塩化カルシウム(読み)エンカカルシウム(その他表記)calcium chloride

デジタル大辞泉 「塩化カルシウム」の意味・読み・例文・類語

えんか‐カルシウム〔エンクワ‐〕【塩化カルシウム】

潮解性のある白色の結晶。工業的にはアンモニアソーダ法副産物として得られ、天然には海水中に少量存在。各種の水和物もあり、乾燥剤吸湿剤寒剤医薬品などに使用。化学式CaCl2

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精選版 日本国語大辞典 「塩化カルシウム」の意味・読み・例文・類語

えんか‐カルシウムエンクヮ‥【塩化カルシウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( カルシウムは[英語] calcium ) 塩素とカルシウムとの化合物。化学式 CaCl2 白色で潮解性のある結晶。工業的にはアンモニアソーダ法の副産物などとして得られる。無水塩および二水塩は乾燥剤、試薬、医薬品、六水塩は寒剤、防火剤、カルシウム塩の製造原料などに用いる。塩カル。
    1. [初出の実例]「白堊と塩化水素酸とを以て炭酸を製して其瓶中に残るものは塩化『カルシユム』の溶液なり」(出典:小学化学書(1874)〈文部省〉三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カルシウム
えんかかるしうむ
calcium chloride

カルシウムと塩素の化合物。塩カルとよばれることもある。天然にはハイドロフィライトKCaCl3、タキハイドライトCaMg2Cl6・12H2Oなどの鉱物として産出する。また海水中に約0.15%含まれている。工業的には、アンモニアソーダ法の工程における蒸留塔廃液に水酸化カルシウムを加えることによって製造される。ほかに、石灰石炭酸カルシウム)に副生塩酸を作用させる方法も行われる。水溶液からの析出温度が29℃以下であると六水和物が生ずるが、29~45℃では四水和物が、45℃以上では二水和物が得られる。175℃で一水和物に、約300℃で無水物となる。無水物は斜方晶系の結晶、六水和物(17℃での比重1.68、融点29.92℃)は三方晶系の結晶で、構造はまったく異なる。無水物、各水和物とも無色で潮解性があり、水、エタノールエチルアルコール)によく溶ける。無水物はアセトン、酢酸などにも溶ける。無水物と二水和物は各種物質の乾燥剤に用いられるが、アンモニアやアルコールとは分子化合物をつくるので、これらに対しては不適当である。そのほかに高速道路凍結防止剤、製氷・冷菓製造用鹹水(かんすい)、豆腐凝固剤、土質改良剤、化学工業用原料、金属カルシウムの製造など多くの用途がある。

[鳥居泰男]

医薬用

日本薬局方には塩化カルシウムと塩化カルシウム注射液が収載されている。医療用には2%または3%の水溶液、および電解質補正用に0.5モルの水溶液が使われる。また、リンゲル液の組成としても含まれている。骨格や歯牙(しが)の強化、発育促進などを目的としてカルシウムの補給に使われるが、注射液は栄養剤としてよりも治療薬として臨床的に使われることが多い。すなわち、カルシウムの作用が血液凝固促進因子として、また筋収縮にも関係することから、低カルシウム血症性テタニーをはじめ、けいれん性素因や出血性素因のほか、じんま疹(しん)、湿疹、薬疹、瘙痒(そうよう)症などの皮膚疾患などに使われる。筋肉注射をすると局所壊死(えし)の危険があるため、静脈注射を行う。

[幸保文治]


塩化カルシウム(データノート)
えんかかるしうむでーたのーと

塩化カルシウム
  CaCl2
 式量  111.0
 融点  772℃
 沸点  >1600℃
 比重  2.15
 結晶系 斜方

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改訂新版 世界大百科事典 「塩化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カルシウム (えんかカルシウム)
calcium chloride

化学式CaCl2。海水中に約0.15%含まれ,工業的にはソルベー法(アンモニアソーダ法)で炭酸ナトリウムを製造するとき,主として2水和物CaCl2・2H2Oの形で多量に副産する。炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムを塩酸に溶かして濃縮すると,30℃以下では6水和物CaCl2・6H2O,30~40℃では4水和物CaCl2・4H2O,それ以上では2水和物が析出することがわかる。175℃で1水和物CaCl2・H2O,300℃付近で無水和物が得られる。いずれも無色,潮解性の結晶である。無水和物は斜方晶系(ゆがんだルチル型構造)で,融点772℃,沸点1600℃以上,比重d15=2.152,20℃で100gの水に74.5g溶け,アルコール類,アセトンにも可溶。また,無水和物は吸湿性がとくに強いので,古くから乾燥剤として用いられているが,アンモニアやアルコールとはそれぞれCaCl2・8NH3,CaCl2・4C2H5OHのような化合物をつくるので,それらの乾燥剤としては適しない。6水和物は三方晶系で,八面体型6配位の[Ca(H2O)62⁺イオンを含み,比重d17=1.68。これと氷とを粉砕して1.44:1の割合に混ぜた混合物は-54.9℃の低温を生じ,強力な寒剤となる。溶液を冷凍機のブラインとし,またセメントの急結剤などに使用する。
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化学辞典 第2版 「塩化カルシウム」の解説

塩化カルシウム
エンカカルシウム
calcium chloride

CaCl2(110.98).炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムに塩酸を作用させ濃縮すると得られる.天然には海水中に約0.15% 存在し,また鉱物としても産出する.工業的には,アンモニアソーダ法の副産物として得られる.無水物は白色の固体で斜方晶系.格子定数a = 0.624,b = 0.643,c = 0.420 nm.融点772 ℃,沸点1600 ℃ 以上.密度2.15 g cm-3.潮解性で吸湿性が大きく乾燥剤に用いられる.水に易溶,種々のアルコール,アセトンに可溶.アンモニアおよびエタノールとはそれぞれCaCl2・8NH3,CaCl2・4C2H5OHのような分子化合物をつくるので,それらの乾燥には適当でない.飽和水溶液から結晶させると30 ℃ 以下では六水和物,30~40 ℃ では四水和物,40 ℃ 以上では二水和物を析出する.175 ℃ で一水和物となり,300 ℃ では無水物を生じる.六水和物と氷とを1.44:1の割合でまぜると,氷晶点は-54.9 ℃ で,寒剤として用いる.無水物および二水和物は乾燥剤として重要である.冷媒,防腐剤,豆腐製造,カルシウム塩の製造原料,試薬,融雪剤,土質改良剤,醸造,医薬品(リンゲル液,消炎剤)として用いられる.[CAS 10043-52-4:CaCl2][CAS 25094-02-4:CaCl2・4H2O]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カルシウム
えんかカルシウム
calcium chloride

化学式 CaCl2 。アンモニアソーダ法の副産物として2水和物が多量に得られる。このほかに1,2,4,6水和物がある。無水和物は白色の粒状または塊状固体。比重 2.15,水,アルコールに易溶 (水には発熱して溶ける) 。非常に吸湿性が強い。融点 772℃,沸点 1600℃以上。市販品は Ca(OH)2 を不純物として含む。水溶液を濃縮すると,30℃以下では6水和物,30~40℃では4水和物,それ以上では2水和物が得られる。無水和物は乾燥剤,脱水剤として重要である。6水和物と砕いた氷を 1.44:1 の割合で混ぜると-54.9℃に達するので,寒剤として用いられる。カルシウム剤,利尿剤,止血薬などに利用される。

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百科事典マイペディア 「塩化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カルシウム【えんかカルシウム】

化学式はCaCl2。融点772℃,沸点2008℃。潮解性で吸湿性の強い無色の結晶。アルコール,アセトンにも溶ける。工業的にはアンモニアソーダ法の副産物として2水塩が得られる。乾燥剤,コンクリートなどの凍結防止剤,寒剤に使用。天然には海水中に約1.5‰存在。

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栄養・生化学辞典 「塩化カルシウム」の解説

塩化カルシウム

 CaCl2(mw110.98).吸湿性が強く,乾燥剤として用いられる.

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