改訂新版 世界大百科事典 「地域区分」の意味・わかりやすい解説
地域区分 (ちいきくぶん)
全世界や国家,特定の範囲などの地表を,適当な指標により,いくつかの地域に区分すること。地球表面ないし土地空間は,岩石,土壌,水,大気,生物からなる自然複合体であり,人間の生活・居住空間においては,自然複合体を人間集団が利用し,加工し,組織した人間・環境系あるいは人間生態系である。人類の生活空間としての地球表面世界を地理学的に認識するためには,諸事象の不均等分布,気候帯,植生帯,土壌帯などの地域的配列,社会経済の地帯構造における空間的秩序に着目して,なるべく事実に即した客観的規準によって地域区分する必要がある。しかし地表空間のすべての基本的構成要素ごとに隣接諸地域と区別されるような個性的地域を画定することは,きわめて困難であり,またそのような完全個性的地域が実在するかどうかも疑問視されている。
そこで一定の指標に則して見た場合,等質性あるいは統一性という,周辺の土地空間と区別される特徴を備えた地域,すなわち実質地域を画定するためには,まず地表空間の基本的構成要素あるいは事象のうちで比較的明瞭な地方的差異を生じているものを単一指標として選び,それを類型や段階に区分して,それぞれの分布領域,占居範囲を画定する方法が採用される。たとえば,成因や構成物質,起伏量の差異により分類された地形区,気温と降水量を組み合わせた気候類型による気候区,植物群落・植生の相観的類型である熱帯雨林,サバンナ,ステップ,照葉樹林などの分布範囲などである。また人文面では,人口分布密度の段階,主要な土地利用類型,集落形態の類型,行政区別の産業構造の類型,都市機能の及ぶ圏域といった事象の分布範囲を基礎にして,地表空間を組織的に諸地域へ区分するのである。
こうして設定された各種の単一指標地域を二つ以上重ね合わせて,より複合的な実質地域を設定することができる。その際,どのような複合地域が望ましいかは,その目的や用途によって異なる。そういう意味ではいかなる地域区分も便宜的・人為的なものであるといわれている。なお複合地域の設定には,最初から二つ以上の要素・事象の組合せの類型を設定して,それぞれの分布範囲を画定するいき方もありうる。たとえば地形区と土地利用,植生と人口密度との組合せによるものなどである。
執筆者:西川 治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報