翻訳|aestivation
夏は生命の営みが頂点に達する季節だが,この時期に活動を停止して秋を待つ動物たちがある。その状態は冬眠と似ているので夏眠と呼ばれる。昆虫の中ではフユシャク類のさなぎに典型的な例が見られる。冬眠と同じく外界条件(暑さや乾燥など)の直接的作用で活動や発育が停止している場合もあるが,積極的に休眠状態となって夏を耐えている場合もある。ヨトウガでは幼虫期の日長によってさなぎの休眠のスケジュールがきめられ,初夏の長日下では夏の休眠,秋の短日下では冬の休眠が誘起される。秋に温度が下がるとさなぎは夏の休眠からめざめて成虫になる。ヤママユガのさなぎやヤサイゾウムシの成虫の場合では,日が短くなると休眠からさめ,発育・活動を再開する。湿潤な温帯地方でのこのような夏眠は暑さをさけるというよりは,食物供給や天敵に対応する生活史戦略であろう。夏の高温・乾燥がきびしい気候下では,いろいろな無脊椎動物,両生類,爬虫類(リクガメの類),肺魚類などが悪条件にたいする耐性を強化し,土中にひそんで夏眠する。乾燥状態で何年間も生命を保ち続けた例もある。
植物では,カラクサシダやオシャグジデンダなどのシダ植物,ヒガンバナやニリンソウなどの種子植物で,夏に葉が落ちる現象が夏眠の例としてあげられる。
執筆者:正木 進三+岩槻 邦男
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暑く乾燥する夏期に生物が休眠して過ごすこと。冬眠に対する語。熱帯の激しい乾期のある地方の動物でよくみられるが、温帯地方でも夏眠する動物は少なくない。爬虫(はちゅう)類、両生類、魚類、昆虫類、等脚(とうきゃく)類(水生甲殻類の一群)などでみられる。砂漠にすむ哺乳(ほにゅう)類のジリス類や小形ネズミ類でも夏眠がみられる。水分の蒸発に対する防護が不完全なカタツムリやカエルは、地中の穴やすきまに潜り込んでしばしば集団をつくり、仮死状態で夏眠する。アフリカや南アメリカの熱帯にすむ肺魚類は、水底の泥中に穴を掘って丸まった姿勢で夏眠し、沼地が乾燥しても、その間はうきぶくろ(肺)で呼吸し、雨期になって水が穴に入ってくるまで生き延びる。植物でも夏眠するものがある。夏に雨の少ない地中海地方では、硬葉樹以外の多くが夏眠状態になる。また、夏に落葉する低木のオニシバリ、地上部が枯死するヒガンバナやナツズイセンの例も夏眠である。
[小野山敬一]
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…さらに花をつける枝(花柄)とその枝を抱く苞や小苞の位置も合わせて図示するが,チューリップのように一つの花が軸の先端に頂生するものはその必要がない。このような花式図によって,花の相称生(矢印で示す),花葉の数とその配列状態,花葉間の合着の有無(点線で結ぶ),つぼみの時期における花弁などの閉じ方(幼葉態aestivation),葯の向き(内向性,側向性,外向性),子房室の数や胚珠の数とそのつき方などがわかりやすく,しかも容易に表現できることが利点である。このために,花式図は近縁な分類群の間での花の構成について,比較形態学的研究につかわれる。…
…そのような場合,発育・活動を停止し,体内に栄養物質を蓄え,呼吸量を極端に減らして消耗を防ぎ,好適な季節の再来を待つ。この状態は広義の休眠dormancyといわれ,冬眠や夏眠もこれに含められる。しかし生物は単に外界条件の直接作用によってではなく,むしろ積極的に生理状態を切り換えて活動を停止し,不適当な時期をのり切っていることが多く,ふつうこのような場合を厳密な意味の休眠diapauseと呼ぶ。…
…これが爬虫類,両生類,節足動物などにみられる冬眠である。一年中高温の続く熱帯地方は,変温動物にとっては好適な生息地であり,分布する種類も個体数も多いが,熱帯でも厳しい乾季のある地方では,乾燥にたいする適応として夏眠の現象がみられる。【佃 弘子】。…
※「夏眠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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