食糧管理特別会計(読み)ショクリョウカンリトクベツカイケイ

デジタル大辞泉 「食糧管理特別会計」の意味・読み・例文・類語

しょくりょうかんり‐とくべつかいけい〔シヨクリヤウクワンリトクベツクワイケイ〕【食糧管理特別会計】

食糧の買い上げ、売り渡し、配給などを円滑に処理するため、一般会計と区別して設けられた特別会計。平成19年度(2007)から食料安定供給特別会計に統合された。食管会計

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精選版 日本国語大辞典 「食糧管理特別会計」の意味・読み・例文・類語

しょくりょうかんり‐とくべつかいけいショクリャウクヮンリトクベツクヮイケイ【食糧管理特別会計】

  1. 〘 名詞 〙 食糧管理のための食糧、農産物価格安定法および飼料需給安定法により政府の買入れる農産物輸入飼料などの買入、売渡、貸付などに関する歳入歳出を一般会計と区分して経理する特別会計。食管会計。

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改訂新版 世界大百科事典 「食糧管理特別会計」の意味・わかりやすい解説

食糧管理特別会計 (しょくりょうかんりとくべつかいけい)

食糧管理制度の資金的基礎をなす特別会計の一つ。米騒動を契機に,米価の変動による社会不安を防ぐため,1921年(大正10)米穀法が制定され〈米穀需給調節特別会計〉による間接統制が始まった。42年に戦時食糧統制のため食糧管理法による直接統制に移行し,食糧管理特別会計法に基づく食糧管理特別会計(略して食管会計)が置かれ,現在に至っている。本会計の管理対象は制定時は米,麦類であったが,その後いも類も加えられた。50年にはいも類は対象外とされ,麦類も52年に間接統制となり,現在では米だけが直接統制の対象となっている。米の買入代金の支払が供米期に集中するため,また資金繰りのため,食管会計の発行する政府短期証券が,食糧証券である。

 食管会計は,国内米管理勘定,国内麦管理勘定,輸入食糧管理勘定,農産物等安定勘定,輸入飼料勘定,業務勘定および調整勘定に分かれている。食糧管理の目的は発足時の食糧確保から今日では農家保護に移っており,高く買って安く売るという〈逆ざや〉関係が生じている。小売価格の引上げと農家からの買入価格の抑制を続けた結果,1978年度において末端逆ざや(小売価格と買入価格の逆ざや)は解消されたが,売買逆ざや(政府の売買価格の逆ざや)やコスト逆ざや(食糧管理のコストを含めた逆ざや)は残っており,一般会計から巨額の繰入れが行われてきた。これは3K赤字(Kは米,国鉄,健保の頭文字をとったもの)の一つに数えられ,国の財政上大きな問題となってきた。ただし歴史的にみれば,赤字の原因は大きく変化している。すなわち,食糧事情の悪かった1949年ころは,割高な輸入食糧を安く売ることによる赤字を補うため,巨額の輸入食糧価格調整補給金が必要であった。しかし,しだいに輸入食糧価格のほうがおおむね安くなって,54年度以降は前記補給金は不要になり,ごく例外的な年度を除き,輸入食糧管理勘定損益は黒字で,国内米管理勘定損益の巨額の赤字を多少なりとも埋めている。

 なお米についても,69年度から直接統制のほか,自主流通米制度が始まり,その助成金が一般会計から繰り入れられており,さらに同年度から過剰米対策として転作を奨励するための水田利用再編対策費が食糧管理特別会計に繰り入れられ,総合的な農業政策の柱となってきた。95年に食糧管理法に代わる食糧法が制定され,食糧管理制度は大きく転換し,またウルグアイ・ラウンド農業合意にもとづき95年から外国産米のミニマム・アクセスによる輸入が恒常化するなど,食管会計をめぐる状況は変化しつつある。
食糧管理制度
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「食糧管理特別会計」の意味・わかりやすい解説

食糧管理特別会計
しょくりょうかんりとくべつかいけい

食糧管理法などの法律のもとで,政府が行なう米やムギなど特定の食糧や農産物の買い入れ,売り渡しの収支を経理するために国の予算制度のなかに立てられていた特別会計。食糧管理法の対象となっていた米,ムギのほか,農産物価格安定法や飼料需給安定法などの対象となっていた穀物なども経理の対象とした。このうち食糧管理法によって政府が直接統制をしていた米については,農業政策の立場から生産者たる農家に比較的高い価格の買い入れを行なう反面,消費者物価対策の立場から消費者には比較的安い価格の売り渡しを行なわねばならないという,経理的には矛盾を含んだ政策的要求を背負っていた。この買入価格と売渡価格の開きを米価の「逆ざや」と呼ぶ。このため売渡代金で買入代金や諸掛かりをまかなうという特別会計の独立採算のたてまえが必ずしも維持できないかたちになっており,損失補填金や輸入食糧価格差補給金などのかたちでその差額を国の一般会計から補填する場合があった。これを一般に食管会計の赤字と呼ぶ。この赤字を埋めるための一般会計からの繰り入れが国の一般会計予算を圧迫した。この赤字を減らすねらいもあって政府に集まる米の量を少なくする措置として 1969年から配給計画には組み入れるが食管制度を通さない米の流通を公認する制度が生まれた。これを闇米と区別する意味で自主流通米と呼んだ。長年の米余剰によって政府支出の主要食糧関係費はふくれあがり財政基盤が悪化し,食管会計の支出は財政構造改革法のもとで 1998年度から前年同額以下と定められた。しかし,主要食糧関係費の抜本的な改革につながらなかったことから 2007年に食糧管理特別会計と農業経営基盤強化措置特別会計を統合し,食料安定供給特別会計を新たに設けた。農業経営の基盤整備,備蓄米やムギなどの買い入れ,売り渡しに関するものに改められた。

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百科事典マイペディア 「食糧管理特別会計」の意味・わかりやすい解説

食糧管理特別会計【しょくりょうかんりとくべつかいけい】

食糧管理制度の実施に伴い設けられた特別会計。食管会計と略称。米穀法制定(1921年)に伴い創設された米穀需給調節特別会計が前身。政府の食糧管理業務を経理し,米を中心に国内産食糧や輸入食糧を買い入れ,これを消費者に販売することを目的とする。食糧管理法(1995年より新食糧法)による米麦のほか他の法律による甘藷(かんしょ)デンプン,輸入飼料,テンサイ糖などを取り扱う。二重米価などによる赤字が増加し,一般会計から毎年繰り入れて帳尻を合わせている。1998年度でその額は2434億円に達し,財政再建の立場から同会計の改廃が問題になっている。→食糧証券

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「食糧管理特別会計」の意味・わかりやすい解説

食糧管理特別会計
しょくりょうかんりとくべつかいけい

国民の食生活を確保し、農業および国民経済の安定を図るため、政府の行う食糧、農産物等および輸入飼料の買入れや売り渡し、貯蔵等の事業に関する経理を明らかにするために、1921年(大正10)に設置された特別会計。2007年(平成19)、農業経営基盤強化措置特別会計と統合して、食料安定供給特別会計に再編された。会計の合理化、健全化を図るために国内米管理、国内麦管理、輸入食糧管理、農産物等安定、輸入飼料、業務、調整の各勘定に分かれていた。

[林 正寿]

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