普茶料理(読み)フチャリョウリ

デジタル大辞泉 「普茶料理」の意味・読み・例文・類語

ふちゃ‐りょうり〔‐レウリ〕【普茶料理】

中国から伝わった禅寺精進料理野菜類を主材料に用い、油を多く使うのが特徴黄檗おうばく万福寺に伝えられたので黄檗料理ともいう。ふさりょうり。

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精選版 日本国語大辞典 「普茶料理」の意味・読み・例文・類語

ふちゃ‐りょうり‥レウリ【普茶料理】

  1. 〘 名詞 〙 黄檗(おうばく)宗の寺で調えられる中国風の精進料理。一脚四人詰とし、とうふごま油を多く使い野菜を調理する。黄檗料理。ふさりょうり。ふさ。ふちゃ。〔普茶料理抄(1772)〕

ふさ‐りょうり‥レウリ【普茶料理】

  1. 〘 名詞 〙ふちゃりょうり(普茶料理)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「普茶料理」の意味・わかりやすい解説

普茶料理
ふちゃりょうり

中国から伝えられた禅寺の精進料理。黄檗(おうばく)料理ともいう。江戸時代初期に、中国明(みん)末の高僧隠元(いんげん)が渡来、朝廷、幕府の帰依(きえ)を受けて、京都宇治に黄檗山万福寺(まんぷくじ)(黄檗宗大本山)を創建した。隠元とともに多くの僧や文化人が渡来し、禅の高揚ばかりでなく、中国文化の移入にも大きな影響を及ぼし、その文化は黄檗文化とよばれる。黄檗山をはじめ長崎の寺などの関係寺院で、中国の禅寺と同じ精進料理がつくられ、珍しい中国式の精進料理として知られるようになり、江戸の料亭で供されたり、書物に紹介されたりしている。黄檗関係の手で受け継がれ、現在に至っている。

 長年の間に多く日本化されているが、4人1卓で食する形式や、油を多用することなどの伝統、また献立を菜単(さいたん)とよぶのをはじめ、料理名も当時のまま受け継がれている。内容は一定しないが、季節の野菜や乾物を材料としてつくられ、中国の精進料理の伝統もあって擬似料理(野菜を材料にして、動物性の食物に似せてつくる)もみられる。笋羹(しゅんかん)(野菜などの煮物の盛合せ)、油(ゆじ)(薄味付けてんぷら)、雲片(うんぺん)(野菜などの葛(くず)かけ煮)、麻腐(まふ)(ごま豆腐)を中心に、汁、みそ煮、和(あ)え物、漬物、飯(茶飯など)、果物が出される。料理は4人分が1皿に盛られて出されるので、各自が取り皿に取り分けて食べる。普茶とは、茶を点じて普(あまね)く大衆供することで、普茶料理の名もこれから出た。黄檗料理の名はあまり用いられない。

[森本信光]

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改訂新版 世界大百科事典 「普茶料理」の意味・わかりやすい解説

普茶料理 (ふちゃりょうり)

江戸時代から行われた中国風の精進料理。1654年に来日した隠元禅師を祖とする黄檗(おうばく)宗の寺院から広まったので黄檗料理ともいう。普茶とは茶をたてて一山の大衆に供する茶礼をいい,それに随伴するふるまいだったのでこの名がある。黄檗宗は最も新しく渡来した宗派であり,それだけに普茶料理は中国の習慣,風儀をよく伝えていたが,それが鎖国下の江戸時代の人々の中国趣味に投じて普及した。料理は動物性の材料をいっさい使わぬものであったが,油を多用する濃厚な味つけが新奇な味覚として歓迎された。そして,それ以上に〈巻煎(ケンチエン)〉〈八宝菜(パポウツアイ)〉などと片言の中国語で料理を呼び,榻(とう)に腰掛け,卓(しよく)の上の大皿から料理をめいめい皿に取り分けて会食することが,彼らのハイカラ趣味を満足させたようである。現在では京都宇治の万福寺その他の黄檗宗寺院のほか,料理店の中にも普茶料理を称する店がある。一般的な菜単(さいたん)(献立)は,澄汁(すめ)(ランの花などを浮かべたすまし汁),麻腐(まふ)(ゴマ豆腐),雲片(うんぺん)(野菜いためのあん掛け),冷杯(ロンペイ)(あえ物,浸し物の類),笋羮(しゆんかん)(野菜,乾物などの炊合せ),油𩝐(ゆじ)(野菜などのてんぷら),素汁(そじゆう)(みそ汁),醃菜(イエンツアイ)(香の物),飯子(ハンツー)(飯)といったものである。
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百科事典マイペディア 「普茶料理」の意味・わかりやすい解説

普茶料理【ふちゃりょうり】

寺卓袱(しっぽく)とも。卓袱料理の精進(しょうじん)の場合をいう。黄檗(おうばく)宗では茶を一般にふるまうことを普茶といったところからこの名がある。もとは江戸中期に黄檗僧により中国から伝えられた精進料理で,長崎の崇福寺や宇治の黄檗山万福寺などで発達した。長方形の食卓に(4人が基準),一つに盛った器からとりまわす形式で,油【じ】(ゆじ)(野菜などのてんぷら),雲片(うんぺん)(使い残りの野菜の皮や根をいためてあん掛けにしたもの),笋羹(しゅんかん)(野菜や乾物の炊合せ),麻腐(まふ)(ゴマ豆腐)など料理法も中国風のものが多い。
→関連項目精進料理中国料理

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「普茶料理」の意味・わかりやすい解説

普茶料理
ふちゃりょうり

江戸時代初期,京都の宇治に黄檗山萬福寺を創建した明の僧,隠元隆琦が伝えた中国式の精進料理。黄檗料理ともいう。普茶は,あまねく大衆に茶を供すの意で,寺院行事について一山の者が茶を飲みながら協議する茶礼後の会食で出される食事ということから,普茶料理の名が起こった。長方形の卓を 4人で囲み,各自取り分けて食べる形式で,卓袱料理と共通する点が多い。献立は二汁六菜を中心とし,油(ゆじ。野菜のてんぷら),雲片(五色の雲に見立てた野菜の葛寄せ),澄子(寿免とも書く。すめ。澄まし汁),醃菜(えんさい。香の物),笋羹(しゅんかん。美しく調理した品の盛り合わせ),麻腐(ごま豆腐),浸菜(浸し物,和え物),素汁(具をたくさん入れた濃い味噌汁)などからなる。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「普茶料理」の解説

ふちゃりょうり【普茶料理】

黄檗(おうばく)宗に伝わる中国風の精進料理。ごま油などの油類やくず粉を多用する。4人で1つの卓を囲み、料理は人数分盛られたものを取り分けて食べ、身分の上下の隔てなく楽しむ料理とされた。こんにちでは1人用に弁当形式のものなどもあるが、原則は数人が一緒に盛られた料理を取り分ける。黄檗宗大本山の萬福寺(まんぷくじ)では、笋羹(しゅんかん)(野菜や乾物の炊き合わせ)、蔴腐(まふ)(ごま豆腐)、油〓(“食へん”で下部が2本の横画となっているものに「茲」)(ゆじ)(野菜などの味つきの天ぷら)などを供する。また、こんにちではこれを供する和食店もある。◇1654(承応3)年に明から渡来し黄檗宗を開いた隠元(いんげん)がもたらしたものとされる。「普茶」は「普(あまね)く茶を喫する」という意で、法会のあとなどに寺が一般大衆に茶をふるまった行事をいい、普茶料理は、このあとに食べたもの。「黄檗料理」ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の普茶料理の言及

【卓袱】より

…江戸時代に将来された中国料理は,民間在俗の料理と,黄檗(おうばく)僧などによって伝来された僧院料理の2系統があり,前者は卓袱料理といい,後者は普茶料理と呼ばれた。卓袱は〈しっぽこ〉〈すっぽこ〉などとも呼ばれ,〈卓子〉〈食卓〉の字もあてられ,八僊卓(ぱすえんちよ)と称されることもあった。…

【チャンチン】より

…種子は長翼をもち,翼を含め長さ約1.5cm。若葉は香りがあり,中国では広く食用に供されるし,黄檗(おうばく)山万福寺の普茶料理に用いられるので有名である。木材は心材が赤褐色~褐色の環孔材で,気乾比重約0.53。…

※「普茶料理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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