国際共助(読み)こくさいきょうじょ

改訂新版 世界大百科事典 「国際共助」の意味・わかりやすい解説

国際共助 (こくさいきょうじょ)

民事,刑事の手続に関する各国の司法機関,捜査機関の間の国際協力。国際司法共助ともいう。国際交流の増大に伴い,経済関係や身分関係に関するトラブルや刑事犯罪事件も国際的規模をもつものが増大し,国際共助の必要な場面は増えつつある。なお,国内の裁判所が互いに補助しあうことについては〈司法共助〉の項を参照されたい。

民事手続では,証拠の収集(証人,鑑定人の尋問や検証)と書類の送達訴状,呼出状その他の書面の送達)について国際共助が行われる。日本は,すでに1905年に〈外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法〉を制定して外国からの嘱託に基づく証拠調べと書類の送達に応じうる態勢を整え,ヨーロッパ諸国も1905年にハーグ国際私法会議が〈民事訴訟手続に関する条約〉を定め,国際司法共助の道を確立した。その後,54年にこの条約を改正した〈民事訴訟手続に関する条約〉(通称民訴条約),65年にはその一部に含まれていた書類の送達の手続の簡素化・迅速化を図った〈民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約〉(通称,送達告知条約)が定められ,日本も70年に民訴条約,送達告知条約の両条約を批准した。その結果,外国において行う証拠調べや送達,外国からの依頼によって日本で行う証拠調べや送達は,これらの条約やこれに伴う国内法により行われている。
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刑事手続では,証拠調べや書類の送達等のほか,逃亡犯罪人の引渡しを含み,さらに広い意味では,外国刑事判決の自国での執行や刑事手続の移管等を加えて国際共助という。

 ヨーロッパ諸国等ではこのような国際協力が盛んで,ヨーロッパ理事会構成国間等では,そのための条約が存在する。日本の犯罪人引渡しに関する法律には〈逃亡犯罪人引渡法〉(1953公布)がある。犯罪人引渡条約としてはアメリカ合衆国とのものが唯一であって,1978年に引渡対象犯罪の範囲の拡大等を目的として全面改正された(1980発効)。証拠調べと書類の送達については,民事手続の場合と同様に〈外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法〉に定めている。

 捜査共助については,〈国際捜査共助法〉(1980公布)がある。その内容は,外国の要請による〈共助〉と,国際刑事警察機構ICPO)に対する〈協力〉である。前者は外国の刑事事件の捜査に必要な証拠を収集して提供することであり,このために検察官または司法警察員は,関係人の取調べ,鑑定の嘱託,実況見分等を行い,裁判官の発する令状により,差押え,捜索または検証をすることができる。また検察官は裁判官に証人尋問を請求することができる。外国からの共助の要請に対してはこれらの法律等に基づいて必要な措置がなされる。なお,在日米軍との関係における共助については,日米安全保障条約に基づく地位協定に規定がある。

 また,〈麻薬特例法〉(1991公布)は,麻薬新条約(1988発効)の規定を担保するため,外国の要請による,薬物犯罪による不法収益の没収・追徴に関する外国の裁判の国内での執行および保全のための国際共助手続について規定している。
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