小説家。本名米山峰夫。神奈川県小田原市生まれ。東海大学文学部日本文学科卒業。高校時代から作家を目指し、また熱心なSFファンとしても知られていた。大学卒業後も会社員、山小屋アルバイトなどさまざまな職業に就きながら『ネオ・ヌル』『宇宙塵(うちゅうじん)』『綾の鼓』などのSF同人誌に作品を発表。1977年(昭和52)、筒井康隆が主宰する同人誌『ネオ・ヌル』誌に掲載したタイポグラフィック・ストーリー「カエルの死」が注目を集め、商業誌『奇想天外』に転載。続いて同誌に中編「巨人伝」を発表し、本格的に作家デビューする。初期の頃は『ねこひきのオルオラネ』(1979)、『キラキラ星のジッタ』『遙かなる巨神』(1980)など抒情的なメルヘンや山岳幻想小説を多く手がけていたが、処女長編『幻獣変化』(1981)で早くも自分の世界を確立する。これは若き日の仏陀(シッダールタ)が不老不死の秘法を求めて魔界に侵入、そこに住む怪しげな獣たちと死闘を繰り広げ、やがて神秘的な世界樹への登攀(とうはん)を目指す物語であった。すでにこのとき、のちに彼の作品の主流を占める伝奇バイオレンス要素のすべてが詰まっており、その意味では先駆をなした作品といっていいだろう。続く『幻獣少年キマイラ』(1982)に始まる「キマイラ吼(こう)シリーズ」は、人間から幻獣に変貌を遂げる少年たちの闘いが中心に描かれながらも、闘いを司る「肉体」の秘密に迫ろうとする。この流れは誰が一番強いかという硬派の格闘技小説『餓狼伝(がろうでん)』(1985)シリーズや『獅子の門』(1985)シリーズに繋がっていく。夢枕獏の名を一般読者に認知させたのは『魔獣狩り』(1984)に始まる「サイコダイバーシリーズ」で、これは人間の精神に潜入し意識下の秘密を探る能力を身につけたサイコダイバーと、真言密教術の天才、中国拳法の遣(つか)い手たちが高野山から盗まれた空海のミイラをめぐって、斬新で奇想天外な戦いを繰り広げる物語である。このシリーズはいずれも大ベストセラーを記録し、夢枕獏の仕事の中核となった。ほかにシリーズものとして『闇狩り師』(1984)のシリーズがあるが、本作の主人公である九十九乱蔵(つくもらんぞう)以下、幾人か共通するキャラクターが「キマイラ吼シリーズ」にも登場する。平安朝の闇に跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する鬼や生霊が起こす事件に挑む史上有名な大陰陽師(おんみょうじ)安倍晴明を描く『陰陽師』(1988)シリーズも人気が高い。一方で生命進化の謎に迫る幻想SF『上弦の月を喰べる獅子』(1989)で日本SF大賞を受賞。エベレストへの無酸素登頂に賭ける男の苦闘を描く『神々の山嶺(いただき)』(1997)で柴田錬三郎賞を受賞。あるいは坂東玉三郎や市川猿之助のために歌舞伎の脚本を書いたりと創作の分野や活動の幅を徐々に広げている。
[関口苑生]
『『ねこひきのオルオラネ』(集英社コバルト文庫)』▽『『キラキラ星のジッタ』『神々の山嶺』(集英社文庫)』▽『『幻獣変化』『遙かなる巨神』(角川文庫)』▽『『魔獣狩り』(祥伝社文庫)』▽『『餓狼伝』(Futaba Novels)』▽『『獅子の門』(徳間文庫)』▽『『上弦の月を喰べる獅子』(ハヤカワ文庫)』▽『『陰陽師』(文春文庫)』▽『『闇狩り師』(徳間デュアル文庫)』▽『『幻獣少年キマイラ』(ソノラマ文庫)』▽『『仰天・夢枕獏』(1999・波書房)』
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
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