近世初期風俗画の一主題。日本の港に来航したポルトガル船と乗組員たちの荷揚げ、提督(カピタン)の上陸場面を主要モチーフとして、珍奇な文物、舶載(はくさい)動物、出迎えの宣教師、修道士たちなどを描写し、金雲を配した装飾性の高い屏風で、南蛮人渡来図(なんばんじんとらいず)とも呼ばれる。左隻(させき)に入港、右隻に乗組員の行列という構成を定型とするが、左隻に空想的な異国風景を配する図柄もある。
制作は16世紀末から17世紀後期頃までと推定され、作者としては狩野内膳(かのうないぜん)(1570―1616)をはじめ狩野光信(みつのぶ)(1561/1565―1608)、狩野山楽(さんらく)など桃山期の一級の狩野派の絵師が想定されるほか、長谷川派、雲谷(うんこく)派などによっても描かれている。キリスト教の禁教後、鎖国体制確立後の制作では、南蛮風俗の写実味が薄れ、交易図の特徴が強調されている。
[岡 泰正]
『岡本良知・高見沢忠雄著『南蛮屏風』全2巻(1970・鹿島研究所出版会)』▽『坂本満・井出洋一郎他著『日本屏風絵集成15 南蛮風俗』(1979・講談社)』▽『坂本満編『南蛮屏風』(『日本の美術135』1975・至文堂)』▽『坂本満他編・著『南蛮屏風集成』(2008・中央公論美術社)』
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16世紀後半~17世紀初期に来航した南蛮人の風俗を描いた屏風絵。現在六十数点の遺品が知られる。図様構成は,左隻に南蛮船の入港と荷揚げ・交易の風景,右隻に教会堂に向かうカピタンの一行と出迎えの宣教師を描く作例が多い。このほか上記の情景を右隻にひとまとめにし,左隻に異国における南蛮人の生活や南蛮船の出帆風景などを描くものもある。南蛮屏風の成立に関して,従来は画家が長崎で南蛮船の入港を実見して描いたと解説されてきたが,近年,室町時代の唐船・唐人行列図からの影響が指摘されている。狩野内膳をはじめ桃山時代の狩野派の画家も多く手がけている。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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