等高線栽培(読み)とうこうせんさいばい(その他表記)contour cropping

改訂新版 世界大百科事典 「等高線栽培」の意味・わかりやすい解説

等高線栽培 (とうこうせんさいばい)
contour cropping

傾斜地で等高線に沿ってうね作り農作物を栽培する方式傾斜地に強い雨が降ると,表面水は土壌をえぐって斜面を流下し,はげしい土壌浸食をひき起こして農耕地を荒廃させる。等高線に沿ってうねを作ると,表面水はうねに沿ってゆるやかに流れ,またこの間に表面水は土壌中に浸透するため,土壌浸食は著しく軽減される。このように等高線栽培は土壌浸食の防止を主目的として行われる栽培方式であるが,欧米諸国の緩傾斜地では,その効果をより強化するために,等高線帯状栽培が行われることが多い。この方式は等高線栽培を行う耕地を,等高線に沿って帯状に区切り,一般の畑作物の間に帯状の牧草地をはさみ込むものである。牧草は葉が土壌表面をおおい,また根の土壌捕捉力が強いため,土壌浸食の防止に大きな効果を発揮する。以上いずれの方式も,斜面の傾斜が著しくなると十分の効果を期待できなくなる。このような場合,斜面を階段状に区切って利用する階段耕作の方式が採用される。

 なおアメリカの水田地帯では,等高線に沿ってあぜを設置して耕地を区画することが多い。水田は一定水深の水をたたえる必要上,個々の区画はできるだけ均平になっていなければならない。この要請を満たすために行われる方式であって,等高線栽培の一種ともいえるが,目的はまったく異なる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「等高線栽培」の意味・わかりやすい解説

等高線栽培
とうこうせんさいばい

傾斜地における作物の栽培法の一つ。等高線に沿って帯状に畑をつくる帯状栽培やテラス栽培の基本となる耕作法である。傾斜地では雨水によって土壌が下へ流されるのを防ぐことがもっとも重要であるが、等高線に沿ってうねを切って作物を栽培すると、雨水はうね状の作物によって縦に表面流去するのを妨げられ、うね内に貯留され、地中に浸透する。これにより土壌の流亡は防がれ、土壌保全の効果があがるとともに、各うねの土壌水分も保たれるので作物の生育をよくする。うね自体は水平につくられるので、作業は容易で、畜力や機械力を導入することができるのも利点である。

[星川清親]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「等高線栽培」の意味・わかりやすい解説

等高線栽培
とうこうせんさいばい
contour farming

耕地,整地,播種から収穫にいたるまで,すべての作業が斜面の等高線に沿って行えるように作物を栽培する方法。畦を等高線に一致させるのではなく,等高線に対し一定方向の勾配 (短いときで1~2°,長いときで 0.5°前後) をもたせる。この栽培法は上下耕栽培 (縦畦) に比べて水の浸食が少いため,土壌中に多くの水分を保蓄し,肥料養分の損失を少くする。特に畜力,機械力による栽培では作業能率が高い。典型的なのは,ある作物を永年牧草と交互に組合せて斜面配列を行う方法で,牧草畑の浸食を防ぐとともに,牧草との輪作で地力の増進をはかることができる。これを等高線帯状栽培という。

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百科事典マイペディア 「等高線栽培」の意味・わかりやすい解説

等高線栽培【とうこうせんさいばい】

傾斜地に等高線状に畝(うね)を作り,作物を栽培すること。傾斜に縦に畝を作ると雨水などにより土壌浸食や養分流亡が起こるので,これを防ぐために行う。傾斜が著しい場所では,傾斜を階段状に区切って利用する階段耕作が行われることもある。

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