名取(読み)ナトリ

デジタル大辞泉 「名取」の意味・読み・例文・類語

な‐とり【名取】

芸道で、一定技能を修得し、家元師匠から芸名を許されること。また、その人。「踊りの名取
評判の高いこと。名高いこと。また、その人。
「かの偏屈者の―の謹次氏」〈蘆花思出の記
東西南北遊所から、―の美人をうけ出して」〈黄・見徳一炊夢〉

なとり【名取】

宮城県中南部の市。中心増田はもと奥州街道宿場町植松には雷神山古墳がある。仙台市の南にあり、住宅地化が進む。人口7.3万(2010)。

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精選版 日本国語大辞典 「名取」の意味・読み・例文・類語

な‐とり【名取】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「などり」とも )
    1. その名が多くの人に知られること。評判が高いこと。有名であること。名高いこと。また、その人。なうて。名代(なだい)
      1. [初出の実例]「まかりくだって、上手の名どりをいたさうずると存」(出典:虎明本狂言・神鳴(室町末‐近世初))
    2. 音曲・舞踊などを習う人が、師匠・家元から、芸名を許されること。また、その人。
      1. [初出の実例]「何所の宅か知らねども、杵や何某(なにがし)が名取(ナトリ)の妙音、彼の古き唱哥、紅葉狩」(出典:人情本・春色辰巳園(1833‐35)四)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 宮城県中部の地名。中心地区の増田は江戸時代奥州街道の岩沼と中田の間の宿駅として栄えた。名取川河口の閖上(ゆりあげ)は古くからの漁港。南の岩沼市にまたがって仙台空港がある。昭和三三年(一九五八)市制。
    2. [ 二 ] 宮城県の中南部にあった郡。昭和三三年(一九五八)以降、名取・岩沼・仙台市に統合編入され、同六三年消滅。

なとり【名取】

  1. 姓氏の一つ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「名取」の意味・わかりやすい解説

名取(市)
なとり

宮城県中東部、仙台市の南に接する市。太平洋に臨む。1955年(昭和30)名取郡増田(ますだ)、閖上(ゆりあげ)の2町と下増田、館腰(たてこし)、高館(たかだて)、愛島(めでしま)の4村が合併して名取町となり、1958年市制施行。JR東北本線、国道4号が縦貫し、近くに東北自動車道と仙台南部道路を結んで仙台南インターチェンジがあるほか、仙台東部道路が通じ、仙台空港、名取の各インターチェンジがある。また、南の岩沼市にまたがり仙台空港がある。2007年(平成19)には、東北本線経由でJR仙台駅と仙台空港を直結する仙台空港アクセス鉄道が開通した。西部は高館丘陵、中東部は名取耕土ともよばれる肥沃(ひよく)な沖積平野で、地名はアイヌ語のヌタトリ(湿地の意)に由来するといわれる。西縁の高館丘陵と愛島丘陵に沿った山麓(さんろく)が早くから開け、笠島(かさしま)の道祖神社は古代から民間信仰を集め、奈良期のものとみられる笠島廃寺跡もある。平安末期には熊野三社が勧請(かんじょう)され、東(ひがし)街道に沿って古碑が並んでいる。その後、平野東部の開拓が進み、奥州街道も開かれ、仙台藩政時代には増田がその宿駅としてにぎわった。一方、名取川河口の閖上は名取川、貞山堀(ていざんぼり)水運の要地として、また漁業集落として栄えた。明治以降も産業構造に変化はなく、高柳を中心に野菜の温室栽培が行われ仙台市への供給地となっていたが、近年は仙台市のベッドタウン化が強まり、愛島西部工業団地が造成されるなど、工場の進出も増加している。また、県立がんセンター、県農業・園芸総合研究所が立地している。市域内は旧石器文化からの遺跡の宝庫であるが、とくに植松(うえまつ)の雷神山古墳(らいじんやまこふん)は長さ170メートル、東北最大の古墳で、飯野坂古墳群(いいのざかこふんぐん)とともに国の指定史跡となっている。国の重要文化財として、江戸時代の民家「旧中沢家住宅」と「洞口家住宅(ほらぐちけじゅうたく)」がある。面積98.18平方キロメートル、人口7万8718(2020)。

[境田清隆]

〔東日本大震災〕2011年(平成23)の東日本大震災では大津波(閖上地区では9メートルを超える)に襲われ、死者954人・行方不明38人、住家全壊2801棟・半壊1129棟を数えた(消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第159報)」平成31年3月8日)。津波によって流出・冠水した農地は1500ヘクタールを超え、閖上漁港の施設も甚大な損害を被り、仙台空港も閉鎖された(2011年4月13日再開)。2019年(令和1)7月時点で、引き続き被災市街地復興土地区画整理事業などに取り組んでいる。

[編集部 2019年10月18日]

『『名取市史』(1977・名取市)』



名取
なとり

花道・茶道・香道などの生活芸能や各種の邦楽・邦舞など、家元制度を成立させている伝統的な芸道の分野で、家元が、ある程度技芸を習得した弟子に対し、自分の流儀名の何字かを与えること。その場合、家元直属の幾人かの取立て弟子を介在させて大量の名取弟子をもつといった重層的構造をとることが多い。名取になることは、社会的に家元の一員であることを公示するわけであるが、身分の保証を得ると同時に、流儀の体制内における制約を受けることにもなる。名取は家元の分身として、弟子をとって教えることを許される。家元は、名を許すに際し、相当の金額を収受し、免状や名札を授与するのが普通である。

[服部幸雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「名取」の意味・わかりやすい解説

名取[市] (なとり)

宮城県中部,仙台市の南に接する市。1955年増田町,閖上(ゆりあげ)町と高館,愛島(めでしま),館腰,下増田の4村が合体して名取町となり,58年市制。人口7万3134(2010)。名取平野の中心に位置し,東は仙台湾に臨み,西は高館,愛島の丘陵地をなす。早くから開けた地で,東北地方最大の前方後円墳雷神山古墳(史),経ノ塚古墳など古墳が多い。熊野堂などに中世の石碑が多数存在する。増田は江戸時代には奥州街道の宿場町であり,周辺農村の商業の中心としてにぎわった。名取川河口の漁業集落閖上は江戸時代,仙台城下への海の門戸で,仙台藩の江戸廻米の積出港の一つであった。近年,新漁港が建設され,底引網漁業の基地となっている。東北本線が通じ,南隣の岩沼市にかけて仙台空港がある。近年は電気機器などの工場の進出がめざましく,また丘陵地の名取ニュータウンをはじめ宅地化が著しく進み,仙台への通勤者も多い。名取川の自然堤防は仙台市への野菜供給地で,高柳は花卉や野菜の温室栽培が盛んである。2011年3月の東日本大震災では,死者行方不明1027人,全壊家屋2740戸にのぼった。
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名取 (なとり)

芸道関係の家元からその技芸の上達を認められて,その家元を頂点とする一門を構成する門葉としての流儀固有の名を与えられること,また与えられた人のことをいう。茶道,華道その他の芸道関係でも家元にちなむ名を与え,免状,その名札などを授与するが,主として邦楽,邦舞の社会でこう呼ばれている。武道関係では技芸伝授はあっても命名はない。本来,名取になることは,教授営業権を得るということである。家元制度を発達せしめたのは,この名取制度の創案によるといわれている。
家元
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百科事典マイペディア 「名取」の意味・わかりやすい解説

名取[市]【なとり】

宮城県中部,仙台市の南に接する市。1958年市制。中心の増田は奥州街道の宿場町として発達。名取川河口の閖上(ゆりあげ)は漁港で,仙台城下への玄関口であった。名取川下流域は名取耕土と呼ばれる肥沃な平野で,酪農や果実・花卉(かき)栽培など近郊農業も盛ん。東北本線が通じ,南東部の岩沼市にかけて国際空港の仙台空港があり,仙台空港鉄道が名取駅から通じる。仙台市の衛星都市として,住宅地化,工業地化が進む。東日本大震災で,市内において被害が発生。98.17km2。7万3134人(2010)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「名取」の意味・わかりやすい解説

名取
なとり

長良型軽巡洋艦」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の名取の言及

【三崎[町]】より

…岬先端近くの串,正野(しようの)などでは海士の素もぐりによるテングサ,アワビ,サザエ採取が行われる。宇和海側の海食崖上にある名取は,伊達秀宗が宇和島藩主として入部の際,同行した仙台藩名取郷の者が入植して地名としたという。馬の飼育が盛んで,三崎馬,三崎牛の産地であった。…

※「名取」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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