財形制度(読み)ざいけいせいど

改訂新版 世界大百科事典 「財形制度」の意味・わかりやすい解説

財形制度 (ざいけいせいど)

勤労者財産形成制度の通称。第2次大戦後のヨーロッパ諸国に生まれた制度で,EC加盟国はそれぞれの財形制度をもっている。とくに西ドイツは,社会保障を充実する一方,勤務者の財産形成と経営参加などの社会的政策を推進し,1952年3月公布の〈住宅建設割増金法〉,59年5月公布の〈貯蓄割増金法〉から始まって,61年7月公布の〈第1次財産形成促進法〉,65年7月公布の〈第2次法〉,70年6月公布の〈第3次法〉に至った。西ドイツの勤労者財産形成政策の制度体系は,つぎのとおりである。(1)貯蓄割増金法 金融資産所有の奨励法(主として減税,一部補助金による財形),(2)持家づくりの奨励法 (a)住宅建設割増金法,(b)住宅建設貯蓄等の税制上の優遇措置,(c)住宅建設促進のための免税措置,(3)株式保有の奨励 (a)従業員株式の奨励(持株制),(b)国民株式の発行(連邦はその所有する企業を国民株式という形で私有化し,その株式を低所得者層に有利な条件で販売),(4)勤労者に貯蓄余力を賦与する施策(勤労者財産形成促進法)。財形促進法は3次にわたって改正され,〈第2次法〉までが主として税金免除という奨励策であったが,〈第3次法〉では,財形給付金に対する政府の〈付加金〉を支給する制度となった。すなわち,給付金の限度を従来の312ドイツ・マルクから2倍の624ドイツ・マルクに引き上げ,それに対して30%の付加金を支給する。

 西ドイツの財形制度を手本として,日本は1971年6月〈勤労者財産形成促進法〉を公布し,72年1月から実施した。本法は,勤労者がみずからの努力によって資産を保有することを国が援助し,事業主の協力と相まって,勤労者の財産形成を促進することが,勤労者の生活の安定を図り,ひいては国民経済の健全な発展に寄与するものであるとの基本的考え方に立って,制定されたものである。戦後の労働立法は数多くあるが,このように労働の場を離れた,労働者の生活面の充実を図ることによって,勤労者の福祉の向上を期そうという立法は,日本にはまったく先例のないものである。財形制度は改正をへてしだいに充実し,現在つぎの三つの柱からできている。すなわち,(1)勤労者がその賃金の一部をもって行う長期の貯蓄を援助促進する〈財形貯蓄制度(第1財形)〉,(2)通常の賃金とは別に,事業主が勤労者の貯蓄資産の形成のために金銭を拠出することを援助促進するための〈財形給付金制度(第2財形)〉および〈財形基金制度〉,(3)金融機関等に累積する財形貯蓄を原資として,勤労者の持家の取得,改良,または進学のために要する費用を融資する〈財形融資制度〉である。(1)〈財形貯蓄制度〉とは,3年以上の期間にわたって,毎月とかボーナス期ごとといったように定期に給料から天引きして行う貯蓄制度で,これは,いわゆるマル優とは別枠で,500万円までの元本から生ずる利子等について税金がかからないという優遇措置がとられている。こうした財形貯蓄を行う勤労者に対して,事業主が毎年一定の金銭を拠出し,7年間運用した後にその元利合計が給付金として勤労者に支払われるものが(2)〈財形給付金制度〉と〈財形基金制度〉である。そして,財形貯蓄取扱機関に集まった資金を原資として勤労者の持家取得のために融資を行うのが(3)〈財形持家融資制度〉(略して財形融資というが,これについては〈住宅金融〉の項参照)であり,また勤労者本人またはその親族の進学に必要な資金を融資するのが〈財形進学融資制度〉である。さらに高齢化社会を迎え,財形制度を勤労者の老後保障に役立てることが,今後の課題である。
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百科事典マイペディア 「財形制度」の意味・わかりやすい解説

財形制度【ざいけいせいど】

勤労者財産形成制度の略称。勤労者の貯蓄や持家取得の促進のため,勤労者財産形成促進法(1971年)により創設。現在,次の3つの柱からなる。(1)勤労者がその賃金の一部をもって行う長期の貯蓄を援助促進する財形貯蓄制度(第1財形)。(2)通常の賃金とは別に,事業主が勤労者の貯蓄資産の形成のために金銭を拠出することを援助促進するための財形給付金制度(第2財形),および財形基金制度。(3)財形貯蓄を原資として勤労者の持家取得・増改築のために融資を行う財形持家融資制度(住宅金融公庫または事業主を通じて雇用促進事業団から融資される),と財形進学融資を柱とする財形融資制度(第3財形)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「財形制度」の意味・わかりやすい解説

財形制度
ざいけいせいど

勤労者財産形成促進制度

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「財形制度」の意味・わかりやすい解説

財形制度
ざいけいせいど

勤労者財産形成促進制度」のページをご覧ください。

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