精選版 日本国語大辞典 「去嫌」の意味・読み・例文・類語
さり‐きらい‥きらひ【去嫌】
- 〘 名詞 〙
- ① 変化を尊び反復停滞を嫌う連歌、和漢連句、俳諧などで、一巻の中に同字、同事などが近接して多用されることのないように定められた禁制の総称。江戸時代にはいっての称と考えられ、室町時代は「嫌物(きらいもの)」という。連歌では、連歌形式の中に、打ち越し(二句)を嫌うべき物、三句を隔つべき物、五句を隔つべき物、七句を隔つべき物などに項目別に列挙されているのがその主なもので、それぞれ、二句去り・三句去り・五句去り・七句去り、または、二句嫌う・三句嫌う・五句嫌う・七句嫌う、などともいう。他に、連歌懐紙の同じ面を嫌うべき物・同じ折を嫌うべき物などもある。和漢連句や俳諧では、連歌の五句去りを三句去りに、三句去りを二句去りにするなど、ややゆるめて準用した。去り。
- [初出の実例]「かたへの小姓すすみていはく、それはげにもながら、さりきらひの事にあらねば、あまりにおほぞうにや候べき」(出典:俳諧・御傘(1651)序)
- ② 好き嫌い。えり好み。
- [初出の実例]「人も多ければ、道具なんどにさりきらひの仕置しても、いかがと思ふが」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品一五)
- ③ ( ①から転じて ) してはならないこと。反則。
- [初出の実例]「只今の相撲、立ち合に忌有足取りにさり嫌(キラ)ひ有り」(出典:浄瑠璃・関取二代勝負附(1768))
- ④ 能楽で、祝儀や門出などの席上の謡で、忌み嫌うべきものとする文句。婚礼の席での「のく」「さる」「かえる」、船出の時の「しずむ」「あらし」などの類。
去嫌の語誌
「去る」と「嫌う」とは連歌一巻が平板に流れることを避けるという精神において同一であるが、句数の隔たりを主とした場合「去る」(何句去り)と表現し、ある語の出現を禁ずることを主とした場合「嫌う」と表現していると考えられ、同一内容について両様の表現がみられることがある。連歌において重要な概念であり、頻繁に使用されるところから、②③の転義を生じたと考えられる。