改訂新版 世界大百科事典 「国庫収支」の意味・わかりやすい解説
国庫収支 (こっこしゅうし)
国からみて,国庫の収支は次の三つに区分されている。(1)国庫対日銀収支 国が政府短期証券を発行し,それを日本銀行が保有する場合,あるいは日本銀行が国に対して納付金や法人税を納める場合である。(2)国庫内振替収支 国庫内部での各会計,政府関係機関相互の受払いであり,たとえば資金運用部が公社や公庫に融資する場合である。(3)国庫対民間収支 国庫と民間すなわち国庫外との受払いである。この収支は日本銀行にある政府預金の増減を通じて行われるもので,金融市場に一定の影響を及ぼしている。またこの収支は〈財政資金対民間収支〉とも呼ばれる。以下,この区分の国庫収支について説明する。
国庫収支は一般財政と外国為替資金特別会計(外為会計)に大別される。また一般財政から食糧管理特別会計(食管会計)の収支を除いたものを〈純一般財政〉と呼ぶ分類も行われている。歳出と歳入の各項目のもつ季節変動が合成され,収支じりには以下に例示するような季節性が観察される。まず歳入についてみると,税収が各税目ごとの納税期,課税対象となる所得や消費などが季節的に変動するため,国庫収支の季節変動の大きな要因となっている。一方,おもだった歳出についてみると,地方交付税は3月,6月,9月,11月に普通交付税が支払われ,大幅な散超(払い超ともいう)要因となる(〈散超〉については〈揚超・散超〉の項参照)。公共事業費の支払時期は景気対策との絡みで決定される契約率にも左右されるが,年度末諸払いの3月,出納整理期間支出の4月,年末諸払いの12月に払いが増大する。社会保障費は4月,7月,11月に支払が多い。以上を総合した〈純一般財政〉の散超分をうめるために国債が発行される。国庫収支上の国債は,中長期利付国債,中期割引国債,大蔵省証券の民間引受け分の発行・償還に伴う収支の合計である。国庫の大宗をなすのは中長期の利付国債で,金融情勢の影響を受けつつも,通常は国庫収支が大幅な払い超となる4~5月,11月に大量発行され,国庫が大幅な揚超となる12月には発行が抑制されることが多い。
また食管会計と外為会計についてみると,食管会計は収入が季節性をもたないのに対して,支払は米の収穫期の関係で10~11月に巨額に達する。外為会計の動向は国際収支の動向に大きく左右される。
次に,以上を合計した国庫収支の年度越し波動についてみると,予算や財政投融資計画が毎年度均衡することを前提に編成されているので,国庫収支の受払いも基本的には年度で均衡するわけであるが,現実には次のような要因により,毎年度かなりの規模で揚超あるいは散超となる。一般会計については剰余金の発生や使用,あるいは国庫対日銀収支の受入超過により,また財政投融資計画については通常かなりの額が翌年度に使用されるために,食管会計は米の在庫量の変動により,また外為会計は国際収支の状況に応じて年度間の受払いは均衡するとは限らない。
執筆者:富田 俊基
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報