デジタル大辞泉
「嚔」の意味・読み・例文・類語
くさめ【×嚔】
1 くしゃみ。《季 冬》「つづけさまに―して威儀くづれけり/虚子」
2 くしゃみが出たときのまじないの言葉。くしゃみをすると早死にするという俗信があって、「くさめくさめ」と繰り返し言うと防げるといわれた。
「道すがら、―、―と言ひもて行きければ」〈徒然・四七〉
くっさめ【×嚔】
《「くさめ」の促音添加》くしゃみ。
「頭まで濡らいた。ああ、―、―」〈虎明狂・皹〉
くしゃみ【×嚔】
《「くさめ」の音変化》鼻の粘膜が刺激されて起こる、反射的に激しく息を吐き出す生理現象。《季 冬》
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ひる【嚔】
〘他ハ上一〙 (
上代の上
二段活用の動詞「ふ(嚔)」の上一段化した語) (
多く、「鼻をひる」の形で用いて) くしゃみをする。はなひる。
※
万葉(8C後)一一・二六三七「
(うちすすり)鼻をそ嚔鶴
(ひつる)剣刀
(つるぎたち)身に副ふ妹し思ひけらしも」
[
語誌]体外へ出す意の「ひる(放)」と同語源。「ひる(放)」が四段活用化したのに対し、上一段活用のまま残ったもので、
中古には「はなひる」「はなふ」の例がある。→「
ひる(放)」の語誌
くさめ【嚔】
〘名〙
① くしゃみをしたときとなえるまじないの
ことば。くしゃみをすると早死にをするという俗信があり、そのとき「くさめ」ととなえれば防げるとされた。〔
名語記(1275)〕
② (①が転じて「鼻ひる(くしゃみする)」動作そのものをさすようになったものか) =
くしゃみ(嚔)《季・冬》
※
俳諧・鴉鷺俳諧(1646)「あやし
若衆のくさめするをと〈嶺利〉 だきあひてねたるやしりてそしるらん〈同〉」
ふ【嚔】
〘他ハ上二〙 (多く「鼻をふ」の形で用いて) くしゃみをする。→
ひる。
※万葉(8C後)一一・二六三七「うちすすり鼻をぞ嚔(ひ)つる剣刀身に添ふ妹し思ひけらしも」
[
補注]平安以降は上一段化して「ひる」となるが、上代では
連用形に「鼻火」(万葉‐二八〇八)の形があり、「火」が特殊
仮名づかいで「ひ」の乙類を表わす仮名であるところから、上二段活用であったと考えられる。
はな‐・ひる【嚔】
〘自ハ上一〙 (上代の上二段動詞「はなふ(嚔)」の上一段化したもの) くしゃみをする。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※
徒然草(1331頃)四七「やや、鼻ひたる時、かくまじなはねば死ぬるなりと申せば」
[語誌]上代には、くしゃみとか、眉がかゆくなることなどは、人に思われている時や人の来る
前兆と考えられていた。中古以後、くしゃみは不吉なものとされ、
呪文を唱えるとその
災いを免れると信じられた。
はな‐ふ・く【嚔】
〘自カ四〙 (「鼻吹く」の意) くしゃみをする。はなひる。はなふ。
※
琴歌譜(9C前)継根振「つぎねふ
山城川に
蜻蛉(あきつ) 波奈布久
(ハナフク) 嚔
(はな)ふとも」
はな‐ひ【嚔】
〘名〙 くしゃみ。くさめ。
※俳諧・けふの昔(1699)「蘭の香に噴
(ハナヒ)まつらん星の妻〈
其角〉」
くしゃみ【嚔】
〘名〙 (「くさめ」の変化した語) けいれんぎみに息を吸ったあと、反射的に口や鼻から激しく息をはきだす生理現象。主に鼻粘膜の刺激により三叉神経を介して起こる。鼻炎や鼻アレルギーなどの疾患では、連続的に多発することが多い。くさみ。くさめ。《季・冬》 〔日葡辞書(1603‐04)〕
はな‐・ふ【嚔】
※万葉(8C後)一一・二八〇八「眉根掻き鼻火(はなひ)紐解け待てりやもいつかも見むと恋ひ来し吾れを」
くっさめ【嚔】
※虎明本狂言・皸(室町末‐近世初)「足をぬらすまひと思ふて、かしらまでぬらひた。ああ、くっさめ、くっさめ」
くさみ【嚔】
〘名〙 「くさめ(嚔)」の変化した語。
※歌舞伎・心謎解色糸(1810)二幕「この途端にこの薬二人が鼻へ入る。アイタ、タ、タ、タ。(ト頭を押へ)アアくさみ。(ト一度にする)」
くっしゃみ【嚔】
※浄瑠璃・浦島年代記(1722)一「今日の只今迄くっしゃみ一つ致さず」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報