印可(読み)インカ

デジタル大辞泉 「印可」の意味・読み・例文・類語

いん‐か【印可】

[名](スル)
密教禅宗で、師僧弟子に法を授けて、悟りを得たことを証明認可すること。
武道芸道などで、極意を得た者に与える許し。免許

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精選版 日本国語大辞典 「印可」の意味・読み・例文・類語

いん‐か【印可】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「印」は印信(しるし・証印)、「可」は許可の意 )
  2. ( ━する ) 仏語。師僧が、弟子の修行者が悟りを得たことを証明認可すること。
    1. [初出の実例]「仏にあらずよりは、たれかこれを最尊なりとし、無上なりと印可することあらん」(出典:正法眼蔵(1231‐53)嗣書)
    2. 「大梅常和尚は〈略〉山居の風味を詠じて、已熟の印可(インカ)を得給へり」(出典太平記(14C後)一二)
    3. [その他の文献]〔維摩経‐上〕
  3. 武道、芸道などにおいて、門弟がその奥義を身に付けたことを師匠が証明すること。また、その証明書、免許状
    1. [初出の実例]「名をゆるされ、道をへて、既に師家(しけ)いんかを得てこそ、我も又しけとはなるべけれ」(出典:五音曲条々(1429‐41頃))
    2. 「ヲヲけふより土佐の光澄と名付べしと、ゐんかの筆をあたふれば」(出典:浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)上)
    3. [その他の文献]〔梁簡文帝答湘東王書〕
  4. いんか(允可)
    1. [初出の実例]「殿御は其方(そち)が好き次第、と父上の印可(ヰンカ)を取った」(出典:浄瑠璃加賀国篠原合戦(1728)一)
  5. 関流の数学において、数学伝授上定めた階級の最高級。

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改訂新版 世界大百科事典 「印可」の意味・わかりやすい解説

印可 (いんか)
yìn kě

仏教で師が弟子の悟りを認め証明する言葉,もしくはその物証。日本の芸能では,免許証や許状を出す意となる。《維摩経》弟子品に,維摩舎利弗(しやりほつ)の座禅叱り,正しい座禅の心得を説いて,このようにすれば仏は印可される,といっているのが根拠であり,中国の禅宗では,そうした印可の印として,衣鉢や禅板,机案,払子(ほつす)などを与えることとなり,さらにその事由を記す印可状や,師の肖像(頂相(ちんそう))に賛をつけて与える風習が生まれて,日本に多くの遺品を伝える。《日葡辞書》にも,インカヲダス,トルなどの例がある。
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普及版 字通 「印可」の読み・字形・画数・意味

【印可】いんか

ゆるし。承認。免許。宋・劉昌詩〔浦筆記の叙〕(おも)ふに獨學寡、安(いづく)んぞ敢て以て是と爲さん。將(まさ)に印可を先覺の士に求めんとす。儻(ある)いは改めて(こ)れを正せ。是れ予(われ)の願ひなり。

字通「印」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「印可」の意味・わかりやすい解説

印可
いんか

印定認可(いんじょうにんか)、印信許可(いんじんきょか)のこと。すなわち師が弟子の悟境(ごきょう)を認めてこれを証明すること。おもに禅宗や密教で用いられる用語。禅宗では、師家(しけ)が学人の悟境を点検し、円熟したと認めた場合、学人に師家の資格を有することを認承する証明書を与える。印可証明ともいう。密教では秘法を伝授終了した際、その証明書となる印信を与えることをいう。転じて、芸道などで奥義(おうぎ)を窮めたことを認め、師匠が弟子の熟達したことを証明すること、またその証明書の意に用いられる。

[石川力山]

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世界大百科事典(旧版)内の印可の言及

【頂相】より

…禅宗では〈法〉は師から弟子へ受けつがれるものであり,したがって師の像容を写した頂相はもっとも尊重され,生けるがごとく敬慕される。画像の場合,通常,師が伝法の印可(悟道の熟達を証明したもの)として図上に著賛し,その法嗣に付与したものである。一般には曲彔(きよくろく)(法会に用いる椅子)上に趺坐(ふざ)し,右手に竹篦(しつぺい),払子(ほつす),警策(けいさく)をもつ全身像が基本であるが,画像では半身像,経行(きんひん)像(経を唱えながら歩行する姿),夢中像,円相像,再来説に基づくものなど,像主の境涯や説話をとり入れた像容をもつ頂相もある。…

※「印可」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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