吉備楽(読み)キビガク

デジタル大辞泉 「吉備楽」の意味・読み・例文・類語

きび‐がく【吉備楽】

雅楽参考にして岡山県に起こった楽舞。明治5年(1872)岸本芳秀創始したもの。歌謡そうしょう篳篥ひちりき・笛などを加えて演奏する。黒住金光両教の式楽

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精選版 日本国語大辞典 「吉備楽」の意味・読み・例文・類語

きび‐がく【吉備楽】

  1. 〘 名詞 〙 岡山県に起こった楽舞。明治五年(一八七二)岡山池田藩の雅楽家岸本芳秀が雅楽に大和舞などを取り入れて創始。箏(そう)を主奏楽器とし、笙(しょう)、笛、篳篥(ひちりき)を用いる。黒住、金光両教の式楽にも採用

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉備楽」の意味・わかりやすい解説

吉備楽
きびがく

岡山藩の雅楽家岸本芳秀(よしひで)(1821―90)らが、1870年(明治3)奈良・春日(かすが)神社の倭舞(やまとまい)や東遊(あずまあそび)を参考にしてつくった雅楽風の音楽。その舞を吉備舞という。器楽曲は少なく、大部分歌曲で、箏(そう)が主奏楽器として扱われ、竜笛(りゅうてき)、篳篥(ひちりき)、笙(しょう)が助奏楽器である点が、雅楽とは違っている。もっとも簡略には、歌と箏1面の場合も多い。79年には芳秀の高弟小野元範のとき、黒住(くろずみ)教の祭典楽に採用された。また、88年には芳秀の息子芳武の高弟尾原音人(おとんど)が金光(こんこう)教祖の大祭に吉備楽を奉納し、数年後に金光教の祭典楽となった。

 吉備楽は祭典楽、余興楽(奉納楽)、家庭楽に分けられる。祭典楽は開扉(かいひ)、献饌(けんせん)、玉串奉奠(たまぐしほうてん)など祭式の行事にあわせる音楽。余興楽は祭典後に奉納する楽舞で、『桜井の里』(楠公(なんこう)父子の別れ)、『作楽詣(さくらもうで)』(児島高徳(たかのり)の故事)など、家庭音楽にはこの余興楽舞のほか『明石(あかし)の浦』『高砂(たかさご)』などがある。

吉川英史

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉備楽」の意味・わかりやすい解説

吉備楽
きびがく

日本音楽の一種。岡山地方を中心に行われている雅楽楽器を使用する新様式の歌曲および舞踊。岸本芳秀が倭舞 (やまとまい) や東遊 (あずまあそび) などを近代化して明治5 (1872) 年に新しく創始。黒住教,金光教などの教派神道の奉納楽,祭典楽としても用いられている。曲目は宗教的なものと,娯楽的なものとがあり,若干の器楽曲もあるが,歌曲は略式には箏のみを伴奏とするので,箏曲の一種と扱うこともできる。

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百科事典マイペディア 「吉備楽」の意味・わかりやすい解説

吉備楽【きびがく】

岡山地方におこった,雅楽楽器を用いる明治期成立の音楽。1872年ころ岡山藩の伶人(れいじん)岸本芳秀が雅楽をもとに創始。古歌など歌詞とする歌に箏(そう),さらに篳篥(ひちりき),笙(しょう)笛の伴奏がつく。時には打物,和琴が加えられることもある。これに伴う舞踊を吉備舞という。若干の器楽曲もあるが,歌曲本位である。現在は黒住教や金光教の祭式楽として用いられている。

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