塩税(読み)えんぜい

精選版 日本国語大辞典 「塩税」の意味・読み・例文・類語

えん‐ぜい【塩税】

〘名〙 食塩にかけられる税。
政治小説を作るべき好時機(1898)〈内田魯庵〉「地租増徴も有繋(さすが)に言出しかねて終には塩税(ヱンゼイ)窮策や造酒税十五円の突飛策を案じつつあるにあらずや」

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改訂新版 世界大百科事典 「塩税」の意味・わかりやすい解説

塩税 (えんぜい)

塩を対象とする消費税。すでに古代ギリシア(トロイア,トラキアなど)で行われており,共和政下のローマでは塩専売制がとられていた。中・近世ではフランスのガベルgabelleが有名である。はじめは領主国王が自己の領地領主権にもとづいて徴収していたが,14世紀半ばに主として戦費調達の必要から王権にもとづく徴収が開始され,ルイ14世の塩税王令(1680)によって制度的確立をみた。塩売買の自由度,税率には大きな地域差があったが,王国の中心地域では塩は王立の塩倉を経由して公定価格で売買され,住民は塩倉で毎年一定量の塩(義務塩)を買って税を納めることを義務づけられた。塩税は間接税中最大の収入をあげたが,反面きわめて不人気で,16,17世紀にしばしば塩税一揆の原因となり,フランス革命の際に廃止された(1790)。まもなくナポレオンによって復活され(1806),1945年まで維持された。このフランスおよび独立(1581)後間接税(塩税も含む)を史上最も発展させた国といわれるオランダをモデルとして,イギリスやドイツにも塩税が導入された。イギリスでは長期議会によって塩税が開始され(1644),反対暴動があっていったん廃止され,クロムウェル再建(1649)した後は長い間続いたが,1825年に廃止された。プロイセンでは1654年以来塩専売制がとられていたが,関税法改正を契機に全国的統一価格による専売制となり(1820),やがて塩製造税に変更された(1867)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩税」の意味・わかりやすい解説

塩税
えんぜい
gabelle

ガベルとも呼ばれる。フランス革命前の塩に対する課税。ガベルは消費税一般を意味していたが 15世紀以来塩税をさすようになった。塩に対する消費税であると同時に,塩の生産,流通,消費の国家による統制でもあった。日常生活にかかわる課税であるうえに,大塩税地方,小塩税地方,免税地方などに分れ,税率は地方によって著しく異なり悪税の象徴とみなされ,しばしば民衆反乱の原因となった。 1790年3月に廃止された。

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普及版 字通 「塩税」の読み・字形・画数・意味

【塩税】えんぜい

塩の税。

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