口舌(読み)コウゼツ

デジタル大辞泉 「口舌」の意味・読み・例文・類語

こう‐ぜつ【口舌】

口と舌。
口先だけの言葉物言い。くぜつ。
人生目的は―ではない実行にある」〈漱石吾輩は猫である
[類語]口先舌先弁舌舌先三寸話半分

く‐ぜち【口舌/口説】

くぜつ(口舌)1」に同じ。
くぜつ(口舌)2」に同じ。
三人みたりばかり、病事、―」〈かげろふ・下〉

く‐ぜつ【口舌/口説】

言葉。弁舌。また、口先だけのもの言い。おしゃべり。多弁。「恋の―」「―の徒」
言い争い。文句。特に江戸時代、男女間の痴話げんか。
「かやうの―の絶えぬは、これゆゑにこそ」〈著聞集一六

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精選版 日本国語大辞典 「口舌」の意味・読み・例文・類語

こう‐ぜつ【口舌】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 口と舌。〔日葡辞書(1603‐04)〕〔易経‐説卦
  3. もの言い。ことば。弁舌。また、口先だけのもの言い。くぜつ。くぜち。
    1. [初出の実例]「凡棄妻。須七出之状。〈略〉四 口舌〈謂。多言也。婦有長舌。維厲之階。是也〉」(出典:令義解(718)戸)
    2. 「今月七日卯時、鎮守御供釜鳴、吉凶 占之、火事、年内自二月至十月慎之〈略〉又云、有口舌事、兼被致祈請、自旡其咎乎」(出典:東寺百合文書‐を・正長二年(1429)正月鎮守八幡宮釜鳴動占文案)
    3. 「人生の目的は口舌ではない実行にある」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉四)
    4. [その他の文献]〔史記‐蘇秦伝〕

口舌の補助注記

は、挙例「東寺百合文書」のように公私の場における占い(占文)の卦(け)の用語ともなっており、怪異吉凶を占うと、疾病・闘諍・失火・盗賊・口舌・訴訟、その他の災厄の卦が出ることがあり、そのひとつにあげられている。


く‐ぜち【口舌・口説】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「く」は「口」の、「ぜち」は「舌」の呉音 )
  2. ことば。また、口先だけのもの言い。多弁。弁舌。くぜつ。こうぜつ。
  3. 言い争い。いさかい。口論苦情。くぜつ。
    1. [初出の実例]「ここかしこより、その人のもとへいなむずなりとて、くせちいできにけり」(出典:伊勢物語(10C前)九六)
  4. くぜつ(口舌)
    1. [初出の実例]「くせちをいひて送る一筆 妻にただいとまをやるも世のならひ」(出典:俳諧・犬子集(1633)一一)

くぜり【口舌】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「くぜる(口舌)」の連用形名詞化 )
  2. 小鳥のさえずり。
    1. [初出の実例]「籬辺をくくり回はる燕雀のくぜりだ」(出典:大淵代抄(1630頃)八)
  3. 続けざまにうるさくしゃべること。ぺちゃくちゃと物を言うこと。
    1. [初出の実例]「馬士雲助船頭のくぜりも、緩急遅速の律にたがはぬと申すは」(出典:寄合ばなし(1874)〈榊原伊祐〉初)

く‐ぜ【口舌】

  1. 〘 名詞 〙 「くぜつ(口舌)」の略。
    1. [初出の実例]「ちはやふる・くぜやりんきできゃくのぼす」(出典:雑俳・大福寿覚帳(1711‐16頃))

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普及版 字通 「口舌」の読み・字形・画数・意味

【口舌】こうぜつ

口先。弁舌。〔史記、劉敬伝〕上(しやう)怒り、劉を罵(ののし)りて曰く、齊(斉の男)、口舌を以て官を得、今廼(すなは)ち言して、吾が軍を沮(はば)むと。を廣武に械す。く。に至り、匈奴、果して奇兵を出して、高を白登に圍む。

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