放る(読み)ホウル

デジタル大辞泉 「放る」の意味・読み・例文・類語

ほう・る〔はふる〕【放る/×抛る】

[動ラ五(四)]
遠くへ投げる。乱暴に、または無造作に投げる。「ボールを―・る」「新聞を―・ってよこす」
途中でやめる。また、そのまま放置する。「勉強を―・って遊びに行く」「泣いても―・っておく」
あきらめて放棄する。「試験を―・る」
投げる[用法]
[可能]ほうれる
[類語]投げる投ずるほうり投げるほっぽるぶん投げる投げつける

はふ・る【放る】

《「はぶる」とも》
[動ラ四]はなちやる。捨て去る。
大君を島に―・らば」〈・下・歌謡〉
[動ラ下二]さすらう。また、落ちぶれる。
「親なくなりてのち、とかく―・れて」〈大和五七

ほ・る【放る/×抛る】

[動ラ五(四)]《「ほうる」の音変化》
捨ててそのままにする。「やりかけで―・っておく」「うわさなんて―・っておけ」
投げる。
「やら腹立ち門口へ―・れば」〈浄・歌祭文

ま・る【放る】

[動ラ四]大小便をする。排泄はいせつする。
くそ―・り散らしき」〈・上〉

はな・る【放る】

[動ラ下二]はな(放)れる」の文語形

ひ・る【放る】

[動ラ五(四)]体外へ出す。ひりだす。「を―・る」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「放る」の意味・読み・例文・類語

はふ・る【放・抛】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「はぶる」とも )
    1. 遠くへ放ちやる。
      1. [初出の実例]「大君を 島に波夫良(ハブラ)ば 船余り い帰り来むぞ 我が畳ゆめ」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. うちすてる。閑却する。すてておく。
      1. [初出の実例]「みまし大臣の家の内の子等をも、波布理(ハフリ)賜はず」(出典:続日本紀‐宝亀二年(771)二月二二日・宣命)
    3. ほうる(放)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ( 放 ) 家を離れてさまよう。さすらう。流離する。また、落ちぶれる。零落する。
    1. [初出の実例]「親なくなりてのち、とかくはふれて」(出典:大和物語(947‐957頃)五七)
    2. 「此かん崎の里に、はふれ来たりて住みたまへりけり」(出典:読本・春雨物語(1808)宮木が塚)

放るの語誌

( 1 )「はふる(放)」と、「はふる(溢)」「はふる(屠)」「はぶる(葬)」「はふる(羽振)」などは、清濁の決定し難い面もあるが、基点とする場所から離れる、または離れさせるという意味を共通に持っているので、語源を同じくすると考えられる。
( 2 )本来四段活用他動詞、下二段活用自動詞を表わしていたが、平安時代以降、四段活用「はふる」に代わって「はふらす」「はふらかす」が他動詞として使われるようになる。
( 3 )[ 二 ]に関して「改正増補和英語林集成」には「Hafureru(ハフレル)」という下一段活用の例が見られる。


ほう・るはふる【放・抛・投】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 「はふる(放)」の変化したもの )
  2. 遠くへ投げる。投げる。また、むぞうさに投げる。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「殿井は骨牌を其処に投(ハフ)って」(出典:魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前)
  3. 投げ捨てる。捨ててそのままにする。放棄する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「水彩画をかいて物にならんと思って、そこらに抛って置いたのを」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一)
  4. 中途でやめて、そのままにする。そのままかまわずにおく。放置する。
    1. [初出の実例]「仕事は思ひ切って抛(ハフ)っておきなさい」(出典:闘牛(1949)〈井上靖〉)

ひ・る【放】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 体外へ排泄(はいせつ)する。たれる。
    1. [初出の実例]「はんざふのくちより水をいだすやうに、ひりちらす、音たかくひる事限なし」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一二)
  3. 産む。産みつける。
    1. [初出の実例]「こをばみなひりすてたる心地也」(出典:名語記(1275)六)

放るの語誌

くしゃみをする意の「ひる(嚔)」と同語源。「新撰字鏡」に「放屁 戸比留」、「十巻本和名抄‐二」に「放屁 倍比流」の例もある。これらは「戸比利虫」(新撰字鏡)、「久曾比理乃夜万比」(和名抄)などの「ひり」から推して、中古早くから四段活用だったと思われるが、より古くは、「ひる(嚔)」と同じく上一段活用(上代は上二段活用)だったかと考えられる。


ほ・る【放・抛】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「ほうる(放)」の変化した語 )
  2. 投げる。
    1. [初出の実例]「何卒知らさんと石をほれば」(出典:歌舞伎・鳥辺山心中(宝永三年)(1706))
  3. うち捨てて、そのままにする。
    1. [初出の実例]「いっこ面倒なら放(ホッ)ておかんせ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)

へ・る【放】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「ひる(放)」の変化した語 ) 身体の外へ出す。身体の器官から体外へ出す。特に、虫が卵を産む。
    1. [初出の実例]「虫の子をうみ付侍るを、子をへるといふは如何。ひるといふべき歟」(出典:かた言(1650)五)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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