嘲る(読み)アザケル

デジタル大辞泉 「嘲る」の意味・読み・例文・類語

あざけ・る【嘲る】

[動ラ五(四)]
ばかにして悪く言ったり笑ったりする。「人の失敗を―・る」
風月に心ひかれて声を上げて詩歌を吟じる。
「月に―・り、風にあざむくこと絶えず」〈後拾遺・序〉
[類語]見下す見くびる侮る見下げる卑しめる蔑む貶める嘗める辱める虚仮こけにする馬鹿にする泥を塗る愚弄翻弄嘲弄軽蔑軽侮自嘲侮蔑侮辱陵辱蔑視

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「嘲る」の意味・読み・例文・類語

あざけ・る【嘲】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
    1. あたりかまわず勝手な口をきく。また、大きな声を出す。ふざける。
      1. [初出の実例]「麗妓侍り繞て、笑ひ譃(アサケリ)、嬉び戯れ」(出典:大乗顕識経平安初期点(850頃)下)
      2. 「常に遊女・傀儡を集めて、歌ひ嘲けるを以て役(やく)とす」(出典:今昔物語集(1120頃か)一九)
    2. 声をあげて詩歌を口ずさむ。うそぶく。
      1. [初出の実例]「近くさぶらひ遠く聞く人、月にあざけり、風にあざける事たえず」(出典:後拾遺和歌集(1086)序)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ばかにして悪く言ったり笑ったりする。
    1. [初出の実例]「故、吾田鹿葦津姫、乃ち慍(いかり)て曰(い)はく『何為(なむす)れぞ妾(やつこ)を嘲(アサケル)』といふ」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
    2. 「法花経品を読む人を呰(アサケリ)て〈興福寺本訓釈 呰 阿佐毛リ〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)

嘲るの語誌

「あざ」は「あざわらふ」の「あざ」と同じ。「観智院本名義抄」の「嗤・・欺」には「あざける、あざむく」の二訓が含まれ、「色葉字類抄」では「嘲・・詐・欺」等が二訓に共通する。[ 一 ]挙例「後拾遺‐序」が八代集抄本では「風にあざむく」となっているのは、「あざける」と「あざむく」がほぼ同義に解されていたことを示すものであろう。中世以降、軍記物などでは明らかに混同されて用いられている。また、平安時代和文系の文章には用例が少なく、「おとしむ」などに対する訓読語系の語とする指摘もある。

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