てる。お初に殺された悪局岩藤は亡霊となって,今は2代目尾上となっているお初の前にあらわれ草履打の仕返しをし,また奥御殿で花園姫に仇をなすが,観世音威徳で退散する。やがて弾正の悪事はあらわれ,切腹する。作の中心は〈汐入堤多賀家馬捨場の場〉の骨寄せで,尾上が岩藤の供養にくると,そこに散乱している岩藤の骨が集まって骸骨になり尾上を悩ませる趣向は怪奇味が漂い,歌舞伎独特の仕掛の妙を発揮する。また一転して〈花の山の場〉になり,桜花爛漫たる春の野に日傘をさした岩藤が宙乗りで蝶を追いながら浮遊する演出は俗に〈ふわふわ〉といい,美しい。この岩藤の怪談は3世尾上菊五郎がはじめ南北の作によって演じて以来,尾上家の家の芸となり,5世尾上菊五郎も1873年4月《梅柳桜幸染》として上演,その演出が今日まで伝わっている。5世菊五郎は生来のこり性から,婦人の骸骨を医者から借用して桐・麻・白絹の模型を作り,朝夕眺めて演出の工夫をこらしたという。のち6世尾上梅幸の当り芸となり,6世尾上菊五郎,また17世中村勘三郎へと継承されている。さらに,3世市川猿之助は,岩藤・又助ほか7役を早替りでつとめ,宙乗りを大仕掛にした新演出で人気を呼び,以後この種のケレンを他の演目にも応用している。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「加賀見山再岩藤」の解説

加賀見山再岩藤
かがみやま ごにちのいわふじ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
河竹新七(2代)
初演
万延1.3(江戸・市村座)

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世界大百科事典(旧版)内の加賀見山再岩藤の言及

【加賀騒動】より

…こういう劇は奥づとめの女中の宿下りに見るのにふさわしいので毎年3月に上演されたが,悪役の局岩藤,中老尾上とその召使のお初,この3人の女が大役で,岩藤とお初の試合,岩藤が尾上を草履で打ち,尾上無念の自殺,お初が奥庭で岩藤に復讐する4場面が原則になっている台本である。この岩藤が幽霊になる後日譚には,加賀騒動の藩主暗殺も入っており,河竹黙阿弥の《加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)》がそれである。【戸板 康二】。…

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