六訂版 家庭医学大全科 「口唇裂、口蓋裂」の解説
口唇裂、口蓋裂
こうしんれつ、こうがいれつ
Cleft lip, Cleft palate
(子どもの病気)
どんな病気か
およそ胎生の9週ころに左右の口蓋突起が伸びてきて、
どんな人でもすべて胎児の時は口唇裂、口蓋裂の状態ですし、どんな人の子どもも口唇裂、口蓋裂になる可能性があります。
原因は何か
詳しい原因はまだわかっていません。種々の環境要因(妊娠中のアルコール、たばこ、ダイオキシンなど)が関与していると考えられています。何かひとつの原因によって病気になるというよりも、環境因子、遺伝因子など種々の因子が組み合わされてある一定の値(しきい値)を超えた場合に病気になるという「多因子しきい説」が最も有力です。しかし、他の奇形を伴うもののなかには遺伝的な原因がはっきりしているものもあります。
症状の現れ方
普通は産まれてすぐに気づかれます。だいたい500~700の出産例に1人くらいの頻度で現れます。口蓋裂を有する場合、
検査と診断
特別な検査はありません。視診もしくは触診でほぼ診断がつきます。口唇裂、口唇口蓋裂の約30%が何らかの別の奇形を伴う症候群であるため、合併奇形の検索を行う必要があります。
また最近の超音波検査機器の進歩により、出生前に口唇裂・口蓋裂が見つかることがあります。しかしその告知に関しては、十分な配慮が必要と思われます。
治療の方法
口唇裂・口蓋裂の治療は外科的手術だけでなく、産科、小児科、口腔外科、形成外科、矯正歯科、耳鼻科、言語聴覚科などの専門家のチームにより長期にわたって治療が行われます。したがって、チーム医療のできる体制が整っている病院での治療がよいと思われます。2008年12月に日本口蓋裂学会より、口唇裂・口蓋裂の治療プラン全国111診療チームにおける現況が発表されています。すべての施設で同じ時期に、同じ方法で治療が行われているわけではありません。その治療チームの規模や考え方により、治療方法や時期などに違いがあるようです。一般的な治療方法を示します。
まず、口唇裂・口蓋裂をもつ多くの赤ちゃんは乳を吸う力が弱く、哺乳が困難な場合があるので、口唇裂・口蓋裂用の乳首が使われます。哺乳を補助するためや、あごを矯正するためにホッツ床と呼ばれるマウスピースのようなものを作成し、口蓋裂に装着することもあります。
生後3カ月くらいで口唇裂の手術を行います。次に1歳から1歳6カ月で口蓋裂の手術が行われます。口蓋の裂けている部分をふさぐだけでなく、正しい発音を身につけられるようにする、食べ物を上手に飲み込めるようにするなどの目的があります。
4~5歳頃から
さまざまな要因により初回手術だけでは、口唇、鼻、鼻の
病気に気づいたらどうする
産科医もしくは小児科医から、形成外科や口腔外科を中心とした集学的な治療ができる施設を紹介してもらいます。
長崎 啓祐
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報