(1)人形浄瑠璃 時代物。5段。角書〈太平記綱目〉。別名題《太平記曦鎧》。竹田出雲・松田和吉(文耕堂)作。近松門左衛門添削。1723年(享保8)2月大坂竹本座初演。《太平記》に取材した作品で,北条氏討伐を図って挙兵した大塔宮が苦難の後に六波羅を攻略するに至るまでの経緯を主筋とし,それに斎藤太郎左衛門一族の悲劇を絡めて展開させたもの。初段の切の無礼講の場で鎌倉への逆意を確かめ合う〈つわもの万歳(まんざい)〉,二段目の切における六波羅勢の〈着到馬揃え〉,四段目の道行〈大塔宮熊野篠懸(すずかけ)〉等々,作品全般を通じてさまざまな見せ場の配された佳編だが,なかでも,六波羅方の老武者斎藤が,宮方で犬死を遂げた娘夫婦への手向けのために最愛の孫力若丸を身替りに立てて若宮の命を救うという三段目の切〈身替り音頭〉の段は最も優れた場面として繰り返し上演されてきた。特に,若宮の預り役の永井右馬頭夫妻が自分たちの子供の鶴千代を若宮の身替りに立てる覚悟でいるところへ,討手としてやってきた斎藤が力若丸の首を打ち落としてその心底を明かすことになるという,まったく予想外な展開が大きな劇的効果をもたらすものとなっている。なお,初段の〈つわもの万歳〉は,幕府への風刺があるとのとがめを受けて,その刷り物の頒布を禁止されたという。
(2)歌舞伎狂言 時代物。(1)の人形浄瑠璃は,同年7月,京都荻野八重桐座で歌舞伎化された。大塔宮を初世荻野伊三郎,斎藤を初世桐野谷権十郎,右馬頭を初世市野谷十郎兵衛,同奥方花園を初世荻野八重桐。歌舞伎においてもやはり〈身替り音頭〉が眼目とされていることには変りがない。とりわけ,舞台一面に切籠灯籠(きりこどうろう)をつるした奥庭の場面で,盆踊の揃いの花笠に浴衣姿で無心に踊る子供たちの輪の中から犠牲となる幼児が選び出されるというクライマックスの趣向は,悲壮な中にも美しい詩情を漂わせて出色である。通称を《身替り音頭》とも《切籠灯籠》ともいう。
執筆者:原 道生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…享保(1716‐36)ごろの大坂竹本座の作者で,初めは本名の松田和吉で書いたが,1730年2月の《三浦大助紅梅靮(みうらのおおすけこうばいたづな)》(竹本座)からは文耕堂の署名となる。作品は1722年9月の《仏御前扇車(ほとけごぜんおうぎぐるま)》が古く,これは翌年の《大塔宮曦鎧(おおとうのみやあさひのよろい)》とともに,添削者に近松門左衛門の名前があることから,近松に師事していたといわれている。この後30年までは浄瑠璃作品はなく,京都で歌舞伎作者松田和吉として《唐錦妹背褥(からにしきいもせのしとね)》《大和縅男鑑(やまとおどしおとこかがみ)》を書いた。…
※「大塔宮曦鎧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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