外国人技能実習制度(読み)ガイコクジンギノウジッシュウセイド(英語表記)Technical Intern Training Program

デジタル大辞泉 「外国人技能実習制度」の意味・読み・例文・類語

がいこくじん‐ぎのうじっしゅうせいど〔グワイコクジンギノウジツシフセイド〕【外国人技能実習制度】

開発途上地域の労働者を一定期間、技能実習生として日本国内に受け入れ、企業等の産業現場で技能・技術・知識を修得させる制度。国際貢献が目的。実習期間は最長5年間。
[補説]平成5年(1993)に外国人研修・技能実習制度として創設。研修生・技能実習生が実質的に低賃金労働者として扱われ、過重労働・高額な保証金の徴収・パスポートの取り上げといった人権侵害が横行したことなどから、平成22年(2010)、実習生を労働法で保護する現制度に移行。平成29年(2017)、技能実習適正化法が制定され、受入れ機関等への管理監督体制や実習生の保護が強化された。
企業等の実習実施者が海外の現地法人・合弁企業・取引先企業の職員を直接受け入れる企業単独型と、事業協同組合・商工会・農業協同組合など営利を目的としない団体が監理団体として実習生を受け入れ、傘下企業等で実習させる団体監理型がある。

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共同通信ニュース用語解説 「外国人技能実習制度」の解説

外国人技能実習制度

途上国の人材に日本の技術を伝える「国際貢献」を目的とし、1993年に開始。実習先と契約し、受け入れを仲介する日本側の「監理団体」が、現地の「送り出し機関」を通じて実習生を募集。面接などを経て採用する。送り出し機関は日本語教育も行い、監理団体は、実習生の支援や受け入れ先を監督・指導する役割を担う。外国人技能実習機構によると、2022年度末時点で監理団体は約3600。現在、90職種を対象に受け入れ、出身国別ではベトナムが最多。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「外国人技能実習制度」の意味・わかりやすい解説

外国人技能実習制度
がいこくじんぎのうじっしゅうせいど
Technical Intern Training Program

途上国の経済発展や産業振興担い手となる人材の育成を目的に、18歳以上の外国人を受け入れる制度。1993年(平成5)導入。外国人技能実習法(正式名称「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」平成28年法律第89号)に基づき、実習生は最長5年間、日本の企業や個人事業主と雇用契約を結び、報酬を受け取って、出身国では修得できない技能・知識の修得・習熟・熟達を図る。製造業、建設業、農業、介護など88職種が対象。外国人技能実習法は「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(第3条第2項)と明記しているが、労働力として活用されているのが実態であるうえ、違法労働や実習生の失踪(しっそう)が横行・多発し、国内外から人権侵害の温床と批判されてきた。政府は2019年(平成31)4月から、技能実習にかわる在留資格、「特定技能」を導入・拡充しており、早ければ2024年の法整備で、外国人技能実習制度を廃止し、労働力確保と人材育成を両立させる転職可能な新制度へ移行する方針である。

 日本企業の海外進出に伴い、1960年代後半から、日本企業は現地社員を日本で研修させる社員教育を始めた。これを原型として、政府は1981年(昭和56)、「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令第319号、略称「入管法」「入管難民法」)を改正し、研修生を受け入れる在留資格を創設。1993年(平成5)には外国人技能実習制度を開始した。実習生の受け入れは、企業が直接受け入れる企業単独型と、商工会や協同組合などの監理団体を通じて受け入れる団体監理型がある。実習生には「技能実習(入国1年目は1号、入国2・3年目は2号、入国4・5年目は3号)」という在留資格が必要で、1号から2号、3号へと移行するには、技能評価試験に合格する必要がある。実習生を受け入れる日本企業や監理団体を監督する認可法人・外国人技能実習機構(OTIT:Organization for Technical Intern Training)があり、技能実習の実施には同機構への届け出・認定・許可が必要である。しかし研修生には転職・転籍が認められず、低賃金・長時間労働や暴行などの人権侵害行為も後を絶たない。国際連合は2014年以降、繰り返し人権侵害の疑いがあると懸念を表明し、政府は2010年(平成22)に法的保護や在留資格を見直し、2016年に外国人技能実習法を制定し、2017年にはOTITを設置したが、制度悪用に歯止めがかかっていない。2022年(令和4)末時点で全国の実習生は約32万5000人で、2018年と2022年には年間約9000人が失踪している。

[矢野 武 2023年12月14日]

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知恵蔵 「外国人技能実習制度」の解説

外国人技能実習制度

開発途上国の人材育成に協力することを名目に、外国人材の受け入れを可能にしている制度。入管法(出入国管理及び難民認定法)の改定により、1993年に新設された。それまで就労可能な外国人の在留資格は、原則として経営者や研究者、技術者など高度な専門職に限られてきたが、制度新設で企業・公的機関の研修生として来日した外国人も、研修終了後の一定期間、技能実習という名目で就労が認められることになった。受け入れ方式には、日本企業が海外現地法人などを通して受け入れ、技能実習を施す「企業単独型」と事業協同組合や商工会などの非営利団体が受け入れ、関連企業が技能実習を施す「団体管理型」があるが、技能実習生の約96%が「団体管理型」である(2016年末)。
その後、制度の拡充が図られてきたが、実態としては工場・建設や農業の現場で、単純労働に携わる者が大半で、更に低賃金による長時間労働・人権侵害による研修生の失跡や死亡事故も明らかになり、海外からは「奴隷制度」などという批判の声も上がった。一方、国内の産業界からは人手不足解消を求める声が強く、「働き方改革」を進める安倍内閣は2018年11月、新在留資格(特定技能)を設けた改正入管法案を臨時国会に提出した。外国人労働者の受け入れ拡大を目指したものだが、従来の実習制度をベースに新たな枠組みだけを定めただけで、野党からは「中身のないスカスカ法案」という反対・疑問の声が上がった。しかし政府は「詳細は省令で示す」と繰り返すのみで、社会保障などの課題に対する議論も深まらないまま、翌12月に成立した。これによって、単純労働の受け入れを事実上認めることになったが、政府は「移民政策への転換ではない」と従来の姿勢を崩していない。
成立した改正入管法は、在留資格を一定の技能を持つ「特定技能1号」と高度な熟練者の「特定技能2号」に区分している。「特定技能1号」は、5年間の技能実習の修了者や日本語能力試験の合格者などに与えられる。在留期間は最長5年で、家族帯同は認められない。熟練者に付与される「特定技能2号」は、長期在住(事実上の永住権)や家族帯同も認められる。対象として検討されているのは14業種(介護業、ビルクリーニング業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業)で、政府は今後5年間で最大34万5150人の受け入れを見込んでいる。また、新たに出入国在留管理庁(仮称)を19年4月に発足させる予定。これまで入国管理局が担っていた入管業務に加え、外国人受け入れの環境整備、在留者の生活支援なども担うことになる。

(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)

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