営業税は,中世の営業免許に関する免許料に源を発し,ヨーロッパではすでにビザンティン帝国の時代に都市の商人に対する皇帝からの営業税の要求が見られる。また,中国の宋代の免行銭も知られる。近代ヨーロッパの営業税は,〈営業の自由〉とひきかえに大陸諸国を中心に確立した。まずフランスでは,フランス革命を通じて旧ギルド特権が廃止され,1791年の営業税法により,営業税(=営業免許税)の支払を前提にいっさいの〈営業の自由〉がみとめられた。一方,ドイツでも,17~18世紀に商工業の発達の早い西南ドイツの諸邦を中心に営業税論が台頭した。1808年に始まるシュタイン=ハルデンベルクの改革を通じて従来の同業組合に対する監督が廃止され,10年の勅令を通じフランスの免許税と同様に,営業鑑札を受け営業税を払うこととひきかえに〈営業の自由〉がみとめられた。20年の営業税法を通じ収益力があると思われる11種目の営業に課税する営業税が確立した。
日本の明治以降の営業税も,旧幕藩時代の小物成(こものなり),運上,冥加(みようが)などをひきつぎ,当初は営業免許料として課せられていた。廃藩置県後の府県税目に加えられ,たとえば生糸売買,売薬,酒類・しょうゆ醸造などの鑑札交付に見られるように,営業免許料は府県の営業の実情に応じて実に多種目に及んでいた。1878年の地方税規則制定によって,地租割,戸数割とともに営業税・雑種税が地方税(府県税)として課せられる統一的な制度が成立した。営業税は,当初会社税・卸売商税(一類),仲買商税(二類),小売商税・雑商税(三類)の3種類に分類され,類ごとの税率で課税された。当初課税制限率は最高のもので15円以内であった。一方,雑種税は上記営業税以外の各種の雑業に対してその種類に従いそれぞれ適宜の税額を定めて課せられた。船(漁船を含む),車(馬車,人力車,大八車を含む),諸興行,料理屋,質屋,湯屋,遊芸師匠・俳優,芸妓,水車など多業種に及びその課税対象および税額は府県の〈便宜取捨〉に任されたため地域間の課税の均衡を欠き細民重課となった。
日清戦争後の国家の財源対策の必要上から1896年3月営業税法が成立,主要な営業の営業税は府県から国税に移管され,地方付加税とともに97年から実施された。しかし,零細業者への府県営業税は存続された。国税営業税は,主要なる営業十数種についてその売上金額,建物賃貸価格,従業員数など外形標準に対して課税されたため悪税との評判が高く,日清戦争後,日露戦争後から1914年まで,22年ころとほぼ3回のピークをもつ小営業者の営業税反対運動が全国的に展開された。大正末期には地租とともに両税委譲運動として地方委譲が叫ばれた。営業税法はその後何回か改正され,26年営業収益税となり,課税標準を純益ないし所得標準に変えた。40年の改正で地方還付税(国税として徴収し府県に還付)となった。戦後47年道府県独立税となり,翌年事業税に名称を変えている。
執筆者:坂本 忠次
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廃藩置県後、旧藩時代の小物成(こものなり)・運上(うんじょう)・冥加金(みょうがきん)などを引き継いだ営業免許料が各府県で課されていたが、1878年(明治11)地方税規則の制定により、地租割・戸数割とともに営業税・雑種税を府県税とする統一的な制度が成立した。1896年、日清(にっしん)戦後経営の財源のため主要な営業の営業税を国税へ移管する営業税法が成立し、営業税は、主要な業種を対象とする国税営業税と零細業者への府県営業税とに分かれた。国税営業税は売上金額・建物賃貸価格・従業員数など外形標準で課税され、かつ比例税率であったため悪税の評判が高く、1897年、1914年(大正3)、1922年と3回のピークをもつ中小営業者の廃減税運動が全国的に展開された(営業税反対運動)。1922年臨時財政経済調査会の答申に地租とともに営業税を地方へ委譲する案が登場してから10年近く地租・営業税(1926年から営業収益税)の地方委譲が問題とされたが実現しなかった。1940年(昭和15)の改正で全額を道府県に還付する地方還付税となり、戦後1947年に道府県独立税となり、翌年事業税にかわった。
[大石嘉一郎]
『江口圭一著『都市小ブルジョア運動史の研究』(1976・未来社)』▽『吉岡健次著『日本地方財政史』(1981・東京大学出版会)』
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…法人の行う事業に対する事業税の標準税率は,電気供給業等の場合には収入金額の1.5%,その他の事業を行う法人のうち,通常の法人の場合には6%,9%,12%の3段階の累進税率であるが,特別法人(各種協同組合など)の場合には6%と8%の2段階の税率に軽減されている(地方税法72条ノ22)。事業税の沿革は1878年に道府県税として創設された営業税に始まり,その後いくたびかの変遷を経て現在に至ったものである。地方税【宇田川 璋仁】。…
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