多値論理学(読み)タチロンリガク(その他表記)many-valued logic

デジタル大辞泉 「多値論理学」の意味・読み・例文・類語

たち‐ろんりがく【多値論理学】

真・偽しか考えない二値論理学に対し、命題真理値を三つ以上あるものとして構成した論理学。→様相論理学

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精選版 日本国語大辞典 「多値論理学」の意味・読み・例文・類語

たち‐ろんりがく【多値論理学】

  1. 〘 名詞 〙 現代論理学の一分野。命題が真・偽の二値しかもたないとする一般の形式論理学に対して、真・偽以外に第三の真理値を命題がもっていることを認める論理学。一九二〇年代初めポーランドルカシエービチが提唱した三値論理学に始まり、様相論理学へと発展した。

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改訂新版 世界大百科事典 「多値論理学」の意味・わかりやすい解説

多値論理学 (たちろんりがく)
many-valued logic

現代論理学の一分野。通常いかなる命題(判断)も真か偽のいずれかであると考えられている。そして,真でもなければ偽でもない中間の真理値は存在しないというのが論理学の常識であろう。しかしながら,アリストテレスもすでに指摘しているように,まだ起きていない未来のことがらについては,この原理,つまり二値の原理は必ずしも成り立たないように思われる。実際,未来のことまでその真偽があらかじめ定まっているとするならば,いわゆる決定論(あるいは宿命論)を暗黙のうちに認めてしまうことになる。仮に決定論が認められないとすると,ある種の命題は真でも偽でもなく,不確定といった第3の真理値をとると考えられる。このような観点からポーランドの論理学者ルカシエービチは,第1次大戦の終りころ多値論理学の基本となる三値論理学を提唱した。もっとも,C.S.パースによる先駆的研究もあり,また古代中世においても多値論理学の萌芽があった。また,同じころアメリカの数学者ポストEmil Leon Postもルカシエービチとは無関係に多値論理学を提唱した。

 さて,真を1,偽を0,不確定な真理値,すなわち3番目の真理値を1/2であらわすと,三値論理学は次の真理表によって説明される。

ただし,∧,∨,⊃,~はそれぞれ〈そして〉(連言),〈あるいは〉(選言),〈ならば〉(含意),〈でない〉(否定)を意味する論理演算。たとえば,ABAそしてB)という命題は,Aが真で,Bが不確定であるならば不確定である(第1行,第2列から)。また,ABAならばB)はABも不確定であるならば真となる(第2行,第2列から)。

 その後,多値論理学は主としてポーランドで研究され,公理化n値論理学(3<n)の一般化など,その他の領域において大きく前進した。また,量子力学への応用などもある。
命題論理学 →論理学
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多値論理学」の意味・わかりやすい解説

多値論理学
たちろんりがく
many-valued logic

排中律前提とする論理学の命題は真か偽 (真=1か偽=0) の2値しかとりえない。すなわち矛盾する命題が同時に真となることはないと考えるのに対して,命題が3つ以上 (理論的には n個) の値をとれると考える論理学全体をさす。排中律の妥当性を疑う考え方は古くからあり (たとえばオッカム) ,それをアリストテレスの Peri hermēnesisにヒントを得て現代的な形で明示化したのが,J.ルカシェビッチŁukasiewiczである (『アリストテレスにおける矛盾律について』〈1910〉,『命題計算の多値的体系についての哲学的覚え書』〈20〉) 。なお多値論理学はその解釈の仕方で様相論理学および確率論理学と密接な関係をもち,高次の一般性をもち不変であると考えられていた論理学およびその法則が互換的であることを示した点にも哲学的意義がある。

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百科事典マイペディア 「多値論理学」の意味・わかりやすい解説

多値論理学【たちろんりがく】

英語many-valued logicなどの訳。真理値として真と偽(集合でいえば全集合と空集合)のみを認める普通の論理学を一括して二値論理学というのに対し,二値以上の真理値をもつ論理学をいう。現実の思考は明らかに二値の論理体系で処理し得るわけではなく,たとえば真・偽のほかに真偽不定といった第三の領域を認める必要がある。この問題をはじめて取り扱ったのが様相論理学であるが,様相論理の研究において,特に様相概念を外延的に取り扱う試みとして生まれたのが多値論理学。その先駆者はC.S.パース,ルカシエービチ,E.L.ポストら。なお量子論や確率論を多値論理によって解釈する試みもある。→論理学

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