食糧管理制度の資金的基礎をなす特別会計の一つ。米騒動を契機に,米価の変動による社会不安を防ぐため,1921年(大正10)米穀法が制定され〈米穀需給調節特別会計〉による間接統制が始まった。42年に戦時食糧統制のため食糧管理法による直接統制に移行し,食糧管理特別会計法に基づく食糧管理特別会計(略して食管会計)が置かれ,現在に至っている。本会計の管理対象は制定時は米,麦類であったが,その後いも類も加えられた。50年にはいも類は対象外とされ,麦類も52年に間接統制となり,現在では米だけが直接統制の対象となっている。米の買入代金の支払が供米期に集中するため,また資金繰りのため,食管会計の発行する政府短期証券が,食糧証券である。
食管会計は,国内米管理勘定,国内麦管理勘定,輸入食糧管理勘定,農産物等安定勘定,輸入飼料勘定,業務勘定および調整勘定に分かれている。食糧管理の目的は発足時の食糧確保から今日では農家保護に移っており,高く買って安く売るという〈逆ざや〉関係が生じている。小売価格の引上げと農家からの買入価格の抑制を続けた結果,1978年度において末端逆ざや(小売価格と買入価格の逆ざや)は解消されたが,売買逆ざや(政府の売買価格の逆ざや)やコスト逆ざや(食糧管理のコストを含めた逆ざや)は残っており,一般会計から巨額の繰入れが行われてきた。これは3K赤字(Kは米,国鉄,健保の頭文字をとったもの)の一つに数えられ,国の財政上大きな問題となってきた。ただし歴史的にみれば,赤字の原因は大きく変化している。すなわち,食糧事情の悪かった1949年ころは,割高な輸入食糧を安く売ることによる赤字を補うため,巨額の輸入食糧価格調整補給金が必要であった。しかし,しだいに輸入食糧価格のほうがおおむね安くなって,54年度以降は前記補給金は不要になり,ごく例外的な年度を除き,輸入食糧管理勘定損益は黒字で,国内米管理勘定損益の巨額の赤字を多少なりとも埋めている。
なお米についても,69年度から直接統制のほか,自主流通米制度が始まり,その助成金が一般会計から繰り入れられており,さらに同年度から過剰米対策として転作を奨励するための水田利用再編対策費が食糧管理特別会計に繰り入れられ,総合的な農業政策の柱となってきた。95年に食糧管理法に代わる食糧法が制定され,食糧管理制度は大きく転換し,またウルグアイ・ラウンド農業合意にもとづき95年から外国産米のミニマム・アクセスによる輸入が恒常化するなど,食管会計をめぐる状況は変化しつつある。
→食糧管理制度
執筆者:吉田 和男
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国民の食生活を確保し、農業および国民経済の安定を図るため、政府の行う食糧、農産物等および輸入飼料の買入れや売り渡し、貯蔵等の事業に関する経理を明らかにするために、1921年(大正10)に設置された特別会計。2007年(平成19)、農業経営基盤強化措置特別会計と統合して、食料安定供給特別会計に再編された。会計の合理化、健全化を図るために国内米管理、国内麦管理、輸入食糧管理、農産物等安定、輸入飼料、業務、調整の各勘定に分かれていた。
[林 正寿]
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