壁書(読み)カベガキ

デジタル大辞泉 「壁書」の意味・読み・例文・類語

かべ‐がき【壁書(き)】

壁に書くこと。また、壁に書いた文字
壁書へきしょ2」に同じ。

へき‐しょ【壁書】

壁に書くこと。また、その書いたもの。かべがき。
主に室町時代命令布告またおきてなどを板や紙に書いて壁にはりつけた掲示。かべがき。

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精選版 日本国語大辞典 「壁書」の意味・読み・例文・類語

かべ‐がき【壁書】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 壁に書くこと。また、その文字。へきしょ
  3. 法令や掟(おきて)などを板や紙に書いて壁にはりつけた掲示。へきしょ。
    1. [初出の実例]「則被一紙壁書、可于円隆寺南大門」(出典:吾妻鏡‐文治五年(1189)九月一七日)

へき‐しょ【壁書】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 壁に書くこと。また、その書かれたもの。かべがき。〔景徳伝燈録‐三〕
  3. 法令や布告、また掟(おきて)や心得を板や紙に書いて壁にはりつけた掲示。特に、戦国時代の大名の家法。大内氏掟書など。かべがき。
    1. [初出の実例]「今度の合戦に於て忠あらん者には、不日に恩賞行はるべしと云し壁(ヘキ)書」(出典:太平記(14C後)一四)

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改訂新版 世界大百科事典 「壁書」の意味・わかりやすい解説

壁書 (かべがき)

〈へきしょ〉ともいう。規則や法令などの通達方法の一つで,この方法で発布された法令の名称ともなる。この名称の起源は,中国における壁に書く法令などの伝達方式にもとづくが,日本では,板や紙に書き,壁や門にかけて掲示したので,張文懸札ともいう。この壁書は,本来役所や寺院などの内部規則をその当事者に通達するものであった。現存する最も古い壁書といわれる807年(大同2)の壁書も律令官人の着座に関する規定であり,幕府戦国大名においてもこのような諸機関の規則伝達手段として広くもちいられた。そして,《大内家壁書》の法令に多くみられるような,その末尾を〈仍壁書如件〉という文言で結ぶ法令の様式をうみだした。いっぽうこの通達方式は,その役割を拡大し,一般公衆への法令伝達としてももちいられるようになった。この場合壁書は,公衆の見やすいところに張りだされ,制札と同じ役割をもつようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「壁書」の意味・わかりやすい解説

壁書
かべがき

「へきしょ」とも読み、「張文(はりぶみ)」「押文(おしぶみ)」などともいわれる。遵守すべき事項や儀式の次第などを示すために作成される文書で、必要事項を箇条書にし、責任者や担当者が署名し、武家の邸館、寺院のしかるべき建物の壁などに張り出した。伝わっている最古のものは、807年(大同2)の官吏の着座に関するものであるが、室町・戦国時代には幕府、大名、寺社などで用いられ、室町幕府では侍所(さむらいどころ)、政所(まんどころ)などに掲示された。内容からすれば法令の一種であり、定文(じょうもん)、掟書(おきてがき)といってもよい。これを収録した法令集が編纂(へんさん)されることがあり、室町幕府の「管領并政所(かんれいならびにまんどころ)壁書」、防長の大名大内氏の「大内家壁書」、豊臣(とよとみ)秀吉の「大坂城中壁書」などが有名である。実際に壁に張らないでも壁書という場合もあったと思われる。

[羽下徳彦]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「壁書」の解説

壁書
かべがき

法令・規則の公示方法,または壁書の形式で公布された法令。法令を木・紙に書いて官庁の壁・門に張るか掛ける。古くは9世紀の大同年間に朝廷の官吏の執務規則を壁書の形式で公示した例がある。はじめは特定の関係者に示す性格が強かったが,嘉吉(かきつ)の徳政令が管領や政所などに壁書されたように,のちには一般の人々に公布する方法となる。建武政権・室町幕府・江戸幕府は公布した規則・法令を官庁に壁書しており,「管領并政所壁書」など室町幕府公布の壁書を官庁別に集成した法令集もある。寺院で寺僧の評議になる規則を壁書したり,惣村の村掟が壁書の形式をとる例も多い。守護大名の大内氏は「仍壁書如件(よってかべがきくだんのごとし)」などの書止文言をもつ単行法令を発布した。

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百科事典マイペディア 「壁書」の意味・わかりやすい解説

壁書【かべがき】

元来壁に法令・規則を掲示して伝達することを意味し,のち拡大されてこの方法で発布された法令の名称ともなった。〈へきしょ〉ともいう。中国においては壁に書かれたが,日本では板・紙に書いて壁・門に掲げたことから〈張文(はりぶみ)〉・〈懸札(かけふだ)〉などとも称された。朝廷や幕府の諸機関内部の特定の当事者に向けてのものから,次第に一般大衆への公示方法としてとられるようになり,1454年の室町幕府の徳政令(とくせいれい)は政所(まんどころ)の壁に掲示されている。幕府・戦国大名の法令のうちには〈壁書〉の文言や呼称を持つものもある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「壁書」の意味・わかりやすい解説

壁書
かべがき

「へきしょ」とも読み,張文ともいう。室町,戦国時代の取決め事項,事の進行次第,遵守事項などを壁に張出した文書。壁書と呼ばれるものには,室町幕府の『政所壁書』,戦国大名の発布した分国法を編集したものでは,肥後人吉の相良為続,長毎,長祇3代の法度を集めた『相良氏壁書』 (→相良家法度 ) ,山陽,山陰,西海3道にわたる強大な守護分国を築き上げた大内氏の法令集『大内家壁書』,豊臣氏の『大坂城中壁書』などがある。江戸時代の藩庁にも壁書の間などがあった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「壁書」の解説

壁書
かべがき

室町・戦国時代,幕府・守護大名が発布した法令の呼び名
「へきしょ」とも読む。掟書 (おきてがき) ・条目・法度 (はつと) と内容は同じ。公布の際,木や紙などに書いて殿中の壁などに張り出したのでその名がある。室町幕府の『政所 (まんどころ) 壁書』,戦国大名大内氏の『大内家壁書』,豊臣秀吉の『大坂城壁書』などが有名。

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