〈必然的〉〈可能的〉といった様相概念を形式的に取り扱う論理学。様相三段論法という形において,アリストテレスがすでに様相論理学の研究に手をそめていたことは注目に値する。その後,西洋古代,中世においても様相論理学はアリストテレスの伝統に基づいて,散発的ではあるが,研究されてきた。しかしながら,近代論理学の立場から様相論理学の研究を再開したのはアメリカの論理学者C.I.ルイスであった。そして,近代的様相論理学の基本的構造はルイスによって決定されたのである。
さて,様相論理学と非様相論理学の相違は,前者が□(必然的),◇(可能的)といった命題を命題に変換する論理演算を含むことにある。そして,こういった演算を含む論理が様相論理学にほかならない。たとえば,□A≡~◇~A〈命題Aが必然であるということは,Aでないということが可能でないということと同値である〉(≡と~は,それぞれ,同値と否定をあらわす論理演算)は,いかなる様相論理学においても妥当な命題である。さらに,□(A∧B)≡□A∧□B,◇(A∨B)≡◇A∨◇B,□(A⊃B)⊃□A⊃□Bなども一般に成り立つ。ただし,∧と⊃は,それぞれ,〈そして〉と〈ならば〉に対応する論理演算である。ところが,□A⊃A,□A⊃□□Aといった形の命題となると果たして一般に妥当であるかどうか疑わしくなる。このように考えると,様相論理学は一つではなく,いろいろの系が可能であることがわかる。そして,ルイスが提唱したS1-S5といった公理系を中心として,いろいろな系の間の相互関係が活発に研究されている。
一方,様相論理学の意味論については,クリプキSaul Kripkeが多世界意味論many worlds semanticsを提唱して以来,直観主義論理学,文法理論とも結合して,その研究が急速に進んでいる。
→命題論理学
執筆者:石本 新
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「可能」「必然」などの、様相に言及することばの入った命題によって組み立てられた論証の構造を研究する論理学。すでにアリストテレスに、このような論証についてのかなり詳しい研究がみられる。20世紀前半にルイスとラングフォードにより、記号を用いた様相論理学の公理系がいくつか提出されて以来、現代論理学の手法による様相論理学の研究が盛んになった。未来のことについては、排中律が成立しないという考え方があるが、これは未来がまだ可能性の世界だとすることに基づく。これからも察せられるように、様相論理学と多値論理学とが結び付くとする考え方もある。あるいは量子論理と様相論理学とが近いとする考え方もあり、ブール値モデルにより、これらの論理学を統合して集合論に吸収しようとするやり方もある。一方、様相概念にまつわる哲学的な困難を指摘し、様相論理学自体にも批判的である、クワインのような哲学者もいる。
[吉田夏彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新