古気候指示物(読み)こきこうしじぶつ(その他表記)indicators of paleoclimate

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「古気候指示物」の意味・わかりやすい解説

古気候指示物
こきこうしじぶつ
indicators of paleoclimate

地層化石に残されている過去の地球上の気候の証拠。古気候の指示物には,大別して,(1) 植物の証拠,(2) 堆積物の証拠,(3) 海生生物の証拠がある。(1)の例として,ヤシ類やソテツ類が今日ほとんど熱帯亜熱帯にかぎられており,過去においても同様な特定の気候下に出現し,長い地質時代を生き延びたことから,有効な「古温度計」といえる。一般に,葉縁鋸歯状や浅裂型のものは寒冷気候に,平滑型のものは熱帯に見られる。寒冷だと放射状脈を示し,一方,多くの熱帯種は葉の先端に滴下点と称する伸長した裂片をもつ。(2)の例としては,たとえば氷河のえぐった溝や擦痕,氷河堆積物の存在から寒冷気候を推定できる。ラテライトという土壌は湿潤な熱帯気候下で形成され,カリーチと称する結核状ないし層状の炭酸カルシウム堆積物は,温暖で準乾燥気候下の蒸発作用でできる。大規模な斜交層理砂丘を示唆し,その方位卓越風の方向を示す場合もある。岩塩硬石膏石膏などの蒸発岩は暖かい乾燥気候でできやすい。石灰岩ドロマイトはほとんどが熱帯下で集積する。(3)の例として著名なのは造礁性サンゴで,これは共生藻類を宿し,赤道から緯度で約 30°以内水温 18℃以下の浅い海域に形成される。浮遊性有孔虫の殻の巻き方向の変化も,温度効果の一つに数えられている。また,石灰質の殻をもつ海生動物の殻の中の酸素同位体 16Oと 18Oの比から古水温を算定する方法が知られる(→酸素同位体温度計)。(→古気候学

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