精選版 日本国語大辞典 「送達」の意味・読み・例文・類語
そう‐たつ【送達】
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訴訟手続の円滑な進行のために、訴訟書類の交付について訴訟法の規定する形式手続をいう。すなわち送達は、一定の方式に従って当事者その他の訴訟関係人に訴訟上の書類の内容を了知させ、またはその機会を与えることを目的としている。
[内田武吉・加藤哲夫]
民事訴訟法は、かならず送達手続によって書類を交付すべき場合を定め、この手続に従うことにより一定の効果を生じさせることにしている。たとえば、訴状の送達によって、被告に対する関係において訴訟が成立し(民事訴訟法138条)、終局判決の送達によって、上訴の不変期間(法定期間のうち、裁判所が自由にその期間を伸縮できないもの)が開始される(同法285条、313条)などの効力が生ずる。民事訴訟では、送達は、特別の定めがある場合を除き、送達すべき書類を送達機関が名宛(なあて)人に、その人の住所で直接手渡す交付送達(同法101条、103条)が原則であるが、次の場合には本人以外の者に送達することにより、本人に対して効力を生ずる。
(1)訴訟無能力者に対する送達は、その法定代理人にする(同法102条1項)。
(2)刑事施設に収容されている者に対する送達は、刑事施設の長にし(同法102条3項)、その者の責任で本人に書類を交付させる。
代理人に対する送達については、数人が共同して代理権を行うべき場合においても、送達はその1人に対してすればよい(同法102条2項)との特則がある。なお、交付送達の方法をとれない場合には、出会送達(同法105条)、補充送達(同法106条1項・2項)、差置送達(同法106条3項)などがあり、これらの方法もとれない場合として、書留郵便等に付する送達(同法107条)や外国における送達(同法108条)がある。相手方の住所が不明の場合の方法としては公示送達(同法110条)の制度がある。
送達は、特別の定めがある場合を除き、職権でするものとし(同法98条1項)、受訴裁判所の書記官がその事務を取り扱う(同法98条2項)が、場合により送達地の地方裁判所の書記官に嘱託することもできる(民事訴訟規則39条)。送達手続を実施する者としては、執行官ならびに郵便集配人があり(民事訴訟法99条)、裁判所書記官が自ら実施する場合もある(同法100条、111条)。
[内田武吉・加藤哲夫]
刑事訴訟では、召喚状の送達(刑事訴訟法65条、153条)、起訴状謄本の送達(同法255条、271条、刑事訴訟規則166条、176条)、裁判書の謄本の送達(同規則34条)などがあるが、これらの書類の送達については、裁判所の規則に特別の定めのある場合、すなわち刑事訴訟規則第62条(送達のための届出)、第63条(書留郵便等に付する送達)、第63条の2(就業場所における送達)、第64条(検察官に対する送達)、第65条(交付送達)の定める場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定(民事訴訟法98条、99条、101条、102条、103条、105条、106条、108条、109条など。ただし公示送達に関する規定を除く)が準用されている(刑事訴訟法54条)。公示送達(裁判所の掲示場に掲示して行う送達)に関する規定が準用されないのは、被告人の利益を害さないためである。書類の発送は、裁判所書記官がこれを取り扱う(刑事訴訟規則298条)。
[内田一郎]
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