多発性硬化症治療剤(読み)タハツセイコウカショウチリョウザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「多発性硬化症治療剤」の解説

多発性硬化症治療剤

製品名
《フィンゴリモド塩酸塩製剤》
ジレニア(ノバルティスファーマ)
イムセラ(田辺三菱製薬
《フマル酸ジメチル製剤》
テクフィデラ(バイオジェン・ジャパン)

 自己免疫疾患である多発性硬化症の再発予防、そして身体症状の進行を抑えるために使用します。免疫細胞(リンパ球)にはたらきかけ、自己を攻撃する自己免疫細胞(自己反応性T細胞を含むリンパ球)を抑制して神経の炎症をしずめます。


 過敏症状(発疹、かゆみなど)、感染症(倦怠感けんたいかん発熱など)が現れることがあります。フィンゴリモド塩酸塩製剤では、徐脈性不整脈(浮動性めまい動悸など)、黄斑浮腫(霧視や視力の低下など) 、悪性リンパ腫(全身のリンパ節のれ、発熱、体重減少など)、可逆性後白質脳症症候群(意識障害、けいれん、視力障害など)、虚血性・出血性脳卒中、末梢性動脈閉塞性疾患を招くことがあります。フマル酸ジメチル製剤では、リンパ球・白血球減少、進行性多巣性白質脳症、急性腎不全、肝機能障害、アナフィラキシーを招くことがあります。


 このような症状が現れたときは、使用を中止し、すぐに医師に報告してください。


 そのほか、頭痛下痢、肝機能検査値異常、白血球減少などが現れることがあります。


カプセル剤で、フィンゴリモド塩酸塩製剤では、1回1カプセル(0.5mg)を1日1回服用します。最初の服用前と、最初の服用の6時間後に心電図検査を行います。また最初の服用から24時間は心拍数と血圧測定を行い、24時間ホルター心電図検査が実施されるケースもあります。浮動性めまいや動悸など、徐脈性不整脈の症状が現れたら、すぐ医師の診察を受けてください。


 フマル酸ジメチル製剤では、1回120mgを1日2回朝・夕食後から開始し、1週間後に1回240mgに増量しますます。指示された服用方法を守ってください。


②薬を服用して、かゆみ、発疹ほっしんなどの過敏症状が出たことのある人は使用できません。フィンゴリモド塩酸塩製剤では、重い感染症のある人、クラスⅠaまたはクラスⅢ抗不整脈剤を使用している人、妊婦、妊娠している可能性がある人は使用できません。


 また、ほかの薬を服用している人は、この薬を使用できないことがあります。使用中の薬は必ず医師に報告してください。


③免疫を低下させる薬なので、重い感染症を引きおこすことがあります。発熱や倦怠感などの感染症状が現れたときは、すぐ医師に連絡してください。


フィンゴリモド塩酸塩製剤では、服用を始めてしばらくは、めまいやふらつきが現れることがあります。車の運転など、危険な作業には注意してください。また、生ワクチンの予防接種はしないでください。


フィンゴリモド塩酸塩製剤では、服用中、そして最後の服用から2か月間は、妊娠しないようにしてください。


多発性硬化症治療剤

製品名
《フィンゴリモド塩酸塩製剤》
イムセラ(田辺三菱製薬)
ジレニア(ノバルティスファーマ)
《フマル酸ジメチル製剤》
テクフィデラ(バイオジェン・ジャパン)

 指定難病のひとつである多発性硬化症の再発予防や身体的障害の進行抑制のために用いられます。身体的障害として、視力の低下やものが二重に見える、眼痛、手足のしびれ・まひなどがおこります。


発疹ほっしんなどの過敏症状、感染症、進行性多巣性白質脳症がおこることがあります。そのほか、フィンゴリモド塩酸塩製剤では、徐脈性不整脈、房室ブロック、黄斑浮腫、悪性リンパ腫、可逆性後白質脳症症候群、虚血性・出血性脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患が、フマル酸ジメチル製剤では、リンパ球・白血球減少、急性腎障害、肝機能障害、アナフィラキシーがおこることがあります。このような症状が現れたときは、使用を中止して、すぐに医師に報告してください。


②下痢、吐き気、頭痛、ほてり・潮紅などがおこることがあります。こうした症状が現れたときは、医師に相談してください。


①カプセル剤です。1日の服用時間・服用回数、服用期間については医師・薬剤師の指示を守り、かってに中止したり、減量・増量しないでください。


②この薬の成分に対して過敏症の既往歴のある人は使用できません。フィンゴリモド塩酸塩製剤では、重い感染症、抗不整脈剤(Ⅰa群またはⅢ群)を使用中の人、妊婦・妊娠している可能性のある人は、使用できません。


③感染症の疑いがある人、感染しやすい状態の人、重い腎機能障害、肝機能障害、高血圧、糖尿病、重い呼吸器疾患のある人、高齢者には使用できないことがあります。事前に医師に相談してください。


④副作用の発現を調べるため、指示された検査は必ず受けてください。


⑤予防接種やほかの薬を使用する必要が生じたときは、必ず医師に相談してください。


⑥使用中にめまいやふらつきが現れることがあります。自働車の運転、危険を伴う作業などは、十分注意して行ってください。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

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